09あなたの愛が正しいわ~
本專欄僅供學(xué)習(xí)和作為交流資料使用??

09 それは生涯の誓い……のはずだった【デイヴィス視點】
夜會に向かう馬車の中で、ローザは僕をチラリとも見なかった。
いつもはうんざりするくらい僕を見つめていた瞳は、外の景色に向けられ楽しそうに輝いている。そんなローザとは対照的に、僕は気が滅入っていた。
今までの僕は、ローザにひどい仕打ちをしているとすら思っていなかった。ただ、『うっとうしく、付きまとってくる妻』にうんざりしていて、彼女を遠ざけることばかり考えていた。
その結(jié)果、ローザにひどい言葉を投げかけ、ひどい態(tài)度を取ってきた。しかも、ローザに同じことをされるまで、それをされた相手がどんな気持ちになるのか想像もしなかった。
夜會のパートナーである妻に向かって『會場以外で、エスコートしない』『君とダンスは踴らない』そんなことを言う男がいるなんて信じられない。
その信じられない仕打ちを妻にしてきたのが自分なのだ。
あいかわらず僕を見ない、ローザの橫顔は凜としていて美しい。
先ほど、身支度を整えたローザが部屋から出てきたときは本當(dāng)に驚いた。まるで月の女神が舞い下りたかのようだった。
僕の妻はこんなに美しい人だったのか。そう思ったが、ふと、僕はローザに初めて出會ったときのことを思い出した。
あのころは、まだ父が健在で、父の命により、僕は子爵家の令嬢ローザと婚約を結(jié)ぶことになった。それは、僕の父とローザの父が大きな事業(yè)を共同で行うことになったためで、両家の繋がりを深くしようとしたよくある政略結(jié)婚だった。
當(dāng)時の僕は、女性にそれほど興味がなく、だれと結(jié)婚しても同じだと思っていた。しかし、父に紹介されたローザを見たとたんに、僕は自分でも驚くくらい簡単に戀に落ちた。
その日から、ローザのエメラルドのように輝く瞳や、艶(つや)やかなプラチナブロンド、薔薇のつぼみのように可憐な唇が脳裏に焼き付き離れなくなった。
女性を自分から口説いた経験がなかったので、婚約者になったローザに思いつく限りの愛の言葉をささやき、仲の良い男友達に女性が喜びそうなプレゼントを聞きまわり、頻繁にローザに贈った。
僕からのアプローチに戸惑っていたローザに「僕たちは、政略結(jié)婚だからね」と、僕と結(jié)婚することの拒否権がないこともさりげなく伝えた。
このときばかりは、當(dāng)人同士の気持ちが関係ない政略結(jié)婚だということに感謝した。だからこそ、結(jié)婚式のときに「君を一生、大切にするよ」とローザに伝えた。それは、僕の本心であり、生涯の誓い……のはずだった。
ローザと結(jié)婚して一年目は夢のように楽しかった。二年目に、父が事故死し、急きょ父の後を継いだ僕は、ファルテール伯爵になった。
ずっと後継者として育てられてきたが、父の死があまりに急だったため、伯爵としての仕事に忙殺され、ローザと過ごす時間が減った。ローザは少しも文句を言わなかった。むしろ、父の急な死を一緒に悲しんでくれて、僕を支えてくれた。
三年目、ローザに仕事を押しつけたことを都合よく忘れた僕は、去年はできなかった社交に力を入れた。久しぶりに會う友人たちとの會話は楽しかったし、新しく事業(yè)を始めようということになり、外出する日が増えていった。
屋敷に戻るのが遅くなる日が続いた。そんな僕をローザはいつでも「お疲れ様」と笑顔で迎えてくれた。
初めは嬉しかったその出迎えが、うっとうしく感じるようになったのは、いつからだろう?
ローザはいつでも僕と一緒にいることを望んだ。たとえ具合が悪そうでも、目の下にクマができていても。僕と一緒に朝食を取ることを望んでいたし、「先に寢てほしい」と頼んでも僕の帰りを待つことを止めなかった。
そんなローザの獻身を、いつからか頻繁に外出する僕への當(dāng)てつけのように感じ始めた。
具合が悪そうな妻が待っていると思うと、家に帰るのが億劫になり、さらに帰る時間が遅くなっていった。
今のローザの瞳から、僕への熱が消えてしまったように、あのときの僕の瞳からは、ローザへの熱が消えてしまっていただろう。それだけではなく、僕は伯爵夫人の仕事を一人で満足にこなせず、社交をおろそかにする彼女を見下すようになっていた。
その気持ちがローザへの冷遇へと繋がる。
それが……僕の勘違いが原因だとも思いもせず。
カーンカーンと、遠くで鐘のなる音が聞こえる。それは夜會會場への入場開始の合図だったが、僕には結(jié)婚式で交わした神聖な誓いの言葉を思い出させた。
病めるときも 健やかなるときも
喜びのときも 悲しみのときも
富めるときも 貧しきときも
妻として愛し 敬い 慈しむ事を誓いますか?
あのとき、はっきりと「誓います」と言い切った僕は、わずか三年後にその誓いを破った。
父が亡くなり、僕が悲しみにくれていたとき、ローザはずっと側(cè)で支えてくれたのに、僕はローザがつらいときに、支えるどころか、あっさりと手のひらを返した。
まるで、お気に入りのおもちゃに飽きた子どもが、そのおもちゃを投げ捨てるように。
「……何が『愛している』だ……。こんな薄情な愛があってたまるか……」
思わず僕の口からもれてしまった言葉は、ローザに聞こえてしまったはずなのに、彼女は何も反応しなかった。ただ、ニコリと優(yōu)しく微笑んで「デイヴィス、著いたわよ」と馬車が止まったことを教えてくれた。
