陰陽師帝釋天 繪卷第二章:心友(中日雙語整理)
帝釈天に出會うまで、阿修羅は數々の手柄を立てたが、仲間と言える者は一人も現れなかった。それはひとえに彼の強さがもたらすものだった。あまりにも強すぎる阿修羅だったが、戦闘中はよく狂暴化して、敵仲間関係なく殺戮の限りを盡くす、そんな彼を止められる者は一人もいなかった。
在結識帝釋天之前,阿修羅雖戰(zhàn)功累累,卻沒有人與之為伍,只因為阿修羅雖然強大,卻經常在戰(zhàn)斗中狂暴嗜殺,不分敵我地攻擊,沒有人能夠制止他。
帝釈天に出會ってから、阿修羅に初めて仲間ができた。
遇到帝釋天之后,阿修羅第一次有了搭檔。
「我が戦神よ、あなたは正真正銘の奇跡。あなたは必ず天人一族に未曽有の変化をもたらす?!沟坩嬏欷悉饯ρ预盲??!杆饯弦韲猡趣いψ跃瘒猡韦瑜Δ式M織を立ち上げた。どうか一緒に來てほしい、阿修羅?!?/p>
“我的戰(zhàn)神,你是真正的奇跡。我相信你將給天人一族帶來翻天覆地的變化?!钡坩屘煺f道,“我有一個叫翼之團的民兵組織,跟我一起來吧,阿修羅?!?/p>
「お前こそが奇跡だ。」阿修羅はこう言った?!袱蓼à顺鰰盲繒r、俺は何年も探し続けたものを、ついに見つけた気分だった。」
“你才是真正的奇跡,“阿修羅說,“遇到你的時候,就好像有一樣我自己都不知道找了多久的東西,終于讓我找到了?!?/p>
「だから仲間に入れてくれ、帝釈天?!?/p>
“所以讓我加入吧,帝釋天?!?/p>
阿修羅の仲間入りは皆を大いに勵ました。その後翼団は、いよいよ正式に戦爭に參加した。
阿修羅的加入大大地鼓舞了士氣,翼之團終于開始積極地參與戰(zhàn)事。
戦場にいる阿修羅はいつも一人で先頭に立っていた。彼の霊神體は六本の真っ赤な鬼手を振り回し、時に武器を使ったり、時にそのまま敵の胸を切り裂いたり、時に阿修羅に剣に変えられたりして、彼が敵軍に切り込んだ瞬間に空を引き裂く。故にどんな軍隊が立ちはだかろうと、一瞬で、空は血飛沫に埋め盡くされる。
戰(zhàn)場上的阿修羅永遠單槍匹馬沖在最前,他的靈神體揮舞著六條猩紅的鬼手,有時揮舞著武器,有時則直接劃開敵人的胸膛,有時阿修羅將它化作一柄長劍,在他跳入千軍萬馬之中的瞬間劃破長空,任何擋在他面前的軍隊都不堪一擊,剎那間,通通化作揚在空中的血沫。
悲鳴、切り裂かれる音、呪いや命乞い。黒い戦神はすぐそれに耽って、終わりなき死に惑わされる。殺戮の味で喉が渇くほど、死體の山が高くなるほど、彼の眼差しは狂気を帯びていき、叫び聲が轟く。ただ殺戮を繰り返す手は、決して動きを止めない。まるで彼に襲いかかる無數の敵の中で、道を切り開こうとしているかのように。敵と仲間の概念が曖昧になり、彼の觸手は鞭のように仲間に振り下ろされた。
悲鳴聲,撕裂聲,詛咒與祈求聲,黑色的戰(zhàn)神很快著迷在其中,被無窮無盡的死亡所蠱惑,殺戮的味道在口中變得越發(fā)干渴,腳下堆積的尸體越高,他的眼神就變得越發(fā)暴虐,嘶吼變得越發(fā)狂熱。唯獨手中廝殺的動作更加狂躁,仿佛想要在向他撲來的干軍萬馬之中尋找一個出口,他開始敵我不分,如同長鞭一樣揮舞的觸手揮向了自己的同伴。
しかしその時、帝釈天の霊神體が遠くから彼に手を伸ばした。真っ白な鳥のような霊神體は殺戮を飛び越え、屍の山を飛び越え、阿修羅のそばに飛び降りた。
然而就在這時,帝釋天的靈神體從遠處向他伸出了手,那靈神體像純白的飛鳥一般,越過廝殺,越過尸山血海,來到阿修羅的身邊。
銀色の蓮が血に染まった土の中に根差し、人知れずに咲き誇った。蓮はか弱いけれど、無力そのものだけれど、それでも精一杯阿修羅に近づき、彼を襲う鬼族の鋭い爪を払おうとした。
銀白色的蓮花在血染的淤泥之上悄無聲息地綻放,即使柔弱,即使無力,卻盡力伸向阿修羅,試圖為他撥開鬼族們殺向他的利爪。
おかげで阿修羅は再び正気を取り戻し、にっと笑って、刃で鬼族の腕を切り落とした。そして血に塗られた戦場を、帝釈天の霊神體と共に進み出した。
于是阿修羅又再度清醒過來,他露出笑容,長劍落下斬斷鬼族們的手臂,在血流成河的戰(zhàn)場上,與帝釋天的靈神體一并前行。
帝釈天は阿修羅こそが天人の本當の英雄だと信じ込んでいる。
帝釋天堅信阿修羅是天人真正的英雄。
「もし天人一族が皆あなたのように強ければ、鬼族との千年続いた戦爭を終わらせることができるはずだ?!?/p>
“如果每一個天人都能像你這樣強大,我們定能終結和鬼族的千年戰(zhàn)爭?!?/p>
しかし阿修羅は、帝釈天の華奢な體の中にこそ、とんでもない力が隠されていると信じて疑わなかった。
然而阿修羅卻堅信帝釋天柔弱的外表下隱藏著世間少有的力量。
「もし誰もが俺のように殘虐で、殺戮しか知らないやつだったら、ある日俺が終わりなき災いや暴動をもたらした時、誰が俺を止めに來るんだ?」阿修羅は言い返した?!袱挨い胜堡欷?、俺一人では進めない。」
“如果世人都像我這般暴虐,只知殺戮,那若有朝一日我開啟了永無止盡的兵災和暴亂,又有誰來阻止我?”阿修羅反問,“若不是你,我是無法真正前行的?!?/p>
「いつか、皆きっとお前の価値に気付く?!拱⑿蘖_は斷言した。
“總有一天世人都會意識到你的價值?!卑⑿蘖_篤定道。
天人の戦神たる阿修羅がなぜ暴動をもたらすのか、帝釈天には分からなかった。
帝釋天不明白最強的天人戰(zhàn)神阿修羅為何而暴亂。
世の中には千萬を超える種族がいるけれど、霊神體の融合によって世に生まれ、霊神體の壊滅によって死ぬのは天人だけだった。阿修羅の內なる心の聲を、阿修羅がかつて経験した痛みを、帝釈天は知らなかった。
在世間萬物種族千千萬,唯獨天人一族從靈神體的融合而誕生,又因靈神體的毀滅而死亡,帝釋天不知道阿修羅懷抱著一顆怎樣的心,又曾經嘗過怎樣的苦痛。
「人を形作るのは肉體じゃない、心なんだ。俺の心に巣食う魔物は、俺一人で倒さなければならない。」阿修羅はこう言った。
“定義一個人的并非身體,而是心,我自己的心魔,必須我獨自去戰(zhàn)勝它?!卑⑿蘖_說道。
「運命は私達が共に戦えるように、私達を巡り合わせた。」帝釈天は言った?!袱ⅳ螘r戦場であなたの痛みを分かち合ったように、もし何かが足りなければ、私は必ずそれを補う?!?/p>
“命運指引了你我相遇,也指引你我一同作戰(zhàn),”帝釋天說道,“就如同在戰(zhàn)場上我分擔你的痛苦那般,若你缺了什么,我一定也會為你補上?!?/p>
阿修羅は軽く笑ってそれをやり過ごした。
阿修羅不以為然地笑了。
ある日、二人は鬼族の支配下にある村を助けてくれと頼まれた。阿修羅の活躍により、村は無事に解放された。ある子供の口から、母が深淵に連れ去られ、魔神に捧げる生贄にされたと聞いた阿修羅は、一人で深淵に赴いた。
一日,二人受托前去營救一個被鬼族控制的城莊。在阿修羅的沖鋒下,城莊順利被解放,阿修羅從一個孩子口中聽說,孩子的母親被惡鬼抓去深淵,即將獻祭給魔神,馬上只身去往深淵救人。
後で事情を聞いた帝釈天は、急いで仲間を連れて彼の後を追ったが、彼らが真っ黒な深淵の奧に辿りついた時、魔神と戦う阿修羅は既に徹底的に狂亂に支配されていた。命をかけて魔神と死闘を繰り返す彼は深手を負ったが、彼は意固地に撤退を拒んだ。その殘虐な姿は本物の魔神よりも恐ろしいものだった。彼の霊神體は自滅的な攻撃を決行したせいで満身創(chuàng)痍になったが、帝釈天の呼びかけには答えなかった。
事后才得知的帝釋天急忙帶人追了上去,而當他們趕到漆黑的深淵深處時,阿修羅已在和魔神的戰(zhàn)斗中徹底狂暴。他在與魔神死戰(zhàn),即使身受重傷,也執(zhí)意不肯退卻,殘暴嗜血樣子比真正的魔神還要可怖。他的靈神體在毀滅般的進攻中滿目瘡痍,卻無論如何也不肯回應帝釋天的呼喚。
切羽詰まった狀況下で、帝釈天は霊神體で阿修羅の意識を受け入れた。意識のぶつかり合いに苛まれ、帝釈天は跪いた。阿修羅の痛みや狂亂が、津波の如く帝釈天の頭に押し寄せた。彼は胸を力強く摑み、叫び聲をあげた。
情急之下,帝釋天以靈神體接納了阿修羅的意識,意識的強行碰撞使得帝釋天跪倒在地,阿修羅的苦痛和瘋狂如同決堤的洪水般涌入他腦海中,帝釋天抓緊了自己的心口,仰頭尖叫出聲。
次の瞬間、彼は阿修羅の過去を見た……
緊接著,他看到了阿修羅過去的記憶——
天人と鬼族の両方が暮らす村に生まれ、幼い阿修羅はただ一人の家族である母と支え合いながら生きていた。いつまで経っても霊神體が目覚めない彼は、天人と鬼族の嘲りを浴びていた。
誕生于天人與鬼族共生的村莊,年幼的阿修羅與唯一的母親相依為命,因為遲遲沒有顯現靈神體,他被天人和鬼族所嘲笑。
弱い彼を受け入れてくれるのは母だけだった。阿修羅を抱きしめ、笑って優(yōu)しく彼の背中を叩き、その痛みを取り去ってくれる。
只有母親不在乎他的弱小,將阿修羅抱在懷里,她總是笑著,輕輕拍著他的背,拂去他的傷痛。
「泣かないで、私の阿修羅?!?/p>
“別哭了,我的阿修羅?!?/p>
天人と鬼族との戦爭が起きた時、村の矛盾は激化したあげく、阿修羅の母は鬼族に連れ去られた。母を助けるべく、阿修羅の霊神體はついに覚醒した。
時至天人與鬼族開戰(zhàn),村中的兩族沖突終于爆發(fā),阿修羅的母親被鬼族捉走,為救下母親,阿修羅終于覺醒了靈神體的力量。
命を授かったばかりの真っ赤な觸手は鬼族の爪よりも鋭く、そのまま母を捕まえた悪鬼に襲いかかり、二人を貫いた。
新生的紅色觸手比鬼族的利爪更為尖利,直指捉住母親的惡鬼,卻將二者一并貫穿。
優(yōu)しい母は血まみれで彼の懐に倒れ、最後にもう一度彼を抱きしめようとした。しかし彼の涙を拭きとる前に、差し伸ばされた手は力盡きて垂れ下がった。
溫柔的母親渾身是血地在他懷中,試圖最后一次抱緊他,伸出的手卻在拂去他的眼淚前無力地垂下。
「さようなら、私の阿修羅」。彼女は悲しく笑った。
“再見了,我的阿修羅。 ”她悲傷地笑著。
彼の懐にある母の體が段々冷たくなっていく。
母親的身體在他的懷中逐漸冰冷。
無雙の力はたやすく命を奪えるが、それを亡くなった人に返すことはできない。霊神體が覚醒した彼は力の暴走に支配され、村を破壊しつくした後、流離いの旅を始めた。
無上的力量能夠輕而易舉地奪走生命,卻無法歸還已經逝去的人,覺醒了靈神體的阿修羅在力量暴走下,血洗了整個村落,此后開始獨自流浪。
幾千萬の種の頂點に立つ強者になったけれど、たった一人の大切な人を守れなかった。戦うたびに、殺戮するたびに、血に染まった目にはいつもあの日ことが浮かび上がる。絶えない炎が、彼が生まれ育った地で燃え盛る。耳に入った悲鳴は全部彼の知っている者の聲だった。最後に、その全ては冷たくなっていく母の體になる。
成為了萬千族群最頂端的強者,卻沒能留住唯一珍視的人。在每一場戰(zhàn)斗,每一場屠殺之中,他浸透鮮血的眼中都會浮現出那一日的情形,無盡的烈火燃燒在他出生成長的土地之上,耳中的每一聲哀嚎都化作他曾熟知的村人,最終,又一個個化作母親逐漸冰涼的身體。
全ては血に塗られた戦爭の中に隠された。阿修羅を除けば、誰一人そのことを知らない。そしてついには、阿修羅さえも彼女の顔をはっきりと思い出せなくなった。
一切湮沒在血腥無盡的戰(zhàn)爭之中,除了阿修羅,再也無人記起。而到最后甚至連阿修羅,也再記不清她的樣子。
熱い涙が地に滑り落ち、阿修羅の悲痛は霊神體を通じて帝釈天の魂を貫いた。
滾燙的眼淚滴落在地上,阿修羅的悲痛通過靈神體穿透帝釋天的靈魂。
帝釈天は手で目を覆ったが、零れ落ちた涙は自分のものなのかそれとも阿修羅のものなのか、どうしても分からなかった。彼の銀色の蓮は頑なに阿修羅の壊れた觸手を抱きしめ、相手がいくら足掻いても、決して力を抜かなかった。魔神の攻撃のせいで、両者は區(qū)別のつかない一つの肉塊と化した。
帝釋天撫上自己的雙眼,卻不知道指尖的淚水究竟是屬于自己還是阿修羅,他銀白色的蓮花死死抱住阿修羅殘破的觸手,無論對方如何掙扎,都不肯松手,在魔神的攻擊下,二者幾乎一并變成了一團再不可分割的血肉。
激痛に蝕まれた帝釈天が聲高く叫んだ?!副伺摔隙趣葧à胜い堡欷?、私はいつでもあなたの後ろにいる。振り返れば、私はそこで待っている!」
劇痛的侵蝕中帝釋天高聲地嘶吼了出來,“即使你再也無法與她重逢,我卻永遠都站在你的身后,回過頭來,你就會看到我還在等你!”
阿修羅は急に悪夢から解放されたように目を開けた。真っ白な蓮が闇の中で暖かく優(yōu)しい光を放っている。
阿修羅如同從噩夢中醒來一般突然睜開眼,那純白的蓮花在黑暗中發(fā)出溫暖又溫柔的光亮。
「痛みはあなたの勇気になる、阿修羅。そして私はあなたの目、あなたの盾になる?!?/p>
“你的痛苦將會轉化為你的勇氣,阿修羅。而我將成為你的眼睛,你的盾。”
闇の中で、彼は彼の道を照らした。それは前に進む道で、帰る道でもある、彼ら二人は、必ず同じ場所で落ち合うのだから。
他為黑暗中的他照亮了路,那即是前路,也是歸路,因為他們二人,終將前往同一個地方。
黒い戦神は力を全て絞り出し、ひどい怪我を負った觸手を無理矢理剣に変え、闇を切り裂き、魔神の頭を切り落とした。そして最後、彼は蓮に照らされ、母のような暖かい闇に落ちた。
黑色的戰(zhàn)神用盡全力,迫使自己重傷的觸手化作利劍,劃破黑暗,一刀斬斷了魔神的頭顱。最終他墜入了被蓮花所照亮的,如同母胎一般溫暖的黑暗。
しかしあの巨大な醜い頭は、地に落ちた瞬間に彼の耳元ではっきりと言い切った。「阿修羅、お前は必ず後悔する?!?/p>
然而那丑陋巨大的頭顱落下的那一瞬,在他耳邊清晰地說道:“阿修羅,你終將后悔。”
魔神の目は頑なに阿修羅を睨んでいる。
魔神雙眼死死地望著阿修羅。
阿修羅が再び目覚めた時、魔神との戦闘から既に何日も経っていた。彼の霊神體は半ば壊れていて、誰もが彼は永遠に眠り続けるだろうと思っていたが、帝釈天だけは諦めずに彼を看護し続け、ついに奇跡が起き、彼は回復した。
等到阿修羅再度醒來,距離魔神一戰(zhàn)已過了數日,他的靈神體幾乎半毀,所有人都以為他不會再醒來,只有帝釋天不肯放棄地日夜守在他身邊,終于盼來了他痊愈的奇跡。
「お前は俺を助けるべきじゃなかった?!拱⑿蘖_はそう言った。
“你不該來救我的?!卑⑿蘖_說道。
「私は天人一族の希望を助けた?!沟坩嬏欷洗黏à俊!羔峄冥胜嗓工毪猡韦!?/p>
“我救下了天人一族的希望。“帝釋天回答道?!拔乙稽c也不后悔?!?/p>