08あなたの愛が正しいわ~
本專欄僅供學(xué)習(xí)和作為交流資料使用??

08 楽しい夜會
今日は、王宮で夜會が開かれる。この夜會には、ファルテール伯爵である夫も招かれているので、私も伯爵夫人として一緒に參加することになっていた。
私はこの日のために夜色(よるいろ)のドレスを新しく仕立てた。黒く艶のある生地に銀糸で上品な刺繍がされている。
とても気に入っているドレスだけど、今まで私が著ていた淡い色やふわりとスカートが広がるようなデザインではない。身體のラインがはっきりとわかるし、胸元も下品に見えない程度には開いている。
「少しやりすぎたかしら?」
私が不安になっていると、メイドたちは瞳を輝かせながら「素?cái)长扦?、奧様……」「とても、お似合いです!」と褒めてくれた。
「そう?」
「はい!」
嬉しくなった私は、遠(yuǎn)慮せずに自分の好きを追求することにした。
いつもとは違うメリハリのついた化粧をほどこしてもらい、目尻に少しだけ赤を入れる。イヤリングとネックレスは大好きなルビーでそろえた。
「奧様、髪はどうなさいますか?」
「そうね……」
私の髪は、デイヴィスの金髪とは違い、白っぽい金髪だ。そのせいで、デイヴィスが好きそうな淡い色のドレスを著ると、全體的にぼやけた印象になってしまう。それを髪型でごまかそうとしていたので、できる髪型がかぎられていた。
でも、今日は黒いドレスに濃い化粧なので、どんな髪型にしてもぼやけた印象にはならない。
「あなたたちに任せるわ」
それを聞いたメイドたちは「アップにしましょう!」「いえ、奧様の美しいプラチナブロンドならおろしたほうが!」と少しもめてしまったけど、最終的には右側(cè)にシルバーの髪飾りをつけて、左側(cè)に髪を流すことで落ち著いた。
「できました!」
「お美しいです、奧様……」
そういったメイドたちは、満足そうな顔をしている。
「ありがとう」
姿見には、誰のためでもなく自身のために著飾った私が映っている。その姿は堂々としていて、とても幸せそうだ。
私は最後の仕上げにデイヴィスが贈ってくれた結(jié)婚指輪を左手の薬指にはめた。青い寶石がついたゴールドの指輪だったけど、まぁこれも悪くない。
それに、今の私になれるきっかけをくれたデイヴィスには、とても感謝している。
身支度を終えた私が自室から出ると、なぜかデイヴィスが扉の前で待っていた。デイヴィスは、目を見開きこちらを凝視している。
「デイヴィス。こんなところで、何をしているの?」
私の聲で我に返ったデイヴィスは、「君を迎えに來たんだ」と微笑んだ。
「迎えって……。いつもは馬車の前で合流しているのに?」
私は差し出されたデイヴィスの手を取らず、一人で歩き出した。そのあとをデイヴィスが付いてくる。
「ローザ、どうして僕にエスコートさせてくれないんだい?」
デイヴィスの言葉に私は苦笑してしまう。
「エスコートは、會場でだけ」
「え?」
「前にあなたがそう決めたじゃない」
本當(dāng)にデイヴィスはうっかりしているところがある。自分が決めたたくさんのルールをもう忘れてしまったらしい。
「そんなこと、言ったかな……」
「言ったわよ。過去の私はあなたに嫌われたくなくて、あなたに言いつけられたことを全部書き殘して、何度も読み返していたの。だから、間違いないわ。今思うと、私ったら気持ち悪い女ね。それに……」
私は、ついため息をついてしまった。
「あなたはずっと前から、私に遠(yuǎn)まわしに『うっとうしい』『つきまとうな』と言ってくれていたのね。それなのに、少しも気がつかなくて、本當(dāng)にごめんなさい」
うつむいたデイヴィスからは、深いため息が聞こえてくる。
「……僕は君に、他にはどんなことを言ったの?」
「ひとつも覚えていないの?」
あまりの記憶力のなさに、彼は何かの病気なのかと疑ってしまう。でも、健康そうなデイヴィスを見る限り、病気というよりは、私に少しも興味がないだけだとすぐに気がついた。
私だって、むりやり寶石を買わせようと、すりよってくる寶石商に何を言って斷ったかなんて、いちいち覚えていない。
それと同じで、うっとうしい女を追い払うための言葉を、デイビィスも覚えていないだけ。
そう考えると、デイヴィスが決めたルールを忘れていることにも納得できた。
しばらく悩んだデイヴィスは「君とダンスは踴らない、とか?」と言いながら視線をそらす。
「そうね。あなたはダンスは踴らない主義なのよね?」
「あれは……その、あのときは疲れていて、つい、そんなことを言ってしまったんだ。だから……」
なぜか慌てているデイヴィスに安心してほしくて、私は優(yōu)しく微笑みかけた。
「心配しないで大丈夫よ。あなたがもう私のことで疲れることなんてないわ。あなたの言うとおり、夫婦でも、程よい距離でいることって大事よね」
私が「忘れているのなら、あなたが決めたルール、今度、見せてあげましょうか?」と提案するとデイヴィスは「……ああ」と暗い聲で返事をした。
「どうしたの? 具合でも悪いの?」
私の問いに「いいや」と答えたデイヴィスは、それきり黙り込んでしまう。
デイヴィスが不機(jī)嫌になって黙り込むのはいつものことだった。
以前の私ならデイヴィスに機(jī)嫌を直してもらおうと必死に話しかけていたけど、そういう行動もきっと『うっとうしい女』に含まれていたんだと今ならわかる。
馬車に乗り込んだ私は、すぐにデイヴィスの存在を忘れて、窓から見える流れゆく景色を楽しんだ。こんなに楽しい気分で參加する夜會は久しぶりだった。
