陰陽(yáng)師帝釋天 繪卷第一章:英雄(中日雙語(yǔ)整理)
彼らは天域と鬼域との辺境にある村で出會(huì)った。
他們相遇在一個(gè)天域與鬼域交界的城莊。
その頃の帝釈天は、まだ名もない若者の一人に過(guò)ぎなかった。天人と鬼族との千年に渡る戦爭(zhēng)の中、彼は一族の者に従い、何度も故郷から逃げ出した。天域の長(zhǎng)たる十天衆(zhòng)の支配下で暮らす彼は、日々貴族達(dá)の愚策を嘆いていた。
彼時(shí)的帝釋天還只是一個(gè)名不見經(jīng)傳的年輕人,在天人與鬼族的千年戰(zhàn)爭(zhēng)中,隨著眾族人們一起放棄故土一退再退。在天域領(lǐng)袖十天眾的手下,日復(fù)一日地為貴族們的昏庸決策而扼腕嘆息。
彼は伝説の戦士たちに憧れていた。殘虐な鬼族を前にしても、偉ぶる貴族たちを前にしても、真っ直ぐに立ち、決して運(yùn)命に屈しない英雄たちに憧れていた。
同時(shí)也向往著那些傳說(shuō)中的戰(zhàn)士,那些無(wú)論面對(duì)殘忍的鬼族,還是道貌岸然的貴族們,都一樣站得筆直,永不肯向命運(yùn)低頭的英雄。
しかし生まれつきの力が霊神體の能力によって決まってしまう天人の中で、精神感応能力しか持たない彼が戦士になることは、ほぼ不可能な話だった。
然而在以靈神體能力決定先天力量的天人中,只有心靈共感能力的帝釋天想要成為一位戰(zhàn)士,幾乎是不可能的。
「戦士にはなれないけれど」帝釈天はこう考えていた?!袱猡酚⑿郅我郅肆ⅳ皮毪胜椤ⅳ郡趣ㄋ坤螭扦獗就?。」
“雖然我無(wú)法當(dāng)上戰(zhàn)士,”帝釋天想道,“但若能幫助真正的英雄走向勝利,那即使獻(xiàn)上性命,也足夠了?!?/p>
そんな簡(jiǎn)単な願(yuàn)いを胸に、貴族の名しか持たない彼は平民の若者を集め、「翼団」と言う名の組織を立ち上げ、天域の戦場(chǎng)の最前線で食糧を運(yùn)び、逃げてきた難民たちを助けていた。しかし千年続いた戦爭(zhēng)にとって、その努力はまさに焼け石に水でしかなかった。村を救おうとしたが、辿りついた時(shí)には村人は既に全員息絶えていた。兵糧を運(yùn)ぼうとしたが、到著した戦場(chǎng)に生者は一人もなかった。
懷著這樣簡(jiǎn)單的心愿,無(wú)權(quán)無(wú)勢(shì)卻空有貴族之名的帝釋天集結(jié)了一群平民中的年輕人,他們建立了一個(gè)名為「翼之團(tuán)」的組織,在天域邊境戰(zhàn)事的最前線運(yùn)輸糧草,幫助逃亡的難民。然而這一切在持續(xù)了千百年的戰(zhàn)爭(zhēng)前,也不過(guò)是杯水車薪,前去解救的村落趕到時(shí)已經(jīng)沒有活口,運(yùn)送糧草的車連夜到達(dá)戰(zhàn)場(chǎng)時(shí)已尸橫遍野。
戦場(chǎng)だった荒れ地で、苦しそうな顔をする死體は、命が盡きる瞬間まで運(yùn)命から逃れようと體を動(dòng)かそうとしたが、希望はついぞ訪れなかった。
一片狼藉的戰(zhàn)場(chǎng),帶著扭曲表情死去的同族,在生命的最后一刻都保持著試圖逃離命運(yùn)的姿勢(shì),卻沒有等到奇跡的前來(lái)。
「どうしてもっと早く來(lái)れなかった?」帝釈天は自分に問(wèn)いかけた。
“為何我不能早點(diǎn)到呢?”帝釋天問(wèn)自己。
「どうして彼ら最後の期待に応えられなかった?」
“為什么我沒能回應(yīng)他們最后的祈求?”
「どうして私は本當(dāng)の英雄になれない?」
“為什么我成為不了真正的英雄?”
そして……
以及——
「どうして本當(dāng)の英雄は、彼らの前に現(xiàn)れなかった?」
“為什么真正的英雄沒有為他們而來(lái)?”
帝釈天は自分に問(wèn)いかけ続けた。しかしそれでも、彼は陥落していく辺境を離れなかった。ただ食糧を積んだ車と共に、死に絶えた村を訪れ続けた。
帝釋天不停質(zhì)問(wèn)自己,但即使如此,他也沒有離開日漸淪陷的邊境,推著糧車經(jīng)過(guò)一個(gè)又一個(gè)無(wú)人生還的村落。
そしてある日、新しい伝説が神の奇跡のように突然現(xiàn)れた。
直到有一天,一個(gè)新的傳言如同從天而降的福祉一般突然到來(lái)。
「漆黒の戦士に助けられました?!股瓪垽盲咳诉_(dá)はこう言った。「鬼族は彼に気づくと、一目散に逃げ出しました?!?/p>
“一個(gè)渾身漆黑的戰(zhàn)士救了我們?!北痪认碌娜藗冋f(shuō)道。“鬼族看到他來(lái),全都嚇得四散奔逃?!?/p>
「彼は鬼族の瘴気の中でも自由に行動(dòng)できます。あんなに強(qiáng)い霊神體は、今まで見たことがありません。あの黒い觸手が軽く動(dòng)くと、悪鬼どもは八つ裂きなりました。」
“他能在鬼族的瘴氣里穿梭自如,我從沒見過(guò)那么強(qiáng)大的靈神體,那黑色的觸手只是稍稍一揮舞,就將惡鬼們撕成碎片。”
「もし天人族が皆彼のように強(qiáng)かったら、戦爭(zhēng)はとっくに終わっているはずです?!?/p>
“如果天人族每一個(gè)人都能像他那樣,戰(zhàn)爭(zhēng)一定早就結(jié)束了?!?/p>
天域の無(wú)限に広がる灰色の空の下で、帝釈天は皆の片言をかき集め、伝説の英雄の姿を描き出した……彼は黒い妖気を纏った、最強(qiáng)の霊神體の持ち主で、神の如く戦場(chǎng)に現(xiàn)れ皆を救うと、またどこかに消えてしまう。彼はどこから來(lái)たのか、どこに向かっているのか、名前はなんなのか、誰(shuí)もその答えを知らない。
面對(duì)著天域無(wú)垠卻永遠(yuǎn)陰霾的長(zhǎng)空,帝釋天從人們的只言片語(yǔ)中勾勒出了一個(gè)傳奇的英雄——他渾身纏繞著黑色的妖氣,有著最強(qiáng)大的靈神體,如同天神一般出現(xiàn)在戰(zhàn)場(chǎng),救下所有人后,又突然消失不見。誰(shuí)也不知道他來(lái)自哪里,又去往何處,誰(shuí)也不知道他叫什么名字。
「彼に會(huì)いたい?!沟坩嬏欷悉饯λ激盲?。
“我想要與他相見。”帝釋天想道。
奇しくも、その願(yuàn)いは誰(shuí)かに屆いたようだった。
冥冥之中,似乎有誰(shuí)聽到了他的愿望。
ある日食糧を運(yùn)ぶ途中、帝釈天と仲間達(dá)は鬼族に待ち伏せされた。鬼族は道に瘴気を放ち、それに気づいた時(shí)、彼らの霊神體は既に瘴気に侵され、動(dòng)くことすらできなかった。隠れていた鬼族が押し寄せ、抵抗する力すら持たない翼団兵士を屠り始めた。
一天在運(yùn)輸糧草的路上,帝釋天和他的同伴遭到了鬼族的伏擊,鬼族們?cè)诼飞厢尫帕苏味?,等一行人察覺不對(duì)時(shí),靈神體已經(jīng)被瘴氣損害,無(wú)法行動(dòng),伏擊的鬼族沖了出來(lái),屠戮起毫無(wú)反抗之力的翼之團(tuán)士兵。
仲間達(dá)が次々に、鬼族の鋭い爪に切り裂かれていく。さっきまで話していた者が、瞬く間に蠢く肉の塊に化した。瘴気と恐怖に支配された帝釈天は、地に倒れて動(dòng)けない。か弱い彼は無(wú)事に戦場(chǎng)から生きて帰ることができるとは思っていなかった。しかしいざ本物の死が訪れると、彼は恐怖を覚え、同時(shí)に奇跡を願(yuàn)った。
鬼族的利爪撕碎了一個(gè)又一個(gè)的同伴,方才還與自己談笑的人瞬間變成了地上蠕動(dòng)著的尸骸,瘴毒和恐懼使得帝釋天癱軟在地上動(dòng)彈不得,弱小無(wú)力的他從沒想過(guò)活著離開這片戰(zhàn)場(chǎng),然而當(dāng)真正的死亡來(lái)到眼前,他在恐懼之余,卻向命運(yùn)祈求奇跡的轉(zhuǎn)機(jī)。
「今日初めて會(huì)った兵士も、罪なき村人も、戦爭(zhēng)に巻き込まれて死ぬ定めからは逃れられない。これが弱さの対価なのか?」
“哪怕是今天頭一次見面的士兵,也要為紛爭(zhēng)而死,哪怕是無(wú)辜的村人,也要為戰(zhàn)爭(zhēng)而殞命,這難道就是弱小的代價(jià)嗎?”
「この世から爭(zhēng)いが消える日は、永遠(yuǎn)に訪れないのか?」
“難道這世上,就沒有所有紛爭(zhēng)都會(huì)消失的一日?”
「皆の心が通じ合う瞬間は、永遠(yuǎn)に訪れないのか?」
“就沒有所有人都能心意相通的一瞬?”
「全ての痛みが消える時(shí)は、永遠(yuǎn)に訪れないのか?」
“就沒有所有痛苦都會(huì)平息的時(shí)代?”
「伝説の英雄は、至高の王者は、本當(dāng)に存在しないのか?」
“就沒有一個(gè)唯一的英雄?一個(gè)至高無(wú)上的強(qiáng)者?”
「その者が全ての爭(zhēng)いの頂點(diǎn)に上り詰め、永久の平和が訪れたと宣言する日は、永遠(yuǎn)に訪れないのか?」
“在他爬上所有戰(zhàn)爭(zhēng)的最高處的那一刻,宣布從此永遠(yuǎn)的和平將到來(lái)嗎?”
混亂し絶望しきったその瞬間、死を告げる悪鬼の爪が振り下ろされるのを待つ帝釈天が頭を上げると、漆黒の阿修羅が見えた。
在那個(gè)混亂又絕望的瞬間,在惡鬼的利爪下等待著死亡的帝釋天抬起頭來(lái),看見了漆黑的阿修羅。
その瞬間、死は恐怖ではなくなった。その瞬間、絶望は忘れ去られた。
死亡在那一瞬間突然不再可怕,絕望在那一瞬間被拋諸腦后。
人々が謳う伝説のように、それは漆黒の妖気を纏う戦士だった。人々が倒れる中、彼だけは自由に行動(dòng)できる。彼は帝釈天が見たことのないような霊神體を持っていた。六本の真っ赤な觸手が刃のように鬼族に振るわれ、伝説の中の鬼神の如く敵を虐殺し、何度も何度も敵の胸に武器を突き刺した。悪鬼どもは四方から同時(shí)に襲ってきたが、彼は難なく引き裂いた。
就如同人們口口相傳的傳說(shuō)中那樣,那是一個(gè)渾身纏繞著漆黑妖氣的戰(zhàn)士。在所有癱倒在地的人群中,只有他一個(gè)行動(dòng)自如,他有著帝釋天見過(guò)最駭人的靈神體,六條猩紅的觸手像利劍般朝鬼族揮舞而去,如同傳說(shuō)中的鬼神一般所向披靡,將武器一次又一次地送入敵人的胸膛,惡鬼們同時(shí)從四方攻擊試圖包圍他,被他毫不費(fèi)力地一并撕碎。
汚い黒血が一面に広がったせいで、動(dòng)けない帝釈天は全身血まみれになった。彼は目を見張った。目を閉じた瞬間に、突然目の前に現(xiàn)れた奇跡がまたと消えることを恐れるように。
骯臟的黑血濺了滿地,濺了不能行動(dòng)的帝釋天一身, 帝釋天從頭到尾都睜大了雙眼,生怕自己一閉眼,眼前的奇跡會(huì)如同他出現(xiàn)那般又憑空消失。
そのおかげで、黒い戦士の自信溢れる顔が狂亂に変った瞬間を、帝釈天はしかと見屆けることができた。
正因如此,帝釋天也真真切切地看清了,黑色戰(zhàn)士臉上的笑容從自信變成瘋狂的那一瞬間。
待ち伏せしていた鬼族はあっという間に全滅した。辛うじて生き殘った兵士達(dá)がなんとか身を起こした時(shí)、あの狂暴な戦士は急に獣のように恐ろしく唸り始め、觸手を一族の者の胸に突き刺した。少し経つとまた別の仲間を狙い、觸手を差し込みそしてまた抜いた。その體は血まみれになったが、やめようという意志は少しも感じられない。その狂暴な精神に侵され、周囲の人々も狂亂し、敵味方関係なく攻撃し始めた。
伏擊的鬼族很快就被殺盡,幾個(gè)殘存的士兵掙扎著爬起來(lái)正要慶賀,那狂暴的戰(zhàn)士卻突然發(fā)出野獸一般可怕的嘶吼,觸手瞬間穿透了同族的胸膛。片刻后又刺向其他同伴,刺穿又拔出,血浸透了他的身體,他卻絲毫沒有停下的意思,受到他狂暴精神的影響,周圍的人也開始陷入瘋狂,不分?jǐn)澄业鼗ハ喙簟?/p>
仲間達(dá)の痛みが、津波のように帝釈天の意識(shí)の中になだれこんできた。他人の數(shù)えきれない苦痛の中で、彼の霊神體は自分にしか聞こえない悲鳴を上げた。奇跡は一瞬消えかけたかもしれないが、帝釈天にとって、希望はまだ焔のように燃え盛っている。あの瞬間彼は決意した。この身が滅びようと、決して希望の明かりを絶やさないと。
同伴們的痛苦像洪流一樣沖進(jìn)帝釋天的意識(shí),他的靈神體發(fā)出只有他能聽見的悲鳴,層層疊疊來(lái)自他人的痛苦之中,或許奇跡黯淡了一瞬間,但對(duì)帝釋天而言,希望仍舊熾熱地如同火焰,那一瞬他下定決心,哪怕粉身碎骨,也不能讓奇跡熄滅。
苦痛の中、帝釈天はなんとか動(dòng)き出した??駚yした黒い戦士を目掛けて這い進(jìn)み、自分を刺そうとする觸手を摑んだ。
痛苦之中帝釋天掙扎著爬了起來(lái),朝著那名發(fā)狂的黑色戰(zhàn)士爬過(guò)去,一把抓住了他剌向自己的觸手。
次に起きたことは、彼自身も予想だにしていなかった。なぜそんな勇気が出たのかはわからない。頭が反応する前に、彼の霊神體は錯(cuò)亂した戦士に手を伸ばしていた。
隨即連他自己都愣住了,不知自己是哪里來(lái)的勇氣,尚來(lái)不及反應(yīng),他的靈神體已朝著發(fā)狂的戰(zhàn)士伸出了手。
その瞬間、空気中に立ちこめていた狂気が消えた。帝釈天の霊神體が無(wú)理やり彼の狂亂を分擔(dān)すると、彼は正気を取り戻した。元に戻った戦士は、驚いた顔で彼を見つめた。
就在那一瞬,空氣中的狂氣戛然而止,帝釋天用他的靈神體強(qiáng)行分擔(dān)了這位初見者的暴亂之欲,讓他清醒了過(guò)來(lái)。恢復(fù)如常的戰(zhàn)士驚訝地看著他。
「それがお前の能力か?」彼はこう聞いた。
“這就是你的能力嗎?”他問(wèn)道。
「その通り?!篂?zāi)いから逃げ切った帝釈天は、ほっと安堵の息を漏らした。疲れ切った彼は地面に倒れ、笑った。 「成功してよかった。心配していたんだ、失敗して、あなたを死なせてしまったらどうしようって?!?/p>
“沒錯(cuò),”劫后余生的帝釋天松了一口,他笑道,隨即筋疲力盡地栽倒在地,“我也沒想到居然會(huì)成功,我剛剛還在想,我要是失敗了,讓你死去可怎么是好?!?/p>
「こういう時(shí)は自分が殺されないか心配すべきじゃないのか?」黒い戦士は疑問(wèn)を口にした?!笁浃铯盲郡浃膜?。俺は阿修羅だ、お前は?」
“這種緊要關(guān)頭你難道不該害怕我把你殺了嗎?“黑色戰(zhàn)士問(wèn)道,“你可真是個(gè)怪人,我叫阿修羅,你叫什么名字?”
「帝釈天だ。」
“我叫帝釋天。”