悪魔の種

悪魔の種がばら撒かれて以來、この國を治めている神は、すべての悪魔の種を払おうと決めた。 神様のおかげで、悪魔の種に宿られた民は助かった。神様は「人民の健康は第一位だ」と宣言し、完璧な國を構(gòu)築した。 それにしても、悪魔の種は海外から続々と侵入していた。しかし、なんとなく、悪魔の種はもはや命を欲しがらないようだった。神様はやはり自分の意思を貫いていて、代償もかまわずに悪魔の種を排除しようとしている。神様のご命令にしたがい、民はみんな家に閉じこもった。それで、店が閉まって、神社に參拝する人がいなくなって、昔の賑やかな町が寂しくなった。 だんだん、民たちは悪魔の種より、神の命令を憚るようになった。もし悪魔の種が現(xiàn)れたら、その場(chǎng)所にいたすべての民は大変なことになるだろう。生活の変化にともない、人々の心理も変わってしまった。店が閉まったら買い物ができなくなった。買い物ができなくなったら生活を営めなくなった。生活さえ営めなかったら、神社に行く余裕がなくなるのは當(dāng)然だった。知らず知らずのうちに、この國に住んでいる民たちは、普通の生活から遠(yuǎn)く離れてしまった。この完璧に見える國はいつのまにか、ひび割れてしまった。 愚かな民は何もかもわからなくて、ただ神に「仰る通り、悪魔の種はわれわれを息苦しくさせますが、悪魔の種がこの身に宿っていないくせに、こんなに息苦しいのはなぜですか」と叫び出した。 (2022.3.11)

注：

誤解が生じないように、この文章は短編小説に近いものにすぎないと強(qiáng)調(diào)する。 (2023.3.14)

祭りの始まり

いよいよJLPTの試験日が來たと、私はベッドで目覚めて思う。カーテン越しに柔らかな日光が部屋を照らし、まるで一日の始まりを示しているようだ。私はのんびりとあくびをして、スマホを取ってクリックして、不意に時(shí)間がもはや11時(shí)過ぎになったのをちらりと見た。こんな時(shí)間かと驚いてカーテンを橫に引くと、確かに真晝に近い空模様を眺めた。晴れ渡って雲(yún)が漂っている、散歩にふさわしい青空だと思いきや、下を向いてみると、地面が薄く濡れるようになっていくと発見した。 まさか狐の嫁入りというあやしい天気に出會(huì)うとは思わなかった。まさか遅刻する様子になったとも思わなかった。私は急いで鉛筆をカバンに入れようとしたが、慌ただしく鉛筆をゆかに落としてしまった。鉛筆の先が折れた。それに鉛筆を削ぐ時(shí)間がなさそうだ。どうやら現(xiàn)場(chǎng)に到著して鉛筆を削がざるを得ないようだ。私は考えもせずに機(jī)に置いてあるナイフを拾ってカバンに入れて、一心に試験場(chǎng)に向かった。 私は受験生と列に並んで、試験場(chǎng)の入り口を眺めている。入り口の前にひとりの著物姿の女が立っており、受験生の書類を?qū)彇摔筏皮い?。「おかしいな、祭りではあるまいし……」と?dú)り言を言いながら、その係員らしい大和撫子を見入っている。 が、私の前に並んだ人が蒸発したかのごとく、突然私の番だ。疑惑のあまりパスポートと受験票を手渡したとたん、その大和撫子さんが意味深な目つきで私を睨んだ。そして、口を開いた。 「おぬしはシナ人でございましょう。ここは中國人に限る試験場(chǎng)でございます。シナ人は、この試験場(chǎng)に入りますまい。ただし、特別免許がございましたら……」 私はただちに呆然とした。黒雲(yún)が容赦なく迫り來て、晴れ渡っていた半分の青空さえ覆ってしまった。雨足に先立って、稲妻が曇天を切り離して、殘酷な光を目の前に投げかけた。が、恐怖というより、むしろ疑惑と驚愕が私の気持ちに近い。なぜシナ人と中國人が併用されたのか。なぜ私だけがシナ人に成り下がったのか。が、もう時(shí)間がない。後ろに並んでいる私の「同胞」たちはきっと焦りに焦って、憎しみに満ちた目つきで邪魔をした私を睨んでいるに違いない。が、邪魔をしたものはいったい誰か？悪魔の種のばら撒きによって何度も試験が取り消された。先著順の試験資格によって何度も試験資格さえ手に入れなかった。では、今度は、試験に參加できないどころか、身分とプライドさえ守れなくなったのか？いや、身分やらプライドやらどうでもいい。お大事なのは、「絶対我が試験を妨げますまい」ばかりだ。 「はい、探してみましょう……」と一言で時(shí)間を稼いでカバンに手を入れて、猛然とナイフを取り出し、潔く大和撫子の腹を刺した。が、ナイフを抜くが早いか、突然ついていた何かが離れたかのごとく、四肢までひえびえとしてはじめる。悪魔！悪魔に憑かれた！狐の嫁入りというあやしい天候の中に、悪魔に憑かれた！人の群れが騒がしくひしめき合っている。交番から警察が津波のごとく駆けつけている。これは、まさに、祭りの始まりである！ 銃弾の花火が私の心臓を穿ったところ、血の飛沫が周りのともしびと化し、倒れた大和撫子が側(cè)の荷物となった。もともと座って休もうとしたが、結(jié)局寢入ってしまった。見知らぬ羽田空港には祭りなんて始まるはずがないが、なんとなく、あの夢(mèng)における頼りのない感覚が、今でも心に殘っている。

注：

この文章には小説的創(chuàng)作が含めるので、作者は必ずしもそんな夢(mèng)を見ない。 (2023.3.14)