むかしむかし、幸助という漁師が住んでいました。

　幸助は小さい頃から身體が弱かったので、健康のために毎朝浜を歩くことにしていたのです。

　そんなある朝、幸助がいつもの様に浜を歩いていると、何かキラキラ光り輝く物が浜に打ち上げられています。

「なんだろう？」

　幸助が近寄ってみると、それは夕べの荒波で打ち上げられた小さなエビスさまの像だったのです。

「これは立派なエビスさまだ」

　幸助はエビスさまの像を家に持って帰って供えましたが、ボロ屋に立派なエビスさまは似合いません。

　そこで幸助は村はずれのお宮さんに、エビスさまをまつったのです。

　それからしばらくしたある日、旅の僧がこの村を訪れましたが、長(zhǎng)旅であまりにも薄汚れていたので誰(shuí)も相手にしてくれません。

　そこで仕方なく村はずれのお宮さんに泊まる事にしたのですが、入ってみると何かがキラキラと光り輝いています。

　見(jiàn)てみるとそれは、幸助が納めた金色のエビスさまだったのです。

「これは、良い物を見(jiàn)つけたぞ」

　旅の僧は周りに誰(shuí)もいない事を確かめると、そのエビスさまを盜んでそのまま逃げてしまいました。

「よし、誰(shuí)も來(lái)ていないな。なかなか、良い物が手に入ったわい」

　旅の僧が、満面の笑みを浮かべながら道を歩いていると、

「丹後へ返りたい、丹波へ返りたい」

と、小さな聲が聞こえたのです。

「誰(shuí)だ！」

　旅の僧は振り返りましたが、誰(shuí)もいません。

「おかしいな。気のせいか？」

　そして再び歩き出すと、

「丹後へ返りたい、丹波へ返りたい」

と、また小さな聲が、聞こえたのです。

「誰(shuí)だ！　誰(shuí)かいるのか??？」

　旅の僧は用心深く辺りを見(jiàn)回しますが、やはり誰(shuí)もいません。

　でも小さな聲は、それからも、

「丹後へ返りたい、丹波へ返りたい」

と、言うのです。

　そんな事が三日間続いたので、すっかりまいってしまった旅の僧は、ふとその聲が自分の背負(fù)っている荷物の中から聞こえてくる事に気づいたのです。

「もしや、あのエビスさまが？」

　そう思った旅の僧は、盜んだエビスさまを取り出してみました。

　するとエビスさまは、はっきりと、

「丹後へ返りたい、丹波へ返りたい」

と、言って、その後、

「ウェーン、ウェーン」

と、泣き出してしまったのです。

「これは、とんでもない物を盜んでしまったな」

　旅の僧はエビスさまを盜んだ事を後悔しましたが、今さら持ち帰っても盜人として捕まるだけです。

「かといって、魂が宿っているエビスさまを、すてるわけにもいかないし」

　そこで旅の僧は西宮までやって來(lái)ると、近くの神社にエビスさまを納めてどこかへ行ってしまいました。

　その後、このエビスさまをまつってある神社が商売にご利益があると商人たちが集まることで有名になり、やがて今の西宮エビス神社になったのです。

おしまい