お百姓と悪魔
むかしむかし、とってもかしこいお百姓(ひゃくしょう)が住んでいました。
ある日の事、お百姓は自分の畑の真ん中に、ひと固まりの石炭が燃えているのに気がつきました。
ビックリしてそばヘ行ってみると、その石炭の火の上に真っ黒な小さい悪魔(あくま)がすわっているではありませんか。
「お前はきっと、寶物の上にすわっているんだろ?」
と、お百姓は言いました。
「そうとも。お前が生まれてからまだ見た事もないほど、たくさんの金や銀の入った寶物の上にすわってるんだ」
「それじゃあ、その寶はわしの土地にあるんだから、わしのものだぞ」
と、お百姓が言いました。
「ああ、いいとも。お前にやるよ。もっとも二年の間、お前の畑に出來る物を半分だけおれにくれたらの話だがね」
お百姓は、大きくうなづきました。
「よし、きまりだ。けれど分ける時にけんかをしないように、土の上に出來た物はお前の物。土の下に出來た物は、わしの物としようじゃないか」
「よし、おれが土の上に出來た物だな」
悪魔は喜んで、帰って行きました。
ところがかしこいお百姓は、畑にカブのタネをまきました。
さて、いよいよ取り入れの時になると悪魔がやって來て、出來た物をもらっていこうとしました。
ところが土の上に出來た物をもらう悪魔の取り分は、しぼんで黃色くなった葉っぱばかりです。
「ちくしょう。今度は、お前が得をしたが」
と、悪魔は言いました。
「この次はも、そうはいかんぞ。土の上に出來る物はお前の物で、土の下に出來る物はおれの物にしよう」
「いいとも。約束しよう」
さて、次のタネをまく季節(jié)が來ると、かしこいお百姓はカブをまかないでムギをまきました。
そしてムギが実った時、お百姓は畑ヘ行って、くきの根元からムギを全部かりとってしまいました。
悪魔が來た時には、切りかぶしかありません。
悪魔はプンプン怒りながら、どこかへ行ってしまいました。
「はっはっは。うまくいったわい」
お百姓はそう言って畑にうまっている寶物をほり出し、大金持ちになりました。
おしまい