【GPT機翻】戰(zhàn)國小町苦勞譚 (戦國小町苦労譚)- 114 [千五百七十四年 一月下旬]
書名 戰(zhàn)國小町苦勞譚
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作者: 夾竹桃
原作:http://ncode.syosetu.com/n8406bm/
翻譯工具:ChatGPT
*機器輸出的翻譯結果UP未做任何修正,僅供試閱。標題章節(jié)號為原翻譯版的順延。*
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千五百七十四年 一月下旬(*原文網頁序列號 - 131)
織田軍による軍事支援を斷る。その申し出の意図を靜子は考えた。
拒絕織田軍的軍事支援。靜子思考了這項提議的意圖。
「こちらから願い出ておきながら、何を蟲の良い話をと、お考えかと存じます。なれど、このままでは長宗我部(ちょうそかべ)が四國の覇者である意味がございませぬ??椞飿敜既宦暏驋欷堡郡韦L宗我部であり、そこに必然性はなく、誰でも良かったとなり申す」
"你們提出要求,卻為什么卻拖拖拉拉的?這是什么讓你們生病的消息?順帶一提,長宗我部不是四國霸主的必然結果。織田先生只是碰巧找到了他們,沒有必然性。任何人都行?!?/p>
池の表情には苦渋が浮かんでいた。事実その通りであり、四國を治めるに足る器量があれば、信長は長宗我部に固執(zhí)しないだろう。
池苦澀地看著,事實如此,如果長宗我部有能力統(tǒng)治四國,信長就不會欽點長宗我部。
「無論、長宗我部でなくてはならぬと思い上がる程、現(xiàn)実が見えない訳ではござりませぬ。なれど四國を統(tǒng)治するにあたり、侮られたままでは支障がございます」
“當然,如果他們認為只有長宗我部才能擔任這個角色,那么他們就沒有看到現(xiàn)實。但忽視長宗我部統(tǒng)治四國會造成支持上的負擔。”
靜子が推測するまでも無く、池自身が理由を語った。なるほど、尤もな話だと靜子は思う。
沒有必要讓靜子推測,池自己解釋了原因。靜子認為這是一個正義的話題。
現(xiàn)狀、九鬼水軍の活躍ばかりが取り沙汰され、長宗我部の存在感を示せていない。このまま推移すれば、織田軍が長宗我部に四國を統(tǒng)一させた(????????)と、誰もが思うことだろう。
目前,只有九鬼艦隊的活躍被報道,長宗我部沒有展示出存在感。如果這種情況繼續(xù)下去,織田軍將統(tǒng)一四國,長宗我部會被認為是幫兇。
「お考えは得心がゆきました。それならば、直接上様に奏上されるが筋かと存じます。三好の一件でご立腹ではありますが、然るべき道理があるならば、きっとお聞き入れ下さるでしょう」
“你的提議已經被理解了。如果這是個有道理的命令,你應該直接奏上去。信長可能仍然惱怒于三好的問題,但如果有充分的理由,他一定會聽取的?!?/p>
「え……ええ。それは重々承知しておりますが……その……」
“嗯……好的。我很清楚這一點……但是……”
信長への奏上を促すと、池は途端に歯切れが悪くなった。
當池被促使向信長提出奏上時,他的口氣變得有點猶豫。
彼の態(tài)度を見て、靜子には思うところがあった。勝ち筋が見えてから、自分達にも活躍の場が欲しいと申し出るのは確かに蟲の良い話である。
靜子在他的態(tài)度上看到了一些東西。一旦他們看到了獲勝的機會,他們就會提出類似于讓我們也秀一下的要求,這顯然是一種虛假的建議。
最終的には四國の安寧に繋がり、織田にも利があることながら、この提案をすることは信長の逆鱗に觸れうると危懼しているのだ。
盡管最終結果會對四國的安寧和織田也有好處,但他們提出這個提議會觸怒信長,這是他們所擔心的。
下手に信長の神経を逆なでして、長宗我部諸共に滅ぼしてしまえとなれば目も當てられない。
如果冒昧地觸怒信長,那么不僅是長宗我部,他們也可能面臨毀滅。
そこで信長自身が一目も二目も置く、靜子に間に立って執(zhí)り成して欲しいと願い出ているのだと、靜子は察した。
大營中有好幾個人都擔心這件事情,所以信長親自找到靜子希望她能夠協(xié)調這個問題,靜子一聽立刻明白了他的意思。
(上様は感情的にはなるけれど、感情のままに決定を下すことは稀なのに……まあ、この辺の機微は付き合いが無いと判らないよね)
即使上方會情緒化,但下決定時不會受情緒左右……嗯,這些微妙的細節(jié)如果沒有親密交往是看不出來的。
それに九鬼水軍にとっての実戦経験は、十分に積めたと靜子は判斷した。
而且,九鬼水軍在實戰(zhàn)中的經驗已經足夠了,靜子認為。
一気に引き上げて逆転されても堪らないから、段階的に引き上げ、本來の目的で運用を始めても良い頃合いだとも思った。
他們不能冒險突然撤退,因為那樣會被對手逆轉局面。靜子認為現(xiàn)在是逐步撤退、開始使用原來的計劃的好時機。
しかし、方針を転換するに十分な理由がない。何よりも未だ三好は健在であり、信長の意向を果たせていないことがネックとなる。
但是,沒有足夠的理由來更改計劃。最重要的是三好仍然活著,這是實現(xiàn)信長意愿的難點。
「ふーむ。上様を説得するとなれば、それなりの根拠が必要となります。5年……いえ、3年で三好を滅ぼせますか?」
“嗯。如果我們要說服上級,就需要一定的證據(jù)。你能在5年內……不,3年內消滅三好嗎?”
「3年! いえ……これが出來ぬようでは、遠からず織田様も我らをお見限りになりましょう。必ずや滅ぼしてご覧に入れます」
"3年!……如果這做不到,織田大人將會與我們斷絕關系。我們一定會讓他們見識到我們的能力。”
「(これが絶対條件って訳じゃないけど、先方にはそれぐらいの心積もりでいて貰う方が良いよね)わかりました。そう言うことならば、私から上様へ執(zhí)り成しましょう。暫し時間を貰いますが、構いませんね?」
“(雖然這不是絕對必要的條件,但對方最好有這樣的想法)我明白了。那我會為此找到上級??梢越o我一點時間來考慮嗎?”
「はい。この件については明智様のご支援もございます。即座に決斷して頂こうなどとは、毛頭考えておりませぬ」
“是的。關于這個問題,明智先生也會支持我們。我們絕不會倉促決定?!?/p>
池が漏らした言葉から、靜子は誰が絵を描いているのかを理解した。元より長宗我部は光秀の影響下にあった。しかし、今回の一件によって勢力図は大きく塗り替えられた。
靜子從池漏的話中理解了誰在畫畫。長宗我部一直在受光秀的影響。然而,這次事情徹底改變了勢力格局。
この申し出を契機に再び光秀の影響力は強くなる??椞铯摔饬激贰㈤L宗我部にも良し、靜子にとっても益がある。當然光秀の利は言うに及ばない。
靜子在這個提議的機會下,光秀的影響力再次增強。這對織田有利,對長宗我部有利,對靜子也有好處。當然,光秀也會從中受益。
流石は智將と名高い明智光秀。上手く利害を調整してみせるものだと、靜子は感心さえしていた。
確實是眾所周知的智將明智光秀。他真的很擅長協(xié)調利益,讓靜子也感到很欽佩。
(乗り気に見えたのが誤解を招いたのかな? 四國が統(tǒng)一されるなら、誰が治めても私は構わないんだけど)
(看起來有興致可能引起了誤解嗎?如果四國統(tǒng)一,誰治理我都無所謂,)
靜子としては四國の土地に、巨大な果樹栽培地帯(ベルト)を見出していた。
對于靜子來說,她在四國的土地上發(fā)現(xiàn)了一個巨大的果樹種植區(qū)(帶)。
四國は中央を東西に四國山脈が橫たわり、そこを境に北部と南部では大きく気候が異なる。古くから干害に陥りやすく、水耕栽培をするには向いていないが、日當たりの良い山地に排水の良い土壌を好む果樹を植樹し、日ノ本の需要を賄う計畫を立てていた。
四國中央是橫跨東西的四國山脈,北部和南部的氣候有很大的差異,歷史上易遭受干旱,不適宜水栽培,但計劃在日本的需求下,在陽光充足的山地種植喜歡有良好排水的果樹。
靜子としては史実通り、愛媛県でミカンなどの柑橘類を栽培し、香川県ではオリーブを育て、平野部では米ほど水を必要としない、小麥を育てるつもりで色々と手配していたのだ。
靜子像史實中一樣在愛媛縣種植柑橘類水果,如橘子,在香川縣種植橄欖,而在平原上種植不需要像水稻那樣需要大量水的小麥。
珍しく靜子が支配地に色気を出したため、光秀としても警戒をしてしまったという背景が存在した。
齊心協(xié)力,實現(xiàn)各自的不同未來,靜子不尋常地展現(xiàn)了支配區(qū)域的魅力,因此光秀也開始提高警惕。
光秀は、この話を取り持つことで長宗我部への影響力を確保し、靜子に他意が無い事も確認できる。
通過介入這個話題,光秀確認了對長宗我部的影響力,并確認了靜子沒有其他意圖。
靜子としても光秀が手綱を握ってくれるなら、準備が無駄にならずに済むため望む処と言えた。
如果光秀掌控了局面,靜子將不會浪費準備時間,因此她希望光秀把握大局。
それぞれに異なる未來を見據(jù)えつつも、利害が一致したため、円満に話が纏まった。
盡管看向不同的未來,但由于利益一致,會談順利結束。
全員の合意が得られたところで、池は靜子、光秀雙方に深々と頭を下げて退出した。光秀が中座しないところを見ると、まだ用があるのだと察して靜子は內心うんざりしていた。
在所有人都達成共識之后,池謙虛地向靜子和光秀鞠躬道別??吹焦庑銢]有離開,靜子心里有些不耐煩,意識到他還有事要說。
強引に中座しても良かったのだが、次に向かう先が秀吉であるため、痛くもない腹を探られるのも堪らないと我慢することにした。
雖然他可以繼續(xù)占用場子,但下一個目標是秀吉,如果他被人發(fā)現(xiàn)根本沒有事情要辦,那就糟糕了,所以她決定忍耐。
「厄介なお話を持ち込み、申し訳ありません。とは言え、靜子殿にしか出來ぬことゆえ、何卒お願い申し上げまする。処で話は変わりますが、珠はご迷惑になっておりませんでしょうか?」
“真是一個麻煩的話題,我很抱歉。但是,這是只有靜子能做到的事情,因此請您給我們幫助。話題轉變了,珠子有沒有給您添麻煩?”
「珠ちゃんですか? この頃は仕事も覚えて、手が掛からなくなり、元気に仕事をしていると聞いております」
「你是珠嗎?我聽說你現(xiàn)在也學會做工作了,不需要太多的照顧,并且精神也很好地工作?!?/p>
「それは重畳。珠から屆く文には、やれ珍しい動物を見ただの、美しい彩色が為された玻璃(はり)を見ただのと……お勤めを果たしているのか甚(はなは)だ不安な內容ばかりで……」
「那是很重要的。從珠那里來的信里,只有關于看到珍奇的動物和看到美麗的玻璃(Haru),以及我非常擔心她是否能履行她的工作...」
靜子の返答に光秀は胸を撫で下ろす。珠から屆いた文では近況すら分からず不安を覚え、こうして訊ねるに及んだと靜子は察した。
在靜子的回答中,光秀摸了一下他的胸口。他從珠那里收到的信中沒有近況,只有不安,靜子一定是意識到了這一點,并問到這一點。
(武將とは言っても人の親。やっぱり我が子のことは気になるのね)
(盡管是武將,但也是人的親戚。畢竟是自己的孩子,所以他很在意。)
世間では織田家の出世頭と名高い光秀も、我が子のこととなれば親の表情を見せる。體面もあるのだろうが、意外に情に厚い人柄なのだと靜子は思った。
一般認為是織田家的出色人才,光秀卻因兒子而露出了父親的表情。雖然他也很在意形象,但靜子認為他的感情很豐富。
その後、珠の近況について靜子の知りうる範囲で二、三話をすると、光秀は安心して席を立った。
之后,靜子在她所知道的范圍內談了兩三句關于珠的近況,光秀放心地離開了。
気が付けばかなりの時間が経過しており、靜子は秀吉から先觸れ不要と聞いていたため、その足で彼の許へと向かった。
不知不覺地時間過去了很長時間,靜子聽說秀吉已經不需要預備金了,所以她走向他的住處。
しかし、折り悪く近江から緊急の連絡が屆き、秀吉は竹中半兵衛(wèi)を伴って岐阜を発ったとのことだった。會見は延期かなと靜子は思ったが、名代として殘っていた秀長と會う事になった。
然而,緊急連線從近江傳來,秀吉和竹中半兵衛(wèi)離開了岐阜。靜子認為會面被推遲了,但她決定見代表秀長。
「まずは、お呼び立てしておきながら席を外す無作法をお詫び致します。改めまして今浜(いまはま)(長浜(ながはま)の舊名。秀吉が移り住んだ後、長浜とした)での築城にご助力賜り、兄上に代わってお禮申し上げまする」
「首先,我要對您提前召喚我并離開我的無禮表示歉意。再次感謝您在今浜(以前是長浜)的建城方面的支持,請代替我的哥哥表示感謝。」
秀長は靜子に対して謝意を伝えると共に、深々と頭を下げて感謝を示した。釣られて靜子も頭を下げる。
秀長向靜子表達了感激之情,并深深地鞠了一躬。靜子也跟著鞠躬。
「いえ、順調のようで安心致しました」
「不用擔心,聽說現(xiàn)在很順利?!?/p>
「工房街の普請を地元民に任せて頂いたことを、兄上は殊の外喜んでおり申した。今年の冬は飢える民が居なくなると」
「據(jù)說兄長很高興能夠把工坊街區(qū)的建設交給當?shù)厝?。今年冬天,不再有饑餓的居民了?!?/p>
「土地勘のある地元の方(かた)を雇う方が、合理的ですから」
「雇傭當?shù)赜型恋亓私獾娜烁鼮楹侠怼?/p>
秀長から丁重に禮を述べられ、靜子は少し面食らった。
秀長向靜子表示感謝,靜子有點吃驚。
普請とは、普(あまね)く請(こ)うと言う文字通り、社會基盤を地域住民で造り、維持していくことを指す。
普請是指由當?shù)鼐用窠ㄔ旌途S護社會基礎設施的意思。
ここで靜子が行ったのは長浜の地に、一大ガラス工房地帯を造り上げる事であった。
靜子在此地建造一大片玻璃工坊區(qū)。
尾張で始まったガラス製品作りだが、次第に尾張では手狹となって來ていた。職人も増え、規(guī)模を拡大したいのだが、靜子の領地は周囲を農地に囲まれ、用地の確保が難しい。
玻璃制品起源于尾張,但尾張地區(qū)已經變得狹小。工匠數(shù)量增加,想要擴大規(guī)模,但靜子的領地周圍都是農田,用地很難保證。
元々は実験的に小規(guī)模で始まった産業(yè)だが、技術が確立した今となっては採算性の高い優(yōu)れた産業(yè)に成長していた。
最初是小規(guī)模試驗性產業(yè),現(xiàn)在技術已經確立,成為一項高利潤的優(yōu)秀產業(yè)。
往々にして製造業(yè)と言うのは生活様式が特異なため、居住區(qū)からは隔離し、集中させた方が効率も良い。靜子はどこかに広大な土地を確保できないものかと、思いあぐねていたところ、手を挙げたのが秀吉であった。
由于制造業(yè)通常有一種獨特的生活方式,因此隔離并集中在居住區(qū)域更有效率。靜子一直在尋找一個龐大的土地,但秀吉挺身而出。
秀吉は、新たな所領の主要な街道沿いの一等地を確保し、ガラス工房の誘致を願い出た。
秀吉在新的領地保留了主要道路旁的一處黃金地段,希望能吸引玻璃工坊進駐。
今浜の地は交通の要衝であり、都である京にもほど近く、奢侈(しゃし)品(贅沢品)と見做されるガラス製品の生産地とするには好立地であると言えた。
今濱地區(qū)是交通樞紐,離京都很近,是生產奢侈品玻璃制品的理想地點。
「尾張切子(きりこ)の酒杯は帝もご愛用の品とのこと、いずれは今浜の地から贈られることになると思えば、感慨もひとしおですな」
「據(jù)說帝國甚至喜歡尾張切子酒杯,這也將會從今濱地區(qū)贈送過來,這引起了我的共鳴」
「それはどうでしょう? 帝への獻上品は、品評會で最上と評された物です。私の職人たちも、そう易々とはその栄譽を譲らないと思いますよ?」
「那還不一定吧?向天皇獻上品時應該是經過評選為最高的產品。我的工匠們也不會輕易放棄這種榮譽?!?/p>
普段強く主張しない靜子が、珍しく自負を滲ませた。自身の進退を賭けて育んだ産業(yè)だけに、思い入れも強いのだろう。
平時不怎么強調自己的靜子,這次突然表現(xiàn)了一些自信。畢竟,這是她賭上自己前途的產業(yè),她也有非常深的感情。
「しかし、それほどの産業(yè)を今浜の地に移して宜しいのですか?」
“但是,把這樣的產業(yè)搬到今濱合適嗎?”
「尾張の工房が一番と思ってはいますが、ガラス産業(yè)が広まること自體は大歓迎ですよ」
“我認為尾張的工坊是最好的,但擴大玻璃產業(yè)本身是非常受歡迎的?!?/p>
「ははは、ご謙遜を。富を身內で獨占してしまうのが人の常。広く民草に富を分け與える者は少ない。そうすることが巡り巡って自分に帰ってくると理解していてもなお、難しい。さて、あまり長話も出來ませぬ。兄上より託された言葉をお伝え致します」
“哈哈哈,您太客氣了。私藏財富是人類的常態(tài)。很少有人會把財富廣泛地分贈給人群。即使知道這樣做最終會回到自己,也很難。好的,話不多說了。我要告訴您我兄長交待的話。”
「は、はい」
“嗯,好的?!?/p>
「今浜はガラスと絹の生産地として開発を進める。しかし、どちらも必需品ではないため、先行きの見通しに不安がある。そこで、これだけは今浜にしかないというものが欲しい。と仰せです」
“今濱會發(fā)展成為玻璃和絲綢生產地。但是,由于它們都不是必需品,因此未來的前景令人擔憂。因此,他說需要這個地方獨有的特產?!?/p>
「なるほど」
“明白了。”
秀吉の相談とは『長浜に特産品を造りたい』であった。確かに長浜を含む近江は、平安時代の記録にも殘るほど上質な絹糸や、絹織物の産地として知られていた。
秀吉的咨詢是關于“在長濱制造特產品”。確實,近江包括長濱在內,作為精美的絲綢線或絲綢織物的產地,已經出現(xiàn)在平安時代的記錄中。
しかし、今となってはそれも過去の栄光に過ぎない。近江が産出する絹製品が上質であっても生産量が振るわず、度重なる戦亂によって技術者や職人を失っていた。
但是,現(xiàn)在這也只是過去的輝煌。即使近江的絲綢制品質量很高,生產量也不能引人注目,技術人員和工匠也因經常性的戰(zhàn)亂而失去了。
一口に特産品と言っても即座に作れるものではない。當面は米の生産量を増やすことに注力し、特産品を生み出す土臺を作り上げねばならない。しかし、長浜での稲作には一つの課題が存在した。
一種特產并非立即制造而成。在短期內,我們必須集中精力增加米的生產,并建立生產特產的基礎。但是,在長濱的稻作中存在一個問題。
後世の話になるが、近江の地では水害が多発した。姉川や高時川が氾濫したり、これは南部での話になるが田上(たなかみ)山が原因で瀬田川が氾濫したりもした。
就是后來的事了,近江這個地方經常發(fā)生水害。姐川和高時川經常發(fā)生洪水,這是與南部的田上山有關,企圖以田上山提供的高質量木材來修建一些東西,最終導致瀬田川泛濫。
良質の木材を提供し続けた田上山も、江戸期には『田上の禿(はげ)』として全國的に名高い禿山地帯となった。
一直提供優(yōu)質木材的田上山,到江戶時代已經成為享譽全國的脆弱山區(qū)之一,被稱為“田上的禿山”。
一度(ひとたび)雨が降れば、大量の土砂が瀬田川に流れ込み、下流域の集落が移転する程の被害を出した。
一旦下雨,大量泥石流就會流進瀬田川,造成下游地區(qū)的村莊需要遷移的損失。
明治期になると本格的な治水工事が政府主導で行われ、その時に出來たのが有名な『オランダ堰堤(えんてい)』である。
明治時期政府進行了全面的治水工程,著名的"荷蘭堤"也在此時建成。
「近江は水害が多く、それゆえ治水工事を優(yōu)先する必要があります。治水となれば、いくつか技術を提供できるかと」
"近江地區(qū)水災頻繁,因此需要優(yōu)先進行治水工程。如果治水,可能提供一些技術。"
「おお! それは心強い。表立っては申しませぬが、如何に都に近くとも収入が安定している尾張?美濃地方に領地をと願う家臣もおりまする。水害に対策出來るとなると、近江の水利は素晴らしい魅力となりましょう」
"哦!這太令人欣慰了。雖然不會公開說,但是也有家臣希望能獲得領地,即使與都市接近,也希望能有穩(wěn)定的收入。如果能對抗水災,近江的水利將成為巨大的吸引力。"
この時代の日ノ本に於いて、経済の中心地は尾張である。物流の面では堺に一歩譲るとは言え、いずれ日ノ本の玄関口を擔う可能性は十分にあった。
在此時期的日本,尾張是經濟中心地。雖然在物流方面讓步于堺,但仍有可能成為日本的門戶。
そこから遠く離れた近江の地であり、領民は織田家一黨に良い感情を持っていない。それを考慮すれば、秀吉の家臣たちがもろ手を挙げて歓迎しないのも納得できる。
近江地區(qū)遠離中心地帶,領民對織田家并不懷有好感。考慮到這一點,可以理解為什么秀吉的家臣們不會全力歡迎他。
秀吉が相談を持ち掛けたのも、長浜の將來性を示さねば家臣がついてこないと判斷したからだろう。
秀吉請教家臣們的原因是為了展示長灘的未來前景,以便家臣們跟隨。
「詳細については、兄上が落ち著き次第、本人が靜子様を訪ねますのでその折にお願い致します。まずは前向きにご検討頂けるとの回答のみを頂戴いたします」
"有關詳細情況,等長兄穩(wěn)定下來之后,本人會去拜訪靜子小姐,請在那時候考慮。希望能得到您積極的回答。"
「承知しました」
"我了解了。"
これを以て秀長との會談は終了した。秀長は秀吉から託された用件を伝えた上で、靜子の協(xié)力を取り付けることができ、上機嫌で帰途に就いた。
與秀長的會談至此結束。秀長傳達了秀吉的委托,取得了靜子的合作,并心情愉快地回去了。
(治水と言えば、領主の器量が問われる分野。何の見返りも無く提供すると言ってのけるとは……彼女の権勢はそれほどに及んでいるのでしょうか? 彼女は、米こそが力であり、金や権力の根源にあるという考えを持っていないのかもしれませんね)
(治水領域需要領主的胸懷。她豁出去免費提供,難道她的權力已經到了如此程度?也許她認為,米才是力量、金錢和權力的根源呢。)
同じく信長という主君を抱くとは言え、靜子と秀吉の関係は現(xiàn)代風にたとえるなら、グループ會社內の競合他社である。
雖然都是信長的主人,但靜子與秀吉的關系,如果用現(xiàn)代的說法,就像集團內的競爭公司一樣。
全グループを挙げて取り組んでいる主力商品『米』に関する技術を分け與えるということは、自らのアドバンテージを捨てることに他ならない。
將主力商品“米”的技術分享給整個集團,就等于放棄自己的優(yōu)勢。
それにも関わらず、靜子は技術供與を了承した。彼女は言わば『米本位制度』から脫卻し、遙か遠い未來を見據(jù)えているように思えた。
盡管如此,靜子仍然同意了技術的分享。她似乎想要擺脫“米本位制度”,展望遙遠的未來。
(彼女の思惑がどうであれ、兄上が今浜へと移れば、これまでのような付き合いは望むべくもない。今は將來に繋がる布石を打てたことで満足し、これが後々兄上に利益を齎すことを期待しましょう)
(無論她的想法是什么,如果兄長現(xiàn)在移到今浜,像以前那樣相處是不可能的?,F(xiàn)在應該對為未來鋪下的布局感到滿意,期待這將為兄長帶來利益。)
焦る必要はない。不用意に靜子との距離を縮めれば、それは周囲の警戒を掻き立てる。
不需要著急。不適當?shù)乜s小與靜子之間的距離會引起周圍的警惕。
秀長は機が熟していないのを理解しているからこそ、次に繋がる一手を打てただけで引き下がった。
秀長理解時機還不成熟,所以只是打了一手下一步的棋就退了。
(無理に近づこうとすれば、こちらも手の內を曬すことになります。彼女が取るに足らないと考えているものですら、我らには珠玉(しゅぎょく)の意味を持つ。靜かに、ゆっくりと掠め取る。ふむ……悪くありませんね)
(如果我們強行靠近,也會暴露自己的底牌。即使她認為不值得一提的東西,在我們的手中也能成為珠玉。悄悄地,慢慢地帶走。嗯...不錯。)
こうした工作もなかなかに面白い。そう考えた秀長は、無意識に聲に出して笑っていた。警護の兵たちが首を傾げるが、彼がそれに答えることは無かった。
這樣的工作有點有趣。秀長無意中笑出聲。警衛(wèi)沒能明白,但他沒有回應。
靜子が信長に、長宗我部の件を報告しようと謁見を申し込んだところ、予想よりも早く承諾の返事が屆いた。嫌な予感を覚えつつも、靜子は信長との謁見に臨んだ。
靜子向信長報告了長宗我部的事情,請求會見。比預想中更早,信長回復了同意的消息。盡管有不好的預感,靜子還是前往與信長會晤。
「暦(こよみ)、ですか」
“你說這個是歷法嗎?”
「うむ。これまでの暦を廃し、新しい暦を制定する。新たに広める暦には、貴様が今まで用いてきた暦を使おうと思っておる」
“嗯。廢除以前的歷法,制定新的歷法。在新的廣泛使用的歷法中,我打算使用你以前使用過的歷法?!?/p>
暦を制定するという事は、度量衡の統(tǒng)一と並ぶ天下人の仕事である。日本では古くから太陰暦が使用され、明治六年に太陽暦へと変わるまで、実に様々な暦が使用されていた。
制定歷法是天下人工作中與度量衡并列的事情。日本自古以來一直使用陰陽歷,在明治六年改為太陽歷之前,實際上使用了許多不同的歷法。
「一年を365日と3刻(6時間)に定め、12ヶ月を以て一年とし、奇數(shù)月を31日、偶數(shù)月を30日とする。2月を閏(うるう)年の調整月とし、平年(へいねん)は29日。閏年(うるうどし)では30日として扱うとした暦でしょうか?」
「將一年定為365天3刻(6小時),以12個月為一年,奇數(shù)月為31天,偶數(shù)月為30天。將2月作為閏年的調整月,平年為29天,閏年為30天。這是一個采用這種日歷的假設嗎?」
「そうじゃ。一日を24時間とし、一時間を60の分に分け、更に一分を60の秒とするだったか? 隨分とややこしいと思うたが、貴様が毎年報告してくる年間の溫度傾向や作付けと収量の資料を見て、その有用性を理解した」
「是的。一天有24小時,一小時分為60分鐘,一分鐘再分為60秒。雖然這樣有點復雜,但我看了你每年報告的溫度趨勢、種植和收成的數(shù)據(jù),理解了它的有用性?!?/p>
太陰暦とは月の運行を強く意識した暦であり、日付と月の見かけの形が一致する。従って月さえ出ていれば、その日が何日であるか暦が無くても求められる。
太陰歷是一種非常重視月亮運行的日歷,日期和月份的實際形狀相一致。因此,即使沒有日歷,只要有月亮就可以確定日期。
しかし、太陰暦では実際の季節(jié)と日付がどんどんずれて行ってしまい、日付と連動した季節(jié)ごとの現(xiàn)象を期待する近代農法とは相性が悪い。
然而,在太陰歷中,實際季節(jié)和日期逐漸背離,與日期相對應的季節(jié)現(xiàn)象不適用于現(xiàn)代農業(yè)。
そこで靜子はグレゴリオ暦を基準に、獨自の暦として整理した。平年を365日とする関係上、単純に奇數(shù)月を31日、偶數(shù)月を30日としていたのでは一年が366日となってしまう。
因此,靜子以格利高里歷為基礎,整理出了自己的日歷。由于平年有365天,如果簡單地將奇數(shù)月設為31天,偶數(shù)月設為30天,則一年將達到366天。
そこで現(xiàn)代の暦法と同様に、2月を29日とし、400年に97回の閏年を設ける方式を採用した。
因此,采用與現(xiàn)代日歷法同樣的方式,將二月份設為29天,并設置了400年中97個閏年。
何故、2月を一日減らしたかについては、先人が2月と定め、それが通用している以上、なんらかの意味があると考えたからだ。
之所以將2月份減少一天,是因為先人將其定為2月,而且這一月份一直使用,因此認為必須有某種意義。
「農業(yè)にとって都合が良いので使っておりますが、アレを正式の物として良いのでしょうか?」
「雖然這個日歷對農業(yè)很方便,但能認為它是正式的嗎?」
あくまでも農業(yè)をする上で、毎年同じ日付頃に同じ作業(yè)をすることを意識付けるために導入したものだった。それを信長は日本全土で使用する基本の暦として制定すると言っていた。
這個日歷的初衷是為了在耕種過程中,讓人們能夠在每年的同一時期開展相同的工作,是為了意識到這一點而推出的。信長曾表示,這是日本全國使用的基本日歷。
実際に歴史の選別に耐えたグレゴリオ暦ではなく、獨自に手を入れているため不安になるのも當然だった。
這不是歷史上經得起考驗的格利高里歷,因為采用了獨特的方法進行處理,所以會感到不安是很自然的事情。
「何も問題なかろう。農業(yè)は國の礎よ。日付と季節(jié)が一致すれば、閏月などと言う煩わしいものも必要ない。無論、急激な変革は混亂を齎すゆえ、暫くは舊來の暦と併用することになろうがな」
「沒問題。農業(yè)是國家的基石。只要日期和季節(jié)一致,就不需要諸如閏月之類的麻煩事。當然,突然的改革會帶來混亂,因此可能暫時與舊歷法同時使用。」
既に信長の中では決定事項となっていた。こうなると靜子が何を言おうと、今以上の利を示さない限り、彼は前言を覆さない。
這已經成為了信長的決定事項。在這種情況下,無論靜子說什么,他都不會改變前言,除非能展示比現(xiàn)在更多的收益。
靜子は翻意を促すことを諦めると、使用していて不具合が見つかれば適宜修正する方針へと切り替えることにした。
靜子放棄了勸說他改變主意,決定將注意力轉向在使用過程中發(fā)現(xiàn)問題就適時修正的方針。
「さて、わしの用事は済んだ。貴様の用件はなんだ?」
「好了,我的事情辦完了。你有什么事嗎?」
「はい。四國統(tǒng)一に目処が付きましたゆえ、九鬼水軍を長宗我部から離し、海上封鎖の任務に就かせたいと具申致します」
「是的。由于四國已經統(tǒng)一了,我要請求將九鬼水軍從長宗我部那里分離出來,擔任海上封鎖任務?!?/p>
「ほう……その狙いは何処にある?」
「哦……你的目的是什么?」
信長の視線が鋭くなった。靜子と池との會話を知らずとも、光秀や長宗我部の思惑は察している。その上で、靜子が何を言うのか見定めようとしているのが理解出來た。
信長的目光變得銳利起來。即使不知道靜子和池之間的對話,他也可以察覺到光秀和長宗我部的心思。然后,他試圖了解靜子說了什么。
「國人にも寺社勢力にも屬さぬ鉄砲傭兵集団?雑賀(さいが)衆(zhòng)への対策に用います。雑賀衆(zhòng)の多くは小勢力の集団ですが、雑賀孫市が率いる雑賀黨、太田定久(おおたさだひさ)が率いる太田黨の二大在地領主の勢力は無視できません。彼らに対して飴と鞭による離間工作を仕掛けようと思います。太田黨には調略を含めた飴を與え、雑賀黨に対しては海上封鎖と言う鞭を振るいます」
「將用于應對既不屬于國人,也不屬于寺社勢力的火槍傭兵集團——雑賀衆(zhòng)。盡管雑賀衆(zhòng)的大多數(shù)都是小勢力集團,但雑賀孫市率領的雑賀黨和太田定久率領的太田黨這兩大當?shù)仡I主的勢力是不可忽視的。我們將使用糖和鞭對付他們。對太田黨,我們將給予包含策略在內的糖,對雑賀黨,我們將實施海上封鎖這一鞭?!?/p>
「そのような搦め手を講じずとも、一気に攻め滅ぼすと言う手も取れよう。それをせぬ理由はなんだ?」
「即使不采取這種纏斗的方式,一舉攻擊并消滅他們也是可行的。不這樣做的理由是什么?」
「現(xiàn)狀の軍事力を考えれば、その策も取り得ますが、得策とは言えません。あの地域には雑賀衆(zhòng)の他にも高野山、粉河寺(こかわでら)衆(zhòng)、熊野三山、根來寺(ねごろじ)衆(zhòng)の五勢力が互いに睨み合っております。こういった地域に突出した新勢力が発生すると、彼らは外敵を排除するため手を結び、織田家とて無視できない巨大勢力を形成するでしょう。ただでさえ、地の利もない上に厄介な雑賀衆(zhòng)を相手にするのです。他の勢力まで參戦してきては、徒(いたずら)に兵力を消耗致します。雑賀衆(zhòng)のみを狙い撃ち、各個撃破を図るのが得策と言えます」
考慮到當前的軍事力量,這個策略是可行的,但并不是最好的策略。除了眾多的雑賀衆(zhòng)之外,那個地區(qū)還有高野山、粉河寺衆(zhòng)、熊野三山和根來寺衆(zhòng)等五個勢力正在相互對峙。如果在這樣的地區(qū)出現(xiàn)了突出的新勢力,他們將聯(lián)手排除外敵,形成一個織田家無法忽視的巨大力量。已經很麻煩了,再與雑賀衆(zhòng)這樣的勢力交手,還會牽扯其他勢力的參戰(zhàn),這樣只會白白浪費軍隊的力量。因此,最好的策略是單獨瞄準雑賀衆(zhòng),依次擊破他們。
「ふむ」
嗯。
「本願寺に與(くみ)する雑賀衆(zhòng)とは言え、中でも明確に織田家に敵対姿勢を示す雑賀黨には海上封鎖を行い、彼らの資金源たる海運や貿易を阻みます。一方、根來寺衆(zhòng)に近い太田黨には、彼らを通じて利益を與え優(yōu)遇します。同勢力內で明確に均衡が崩れれば、內部抗爭へと発展する可能性は高いと考えます」
盡管他們是與本願寺相連結的雑賀衆(zhòng),但雑賀黨明確地表現(xiàn)出對織田家的敵對態(tài)度,因此要對他們進行海上封鎖,阻礙他們的資金來源——海上運輸和貿易。另一方面,對于與根來寺衆(zhòng)接近的太田黨,應該通過他們對他們給予優(yōu)惠和支持。如果同一勢力內部出現(xiàn)明顯的不均衡,可能會發(fā)展成內部糾紛。
「その為に九鬼水軍を使いたいと申すのか?」
你是要利用九鬼水軍嗎?
「雑賀黨とて海運や貿易を手掛ける以上、獨自の水軍を擁しています。彼らと戦って勝利を摑み、尚且つ長期間に亙って海上封鎖を実行するとなると九鬼水軍以外には為しえません。長宗我部も水軍を持っておりますが、現(xiàn)狀そこまでの練度は期待できません」
盡管雑賀黨處理海上運輸和貿易,但如果要戰(zhàn)勝他們并長期實施海上封鎖,只有九鬼水軍可以勝任。長宗我部也擁有水軍,但目前的水平還不能令人期待。
「時期は」
時間是?
「近いうちに本願寺は我らとの和睦を破り、攻撃を仕掛けてくるでしょう。彼らの戦力を支えるのは毛利水軍、村上水軍、そして雑賀の水軍。これらが海上から人員と物資を輸送して支援を図るでしょう。しかし、既に九鬼水軍が布陣していたらどうなると思われますか?」
本願寺遲早會破壞與我們的和平,發(fā)起攻擊。支援他們的戰(zhàn)力是毛利水軍、村上水軍和雑賀水軍。他們將通過海上運輸輸送人員和物資。但如果九鬼水軍已經布署了,會怎樣呢?
「ふ、ふははははっ!」
呵呵呵...
突如として信長が哄笑(こうしょう)する。突然のことに靜子は戸惑うが、彼女の困惑など意にも介さず信長はひとしきり笑うと、彼女に聲を掛けた。
突然之間,信長哈哈大笑。突然的情況讓靜子感到困惑,但信長并未在意她的困惑,笑完后便呼喚她。
「靜子。貴様はいくさの本質を押さえておる」
“靜子。你把戰(zhàn)爭的本質掌握住了?!?/p>
「え? いえ、お褒めにあずかり光栄です」
“?。恐x謝您夸獎?!?/p>
「いくさとは、直接刃や矢を交わすことのみにあらず。事前にどれだけの備えをしているか、それこそがいくさの根幹よ。家臣共は多くの兵を抱えれば良いと思い違いをしておるが、いくさを好まぬ貴様が一番本質を捉えているとは皮肉よの」
“戰(zhàn)爭不僅僅是交交叉叉地揮舞刀劍和箭矢。提前做好多少準備,這才是戰(zhàn)爭的關鍵。家臣們以為多擁有兵力就可以勝利,但你這個不喜歡戰(zhàn)爭的人卻掌握了戰(zhàn)爭的本質,真是諷刺。”
そう語った信長は、笑みを浮かべつつ顎を撫でた。
說完這些,信長微笑著摩挲了下下巴。
「良かろう。九鬼水軍は貴様の思うようにせよ。長宗我部の思惑通りになるのも業(yè)腹だが、次なるいくさで優(yōu)位を得ることの方が重要よ」
“好的。九鬼水軍就按照你的想法來吧。雖然這樣長宗我部的想法得到了滿足,但重要的是在下一場戰(zhàn)斗中獲得優(yōu)勢?!?/p>
「は、ははっ」
“哈哈……”
信長の決定を耳にし、靜子は胸を撫で下ろしつつ頭を下げた。これで長宗我部の面子を保ちつつ、織田家にとって価値のある一手を、敵に先んじて打つことが出來る。
聽到信長的決定,靜子松了口氣,低頭致謝。這樣一來,既保住了長宗我部的威嚴,又在敵人之前采取了有價值的策略。
長期間、遠方の四國で戦闘行為を続けた九鬼水軍には十分に慰労する必要がある。裝備の補給や改修も含めて、十分な報酬と休息を與え、次なる作戦に備えて貰うことにした。
九鬼水軍在四國遠征已經打了很長時間,應該好好表彰他們。他們需要得到足夠的獎勵和休息,以備下一次行動。
(予想以上にすんなり受け入れて貰えたなあ。長浜の特産品を考える時間が得られるね。うーん……長浜の特産品については、明(みん)から技術を継承した『ちりめん』織りが良いよね。確か『浜ちりめん』って呼ばれていたし……うん。それが良い)
(比預想中順利地得到了他們的接受。現(xiàn)在就有時間考慮長濱的特產了。嗯……關于長濱的特產,繼承了明朝技術的“綢緞”織物不錯,好像叫做“浜綢緞”……嗯,這個不錯。)
史実での『ちりめん』織りは、天正年間に渡來した明の職工が日本に伝えたとされている。
根據(jù)史實,“綢緞”織物是在天正年間由來自明朝的工匠帶來并傳播到日本的。
泉州堺に端を発した『ちりめん』織りは、その生産地を堺から京へ、京から丹後へと移していく。後に『浜ちりめん』と呼ばれる長浜での生産は、中村林助と乾莊九郎の二人が丹後から技術を學び、また丹後より職人を派遣して貰い、技術を定著させた。
起源于泉州堺的“綢緞”織造業(yè)擴展到堺市、京都和丹后地區(qū)。后來在長濱產生了被稱為“濱綢緞”的生產。中村林助和干莊九郎兩個人從丹后學習了技術,并向丹后派遣了工匠以鞏固技術。
これは江戸時代中期のことであり、現(xiàn)時點では堺ですら広まっていない可能性が高かった。
這發(fā)生在江戶中期,現(xiàn)在堺市甚至可能也沒有廣泛傳播。
「朝廷より仰せつかった蕓事の守護に、同僚の家臣達からの相談を受け、自身の領地も管理せねばならぬ。貴様はいつも大忙しだな」
“朝廷授予我蕓業(yè)的保護,并收到同僚家臣的咨詢。我還必須管理我的領土。 你總是很忙吧?”
「上様が日ノ本を統(tǒng)一なされた暁には、ゆっくりとお休みを頂戴いたします。それに私などには勿體ないほどの、優(yōu)秀な家臣が支えてくれております」
“等到您統(tǒng)一日本之后,請您慢慢休息。而且我們有大量優(yōu)秀的家臣支持著我?!?/p>
「確かに、貴様の家臣は優(yōu)秀よな。信のおける家臣とは得難いもの。努々(ゆめゆめ)粗略(そりゃく)には扱わぬことだ」
“確實,您的家臣很優(yōu)秀。忠誠可靠的家臣非常難找。不要粗魯對待他們。”
「ははっ」
“哈哈哈”
「貴様の為に、わしに直談判さえしてみせた玄朗などは、わしの手駒に欲しいほどよ。貴様を妄信せぬところが実に良い」
“我為您完成了直接面談的資格的玄朗,我希望他成為我的珍寶。您不被我妄信,這一點非常好。”
頭を下げる靜子に、信長は笑いながら玄朗の名を挙げた。名字を得た玄朗の諱(いみな)は靜興(しずおき)。彼の諱を定めるには紆余曲折があった。
小靜子低頭,信長笑著提到了玄朗。玄朗的諱為靜興。確立玄朗的諱經歷了反復無常。
玄朗が諱を決めるにあたり、彼は主君である靜子より一字を賜ることを願い出た。靜子はこれを快く了承し、『靜』の一字を與えた。
在確定玄朗的諱時,他向主人小靜子請求賜予一個字。小靜子欣然同意,并贈予了“靜”這個字。
しかし、玄朗の立てた戦功は目覚ましく、信長より直々に『長』の一文字を賜る栄譽に與(あずか)った。慣例からすれば、靜子の主君にあたる信長の一文字を優(yōu)先する。
然而,玄朗的戰(zhàn)功卓著,從信長親自得到了賜予“長”字的榮耀。按傳統(tǒng)來說,應優(yōu)先考慮信長這位主人的一個字。
このように主君、あるいは高貴な身分の人から名前の內、一文字を與えられることを偏諱(へんき)と呼ぶ。
這是指從主君或貴族手中獲得名字中的一個字被稱為“偏諱”。
通常、偏諱では通字(とおりじ)とは異なる文字を與えられるが、稀に通字を與えられることもあった。
通常,偏愛的字與通字是不同的字,但偶爾也會給予通字。
通字とは、その家で代々に亙って用いられる文字を指し、信長で言えば『信』の文字となる。信長の父である信秀から信長へ、信長からは信忠へと代々引き継がれている。
通字是指在家族代代相傳使用的字,比如信長的是“信”字。信長從他的父親信秀那里,繼承了信長,然后從信長到信忠。
偏諱のならいに従えば、複數(shù)の人間から名前を與えられることは無い。これは諱が、偏諱と通字で構成されているためである。
如果按照偏愛的規(guī)則,一個人不可能被多人賦予姓名。這是因為諱是由偏愛和通字組成的。
玄朗の場合、信長から頂いた『長』を上に據(jù)え、下に『信』や『靜』、『子』などの主君の名を避けた通字を當てるのが相応しい。
在玄朗的情況下,根據(jù)信長給予的“長”字,在下面添加避免使用君主名稱的通字,例如“信”、“靜”和“子”。
しかし、玄朗としてはどうしても靜子の偏諱を名乗りたかった??鄲槫筏磕─诵胜陇筏颗袛啶稀⑿砰Lの偏諱をお返しすることであった。
但是,玄朗一定要使用靜子的偏愛。在煎熬之后,玄朗做出了回饋信長偏愛的決定。
「某が今の身分を得られたのも、全ては靜子様のお引き立てあってのこと。その靜子様に対して偏諱を願い出ていながら、上様より名を賜ったからと乗り換えるような真似は出來ませぬ。某如きが上様よりの賜りものをお返しするのは、萬死に値する非禮と存じておりまする。されど、この玄朗、一命を懸けてお願い致します。靜子様の偏諱を名乗ることをお許し下され。どうしてもならぬと仰(おお)せなら、この首を上様に差し上げまする」
“我之所以能得到現(xiàn)在的地位,完全是靜子夫人的幫助。雖然我請求了靜子夫人的偏愛,但是我卻接受了他所給予的名字,因為我不會像換車一樣放棄。有可能嗎?如果您不能保持它,那我將用我的頭代替我本人。”
基本的に下賜されたものを突き返すというのは非常に失禮な行為となる。白裝束に身を包み、信長に願い出た玄朗に対し、織田家の家臣達は散々に罵った。
基本上,拒絕接受所賜予的東西是一種非常失禮的行為。在白色的服裝中,玄朗在居庸關請求了信長。但是,織田家的仆人們卻非常反感這種請求。
しかし、萬座の中で恥をかかされた本人の信長が呵々(かか)と大笑した。
然而,在嘲笑之中,信長卻毫不在意。
「人は身分を得る程に、初心を忘れていく。しかし、この玄朗はどうじゃ! 一門の頭領となってなお、靜子への恩義を忘れておらぬ。わしと靜子へ筋を通すため、不興を買い、死を賜るのを覚悟で願い出る。その潔さ、まことに天晴(あっぱれ)!」
“當人們得到地位時,他們容易忘記初心。但是這個玄朗怎么樣!即使成為一族之頭,他仍然沒有忘記靜子夫人。為了與我和靜子夫人聯(lián)系,他冒著不滿和死亡的風險來尋求。他的潔凈,還是很值得稱道的!”
この一言を以て沙汰が下された。信長が良いとした以上、周囲は異を唱えることは出來ない。
憑借這句話,決定已做出。既然信長說好了,周圍的人就不能反對了。
これによって信長からの偏諱は無かったこととなり、玄朗は靜興という諱を名乗ることとなった。
由此可知沒有來自信長的偏袒,玄朗叫做靜興。
「皆の忠義に値する主君であるよう心がけます」
“將努力成為值得所有人忠誠的主人?!?/p>
伏したまま返答したため信長も靜子本人も気付かなかったが、靜子は誇らしげな表情を浮かべていた。
靜子回答時躺著,信長和靜子本人都沒有注意到,但靜子的表情令人感到驕傲。
帰宅した靜子は大急ぎで暦を文書へと落とし込みにかかった。信長が案を採用するということは、ひいては世間に公表できる草案を出せという意味だと靜子は察した。
回到家后,靜子急忙把日歷轉化為文檔。 靜子意識到,如果信長采用這個想法,那么需要推出可以公開的草案。
信長自身は明言していないが、靜子に命じた以上、成果には相応の報酬が支払われる。地味な仕事だが、信長の治世を支える土臺となるため、決して疎かには出來ない。
盡管信長本人沒有明說,但由于他命令靜子,相應的報酬也將支付。這項工作雖然平凡,但對于支持信長的統(tǒng)治,它是重要的基石,因此不能怠慢。
「暦は、昔策定したときの下書きがあったよね」
“我們不是以前制定過日歷的草案嗎?”
そう言いながら靜子は自分の行李(こうり)(竹や籐などで編んだ葛籠(つづらかご))をひっくり返した。彼女の下書きを元にした草案は以下の通りとなる。
說著,靜子翻了翻她的行李箱。以下為根據(jù)她的草案制定的草案。
第壱章 暦法
第一章 日歷法
第壱條 季節(jié)が一巡する日數(shù)を1年と定める。日が上り、沈んだ後、再び上るまでを一日とする。
第一條 規(guī)定一年為季節(jié)逐一循環(huán)的日數(shù)。 上升和下降后再度上升為一天。
これにより、一年を365日と定める。但し、365日では僅かに季節(jié)と暦にずれが生じるため、閏年を設けてこれを調整する。
因此,將一年定為365天。 但是,因為365天的季節(jié)和歷法略有偏差,所以設置閏年來調整這一點。
第弐條 閏年とは1年を366日とする年と定める。尚、365日の年を平年とする。
第二條 閏年指將一年定為366天的年份。 另外,閏年之外的年份被稱為平年。
第參條 閏年となる年は、以下の規(guī)則で求められるものとする。
第三條 閏年是按以下規(guī)則計算的。
第參條ー第壱項 年數(shù)が4で割り切れる年は閏年とする。
第3條-第1款 年數(shù)能被4整除的年份為閏年。
第參條ー第弐項 年數(shù)が100で割り切れる年は平年とする。
第3條-第2款 年份數(shù)能被100整除的年份為平年。
第參條ー第參項 第弐項のうち、400で割り切れる年は閏年とする。
第3條-第3款 第2款中能被400整除的年份為閏年。
第肆條?。蹦辘颍保卜证筏恳粎^(qū)切りを月と定め、1月から12月までとする。
第4條 規(guī)定一年分為12個月,將每個月視為一段。 一月至十二月。
第伍條 奇數(shù)月を31日とし、偶數(shù)月を30日と定める。
第五條規(guī)定奇數(shù)月為31天,偶數(shù)月為30天。
第伍條ー第壱項?。苍陇蜷c年の調整月とし、平年は29日、閏年は30日と定める。
第五條第一款規(guī)定2月為閏年調整月,平年為29天,閏年為30天。
第伍條ー第弐項?。吃陇椋翟陇蓼扦虼?、6月から8月を夏、9月から11月を秋とし、12月から翌年2月までを冬とする。
第五條第二款規(guī)定3月至5月為春季,6月至8月為夏季,9月至11月為秋季,12月至次年2月為冬季。
第陸條 舊暦法の使用を、新暦法施行後10年間は認めるものとする。10年経過後は、如何なる文書も新暦法以外の使用を禁ずる。
第六條規(guī)定在新歷法實行后的10年內,允許繼續(xù)使用舊歷法。10年后,任何文件都禁止使用新歷法以外的歷法。
「あ! 紀年法(きねんぽう)についても定めないとね。うーん……やっぱり皇紀(こうき)が馴染みやすいかな」
"??!還要規(guī)定紀年法呢。嗯……皇紀好像比較常見。"
暦法の草案を纏めるにあたって、起點となる時點を定めていなかったことに靜子は気付いた。
在起草歷法草案時,靜子注意到沒有確定一個起點時間。
グレゴリオ暦を元にしているため、西暦が相応しいのだが、西洋の聖人の誕生日では受け入れにくい。
由于這是以公歷為基礎的,西元年份通常是合適的,但由于西方圣人的生日等原因不易接受。
そこで靜子は天皇制と紐づいた皇紀を利用することにした。
因此,靜子決定利用與天皇制相關的皇紀。
皇紀とは、正式名稱を神武天皇(じんむてんのう)即位紀元(そくいきげん)と呼び、日本書紀を參考に日本が制定した紀年法となる。
皇紀是正式名稱為神武天皇即位紀元,是日本參照《日本書紀》所制定的紀年法。
「暦法とは別に紀年法も制定しないとね。時刻法もいるかな」
"除了歷法之外,還要制定紀年法??赡苓€需要時間法吧。"
別の紙を用意して、靜子は紀年法と時刻法の條文を書き込む。彼女の案は以下の通りとなる。
靜子準備了另一張紙,寫下了紀年法和時間法的條款。她的提議如下:
第弐章 紀年法
第二章紀年法
第壱條 初代天子、神武天皇ご即位を以て紀元とする。
第一條以第一代天子神武天皇即位為紀元。
第弐條 即位年は最古の正史、『日本紀(にほんぎ)』より求める。
第二條即位年份按最古老的正史《日本紀》求得。
第參條 第壱、第弐條より、本年を皇紀二千二百三十四年とする。
第三條根據(jù)第一、第二條,今年為皇紀2234年。
第參章 時刻法
第三章時間法
第壱條 時刻の単位は『時』『分』『秒』と定める。1日は24時間とし、1時間を60分、1分を60秒と定める。
第一條規(guī)定時間單位為“時”、“分”、“秒”。一天為24小時,一小時為60分鐘,一分鐘為60秒。
第弐條?。皶rを正子(しょうし)、12時を正午(しょうご)と定める。
第二條規(guī)定0時為正子,12時為正午。
第參條 正子及び正午は、別途定める子午線(しごせん)を天道様が通過する時刻とする。
第三條 正子和正午時間的參考線是由天道先生確定的。
第肆條 時刻を十二支で數(shù)えることを、時刻法施行後10年間は認める。但し、10年経過後は如何なる文書も、時刻法以外の使用を禁ずる。
第四條 允許用十二生肖計算時間法十年。但10年后,除時刻法外,禁止使用任何文書。
「ふー、こんなものかな」
「呼,就這樣吧?!?/p>
靜子は條文を書き終えると、床に大の字になった。誤解の余地がない文章でルールを定めるのは予想以上に疲れた。
寫完條文后,靜子在床上躺下來。制定明確規(guī)定的條文比她預想的更累。
自然を相手に無心に體を動かしている方が、性に合っているとさえ思う。しかし、日ノ本が平和になれば、こうした事務処理はもっと増えることだろう。
與自然無心地動彈身體似乎更適合我。但如果日本變得和平起來,這樣的行政任務會變得更多。
「これの清書をお願いね」
「請幫我把這份清稿提交?!?/p>
靜子は書類を近侍に託す。信長へ提出するには草案を元に、正式な書類へと書き起こす作業(yè)が必要となるが、それは靜子の役割ではない。
靜子把文件交給近侍。為了提交給信長,需要把草案變成正式文件,但這不是靜子的職責。
本來であれば右筆(ゆうひつ)と呼ばれる文官が擔うのだが、靜子邸では書類を擔當する文官の誰かが清書し、筆頭文官が確認する運びとなる。
本來應該由叫做右筆的文官擔任,但在靜子府邸中,文官負責文件的清洗,首席文官進行確認。
それを靜子が最終確認し、問題ないと判斷されれば信長へと提出される。
靜子會做最后的確認,確認無誤后提交給信長。
面倒な手順を経るが、信長も今や多くの決裁を行う身。信長に提出する書類は、彼がそのまま使える狀態(tài)に仕上げるのが望ましい。
這是一項繁瑣的程序,但信長現(xiàn)在已經做出很多決定。提供給信長的文件最好是他可以直接使用的狀態(tài)。
「面倒だけれど、差し戻されれば、余計な手間もかかるしね」
「雖然很繁瑣,但如果被否決,將需要更多的時間和精力?!?/p>
自分を労るように靜子は肩をもむ。
靜子像關心自己一樣揉了揉肩膀。
數(shù)日後、靜子の草案を元に正式な書類が、信長の許に屆けられた。
幾天后,以靜子的草案為基礎,正式文件被交到了信長手中。
暦法全般の正式な書類が出來上がる前、靜子は日々屆けられる文に目を通していた。
在所有日歷法的正式書面文件完成之前,靜子一直在查看每天送來的文件。
冬は降雪により主要な街道以外が通行不能となり、人々の往來が激減する。このため、靜子の在宅を見越した文が屆けられることが多い。
冬季除主要道路外,其它道路因降雪而被封閉,人們的活動量急劇減少。因此,經常會有文件送到靜子的家中。
最初に目にした文の差出人は上杉謙信であった。內容を一言で要約するなら『禁酒令により體調が良くなった』である。
最初看到的文本的寄件人是上杉謙信。簡單概括其內容則為“禁酒政策讓健康狀況有所改善”。
「癢みも治まったんだ。アルコール依存癥の離脫期は脫したと見て良いかな」
“瘙癢也消退了??梢哉J為我已經脫離了酒精依賴的戒斷期了?!?/p>
アルコール依存の狀態(tài)から酒量の減量もしくは斷酒した際に生じる、一連の癥狀を指して離脫癥狀と呼ぶ。(注:アルコールのみとは限らない)
戒酒或減量后從酗酒狀態(tài)出現(xiàn)的一系列癥狀稱為戒斷癥狀。(注:并非僅限于酒精)
離脫癥狀は人によって異なるものの、初期は手や全身の震え、発汗や集中力の低下、幻覚や幻聴などが出る事もある。これらを早期離脫癥狀と呼ぶ。
戒斷癥狀因人而異,初期可出現(xiàn)手或全身顫抖、出汗、注意力下降、幻覺或幻聽等。這些被稱為早期戒斷癥狀。
対する後期離脫癥狀は、飲酒をやめてから2?3日後に現(xiàn)れる。幻視や見當識障害、異常興奮や発熱、発汗、震えなどの癥狀を発する。
相對應的后期戒斷癥狀在停飲兩到三天后出現(xiàn)。會出現(xiàn)幻視、定向障礙、異常興奮、發(fā)熱、出汗和顫抖等癥狀。
これらの離脫癥狀は強い不快感を伴い、これから逃れるために酒を飲み続けるという悪循環(huán)に陥りやすい。
這些戒斷癥狀伴隨著強烈的不適感,容易陷入想通過繼續(xù)飲酒來逃脫的惡性循環(huán)。
謙信は手足の浮腫(むく)みの他に、全身の癢みも訴えていたが、それらが治まったということは、離脫期を抜けきったと言えるだろう。
謙信除了手腳浮腫外,還抱怨全身瘙癢。這些現(xiàn)在得到緩解,說明他已度過了戒斷期。
文に書かれた近況には『近頃は食事が美味く感じる』と記されていた。
文中還提到“最近美食的感覺變得更好了”。
彼の健康については今後も注視が必要だが、靜子のように永久禁酒令を言い渡すほどに深刻な狀況では無さそうだと彼女は思った。
對他的健康狀況仍需密切關注,但她認為形式并沒有像靜子那樣嚴重,需要施行永久禁酒令。
「善哉(よきかな)、善哉。謙信の後継者爭いは顕在化していないけど、その內上杉景虎陣営に動きがありそうだよね」
“好極了,好極了。雖然上杉家的繼承問題尚未明朗,但上杉景虎的陣營內似乎已經有些動靜了啊?!?/p>
家督爭いは暫く待って欲しい。そうは思うが、北條家が滅びに瀕した際、彼らがどのような行動をとるかは未知數(shù)だ。
暫時不要讓家督爭奪事件發(fā)生。雖然我這么想,但當北條家陷入滅亡時,他們會采取什么行動仍是未知數(shù)。
しかし、それを抑え込むのが家長である謙信の役目だ。その為にも彼には健康を維持して貰わねばならない。不摂生をした期間が長いため、長壽は期待できない。
然而,抑制這種情緒的責任在于家長謙信。因此,他必須保持健康。長時間的不良生活方式意味著他不能期待長壽。
それでも享年49ではなく、70まで引き伸ばせれば、十分歴史は変わり得る。
即使如此,如果可以將壽命從49年延長到70歲,歷史仍然可以發(fā)生顯著改變。
反対派にも少しずつ利を與え、懐柔と取り込みを行えば、他者の土地を奪わずとも自國を富ませる方向へと舵を切る可能性があった。
如果給反對派一些好處并收編他們,可能會選擇不侵略他人的土地而使自己的土地繁榮起來。
(ふーむ。未だ謙信が健在で、暫くはこちらの指示に従ってくれるという狀況は有難い。雪解け頃からインフラ整備も開始される見込みだし……ただ日本海側では雪の降る期間が長いから、もうしばらく時間がかかりそうよね)
“嗯,謙信依然健在,遵循我的指示還是很愉快的事情。從融雪期開始開始基礎設施建設也有望開展……不過,因為日本海這邊雪期很長,所以會需要一些時間?!?/p>
現(xiàn)代のような除雪用重機は存在しない。仮に除雪できたとしても、雪を捨てる土地も確保できない。雪を運ぶためにも、整備されたインフラが必要となる。
現(xiàn)在使用除雪設備無濟于事。 即使可以清除雪,也無法保證處理雪的土地。 運輸雪還需要基礎設施的支持。
現(xiàn)段階で機械化された除雪機など望むべくもない。燃料の確保や、寒冷地での動作試験などクリアすべき課題も多い。
現(xiàn)階段,沒有機械化除雪設備。 還有許多問題需要解決,例如燃料的獲取和在寒冷地區(qū)的操作測試。
いずれは開発したいと考えてはいるが、他に優(yōu)先すべき案件を抱えているため目処が立たない。
雖然有開發(fā)需求,但由于其他重要任務的存在,還沒有任何進展。
「まあ、細かい話は私がするよりも、実際に監(jiān)督する足満おじさんが適任でしょう。往々にして言葉が足りないけれど……」
"嗯,比起我詳細地解釋,我認為實際監(jiān)督的足滿叔叔更適合。 他有時可能話不多……"
謙信の文を片付けると、靜子は次の手紙を手に取った。差出人の名前が前久だったので、何かあったのかと思い、內容を真剣に吟味する。
排完謙信的信后,靜子拿起下封信。發(fā)件人名字是前久,所以她想知道發(fā)生了什么,并認真審查了信的內容。
しかし、読み進むにつれて靜子の眉間に皺が刻まれる。
然而,隨著閱讀的深入,靜子的眉頭皺了起來。
「公家の調略をするから、食材やら何やらを送ってくれ、というのは分かる。けれど、最後の……何で貓を送って欲しいの? 娘に開耶(サクヤ)(前久が飼っているターキッシュアンゴラの名前。木花開耶姫(コノハナサクヤビメ)から命名)を取られがち? そこまでは面倒見切れないよ……」
“雖然我知道你想訂出家中的飲食,但是,最后一件事情是什么......你為什么想要寄貓? 要把木花開耶姬(這是前久養(yǎng)的土耳其安哥拉貓的名字)拿走? 我處理不了這些......"
最近、ターキッシュアンゴラが妻と娘に懐いてしまい、相手をしてくれなくて寂しいから新しい貓を送ってくれ、と文には雅(みやび)な筆致で切々と綴られていた。
最近,土耳其安哥拉貓對妻子和女兒很親近,因為它們不理睬我很寂寞,所以我用雅致的筆法寫了一封信,懇求你們送來一只新貓。
「まさか、史実で島津義弘に送った文と同様の文を頂けるとは。歴史的に貴重かな?」
“沒想到你會收到和史實中送給島津義弘相同的信。這在歷史上很珍貴吧?”
史実では、島津義弘が前久に貓を贈り、その返禮に「貓は夫人に取られて、自分の手元にいない。娘も切望しているが知らぬ。まずは自分の分が欲しい」との文を送ったという逸話が存在する。
史實中,據(jù)說島津義弘曾經送了一只貓給前久,而作為回禮,“貓被夫人取走了,沒法在身邊。雖然女兒非常想要,但她不知道。首先,我想要自己的那只貓。”這是一個存在的傳說。
暗に娘の分もねだる前久の愉快な一面を窺わせる文書だが、頼まれる側は堪ったものではない。
這份文書透露出前久求好事者要女兒分的有趣一面,但被要求者并不好辦。
「そうそう都合良く子貓を確保なんて出來る訳ないよね……」
“不可能隨便就抓到方便的小貓啊……”
繁殖期に入ったばかりの現(xiàn)狀ではまず無理だろうし、仮に子貓が手配できても前久に懐くかは貓次第となる。理想を言えば、前久と子貓を引き合わせ、彼が見初めた子貓を譲るのであれば間違いがない。
現(xiàn)在正是繁殖期,很難辦到,即使可以安排到小貓,也要看它是否親近前久。如果可以讓前久和小貓見面,他會挑選出他所喜歡的小貓,那就不會有錯了。
とはいえ前久は既に関白の地位にあり、おいそれと呼びつける事など出來ようはずもない。また、下手なものを送っては織田家の面目にも関わる。前久自身が心得ていても、周囲が同じように捉えるとは限らない。
然而,前久已經擔任關白的職位,不可能輕易地召喚他。此外,送錯東西會影響織田家的面子。即使前久本人明白了這個事情,周圍的人也未必能理解。
「うん。次だ次」
"好的,接下來是下一封信。"
考えることを放棄した靜子は、次の文を手に取った。
放棄思考的靜子拿起了下一封信。