日本刀の形態(tài)研究(四)

第四節(jié)　刀剣鑑定と押形

　刀剣研究において甚だ重要なるものは真?zhèn)韦舞a別です。
たとえ如何なる研究でも、資料たる作品がその時(shí)代と作者において果たして真に誤りなき存在であるか否かが、最初の出発にあたって厳密に決定されなくてはなりません。
ここに遺憾があったならば殘念なことに卓見(jiàn)も迷説に終わらなくてはならぬ事はいうを要しないでしょう。
　さればこの真?zhèn)舞a定に役立てるため、刀剣における諸々の研究が試みられ、近時(shí)漸く精密を加えつつある事は誠(chéng)に喜ぶべき現(xiàn)象ですが、実際鑑定すべき作品に直面する時(shí)は、平素の研究鍛錬の結(jié)果養(yǎng)われたる直観力を以て瞬間の中に真?zhèn)韦瑳Q定されるのです。鑑定上の全ての研究はかかる直観力養(yǎng)成のために行われるべきで、研究自體が真?zhèn)舞a別の唯一の基準(zhǔn)であるかの如く思い誤ってはならないのです。
　よく人々は刀工における作品の特徴や銘字の輪郭などを論じて一々克明に作品の上に押しあて、真とか偽とかいうのですが、これは平素の習(xí)練の心掛けとしては最もですが、鑑定における実際的態(tài)度としては如何と思われます。
　作品に接して真?zhèn)韦我蓡?wèn)を生ずる場(chǎng)合は、かかる研究の結(jié)果と合致しない場(chǎng)合が多くあるからです。故に既存の知識(shí)はそのままには何の役にも立たない事がしばしば起こります。
ここにおいて最必要なりは真作に見(jiàn)る特有の自然さ好ましさの味、及び偽物に必隨する嫌味等これを直感的に感知しえる様努めなくてはなりません。
この事は理屈なしに多くの作品に接し、研究を積む間に自ら習(xí)得されるものですから中々困難な事柄です。
　この感(勘)の力の養(yǎng)成は事柄が複雑に亙ればわたる程困難になり、単純なるに集中する程かえって徹する事ができるのです。ここにおいて刀剣鑑定には二つの観點(diǎn)が考えられます。
その一つは刀身に鑑定を集中すること、その二つは専ら「莖」による事です。以上二つを中心にしてそれぞれ鑑刀の態(tài)度が決められます。
　常識(shí)的には二つを平等に重視して行うのが最も完全と思われますが、実際は二つに重點(diǎn)を置くことはそれぞれ一方の判斷を狂わせる結(jié)果になります。
なので一つを中心にして他は參照の程度に止める即ち二つの判定を別々に切り離す事がかえって正確を期するゆえんなのです。刀身を見(jiàn)て莖を見(jiàn)る又は莖を見(jiàn)て刀身を見(jiàn)る、この場(chǎng)合両方共文句なしに首肯しえる場(chǎng)合ならばよいのですが、何れか一方不安な場(chǎng)合には結(jié)局我々は迷ってしまう事になります。
正真の作品ならばそれがたとえ如何様に見(jiàn)えても結(jié)局それぞれにおいて正しいものですから、刀身か莖か一方で決定して差し支えないと思います。これは少し暴論のようですが、結(jié)果から見(jiàn)てこの方が正しい判斷となる場(chǎng)合が多いのです。
　ここにおいて莖を主とする立場(chǎng)と刀身による方法と何れが優(yōu)っているのかが問(wèn)題とならなくてはなりません。
　従來(lái)の鑑定は刀身を中心に行われ、莖を參照するのが常であった様です。
刀工の最も関心の的は刀身ですからそれを論ずる事が刀剣研究の要旨ですが、単に作者の真?zhèn)舞a定或いは代別決定という事になると、この方法は全く困難に陥っていまいます。
第一刀身は度々研磨を加えられるものである事を考えなくてはなりません。
そこで、古人の尊い研究も、今日我々の直面する作品の場(chǎng)合では既に時(shí)代の変化が加わってそのままには受け入れ難いところが場(chǎng)合があります。故に刀身による鑑定の場(chǎng)合にはこの事を考慮して、研磨が地鉄や刃文に如何なる影響を及ぼすか、又造り込みにおいて如何なる改変がなされるか丹念に研究せねばなりません。
　この事はなお措くとしても刀身中心の鑑定法の欠陥は、刀身が條件に葉っている場(chǎng)合は、莖銘の方の批評(píng)眼が曇りがちになる事です。刀身の作風(fēng)は親子師弟の同一流派伝系の中に者の作品は極度に類(lèi)似するもので、かかるものを以て試される偽物は容易に見(jiàn)分け難いのです。この場(chǎng)合には銘の方も勿論似せられてますから、刀身の方を以てよしとする先入主があると、その観念に禍いされて銘の真?zhèn)韦蛞?jiàn)破る事は出來(lái)なくなります。
　かかる時(shí)、偽物ならば動(dòng)機(jī)の不純なるを以て必ずそれと見(jiàn)破られるべき要素を殘存するのですが、同銘の代別になるとよほど困難になります。刀身の作風(fēng)の如きは全くこの場(chǎng)合に頼りとはなりません。何故なら問(wèn)題となる作品は雙方共に類(lèi)似の著しいものである筈で、一般に初代の晩年作と二代の若年作は極端に似ているもので、その様なものが多く疑問(wèn)を生むのです。かかる時(shí)は何にしても莖によって判斷せざるを得なくなります。
　一方莖銘を主とする場(chǎng)合については如何というと莖は原則として手を加えられないという事がよき條件の一つです。しかも錆という貴重な証拠が時(shí)日と共に加えられる事によって、人為的に偽物を作るのを困難にしています。
また刀身は常に子弟と共同に作られるのに対し銘字は作者一人の手によるもので、最も個(gè)性的という事ができます。
故に酷似すると思われるものも、よく研究すると共に各々特徴を有する點(diǎn)を発見(jiàn)することが出來(lái)ます。
　故に莖銘によって真?zhèn)文酥磷髡邉eを斷じてよいと私は考えています。
反対にここに疑義あるものは、たとえ刀身はそれと見(jiàn)えても正しき作者のものとする事はできません。
これは些か無(wú)謀に近いといわれるかも知れませんが、原則としてかかる態(tài)度が儼乎として把持せられ以て鑑定に臨まなくてはならないのです。勿論私は弟子、兄弟、息子の代作の如きものをも偽物とするものではありませんが、これらはあくまで代作たる事が明らかにならなくてはなりません。
　このような事実は莖銘に最も注目することからのみ得られるので、刀身にのみ拘れば多くの場(chǎng)合弟子の代作の如きは師の作品として何等不審なく見(jiàn)過(guò)ごされてしまうでしょう。
尚莖の監(jiān)察には押形という補(bǔ)助手段を用いて研究を精密にする利便が伴います。
押形に表れたる銘字、鑢目、タガネ枕等は勿論実物そのままではありませんが、銘字は平面的に引き直されたものとして視覚にたよる場(chǎng)合最も単純なものというべきです。また莖の押形は手寫(xiě)に多少の巧拙はあっても大體同じ様なものを殘す事ができますが、(しかも余り粗雑なものは役に立ちませんが)刃文に至っては之を描寫(xiě)する人の鑑識(shí)眼の高下によって到底同一効果のものを殘すことはできません。
　押形の銘字は実際の莖に比べて錆色無(wú)く切り込まれた深さが無(wú)いので陰影の感じを失っています。
この點(diǎn)実物そのものとは遠(yuǎn)いのですが、それだけに我々の眼の不正確さによって過(guò)たれる失策を避けることができます。
我々の眼は錆色の自然なものは兎角正作と見(jiàn)、反対に錆色に難があると怪しく思いがちですが、現(xiàn)在では愛(ài)刀家は莖のよき保存に関心を持つため錆色よく、そうでないものは不當(dāng)に朽ち込みがあったり所謂よくない錆色をしているものです。そのような事が年代を若く見(jiàn)せたり或いは古く見(jiàn)せたりする結(jié)果になる場(chǎng)合があります。
押形による場(chǎng)合はかかる誤測(cè)から救われるのです。
同じ銘の比較も実物作品同士よりも押形は手軽に扱い得て如何程時(shí)間をかけて堪念に行う事も可能です。
　見(jiàn)た目には極度に似ていると思う銘字が押形にすると中々違っているもので、この點(diǎn)我々の眼は不正解だとつくづく嘆ずる事があります。また錆色の自然さを見(jiàn)ると我々は無(wú)意識(shí)に偽物という観念をなくするのは愛(ài)刀家一般の心理でしょう。
　ですから初心の方に於いては実物をよく観察すると共に一度押形に取ったものを見(jiàn)ることが安全な方法であり、それと共に銘字に対する感受性を強(qiáng)める事になって二重の利益となるのです。
　以上の如く押形は鑑定の場(chǎng)合多少助けとなるものですが、平素の研究に於いては一層重要な役割を演ずるものです。
　それは現(xiàn)在刀を三十本、四十本と一ヶ所に集め、直接手に取って作風(fēng)や莖銘を調(diào)べる事はできない狀態(tài)にあります。
若し押形の助けを借りるのでなければ銘字の比較は思いのままに出來(lái)るものではありません。
刀身の作風(fēng)の如きは一時(shí)の記憶にすぎないので一つの刀が他の刀と似ているといったところで、その刀を一時(shí)に見(jiàn)ているのでなければ記憶による比較を行っているに過(guò)ぎないので甚だしく不安なものというべきです。
刀身のできの如きは漠然とならば覚えているでしょうが、銘の特徴の如きは一々記憶するという事は如何に明敏なる頭脳も及ばないところです。
　この場(chǎng)合押形によれば何百枚にても一々手に取り精細(xì)に比較研究をする事ができるので、一刀工の銘の変換の如きは実物を三本四本と暇に任せて見(jiàn)るのでは絶対に思い及ばないところですが、押形によれば容易に可能です。
　ここに於いて銘字研究には押形収集は不可欠となるのです。
　よく人々は押形などで真?zhèn)韦戏证椁踏妊预い蓼工ⅳ饯欷涎盒韦蛘妞死盲筏渴陇韦胜と恕─窝预趣い铯胜皮悉胜辘蓼护?。押形は多く集め、常に不怠これに接していれば自ら真?zhèn)韦舞a別のみは実物を見(jiàn)ずしてできる様になるものです。偽物特有の嫌味な感じ、文字の巧拙によらず何となく伸々しない點(diǎn)、渋滯する筆力等、押形に多く接する中自然會(huì)得できるのです。
　また同時(shí)代の作者の押形を集めて研究すれば時(shí)代的な特徴をも知りえるので、この事は刀剣を五十本百本纏めて見(jiàn)る事の出來(lái)ない現(xiàn)在にあっては実作品のみを以てしては最も及び難いところです。
押形収集はさして難事ではなく、実物を見(jiàn)た余得として保存すれば年月と共に増加するので、これが研究の助けとなる事は非常なものです。
故にこの事業(yè)は刀剣研究に於ける終始怠るまじき業(yè)です。
これによって銘字に対する直観力を體得し莖のみによって真?zhèn)韦驔Q定する鑑定方法の上達(dá)に努めるべきであると私は考えます。こうしている中に刀身の方の知識(shí)も期せずして相當(dāng)の域に達(dá)する事ができます。
　押形鑑定は決して畳の上の水練ではなく、精密なる銘字研究の補(bǔ)助で、この事の極致は実物を見(jiàn)ずして鑑別に至る域に達(dá)する事です。
　こういう事は押形の重要性を不當(dāng)に鼓吹して刀身研究忠実の重要性を無(wú)視するものではなく、それらの事は益々努めねばならぬ事は言を俟ちません。
　そうして実作品に接しない余暇を以て押形研究にあて不斷の練磨をなすべきであると思います。
　しかし私の専ら依る立場(chǎng)は押形を重んじ莖銘中心の鑑定である事は先に述べた通りです。

? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ?轉(zhuǎn)載自 昭和15年発行の藤代義雄氏著 「日本刀要覧」