読書感想:千歳くんはラムネ瓶のなか7(生)
さて、前巻で私は第二章の開幕となるであろう今巻が出來れば三か月くらい後に読みたいと言ってみたが、今巻は前巻から五カ月の時をかけて刊行されている。だがそれには事情がある。それは先に語ってしまうが後書きで語られている通り、作者である裕夢先生が何とスランプに陥られていたからである。しかし、魂を削り振り絞る裕夢先生を自ら語り始めた事で救ったのが、今巻から登場する新ヒロインであり新たなジャンル、後輩である紅葉(表紙)である。
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しかし彼女は朔を取り巻く関係にとっては劇薬であり、橫から月を撃ち抜こうと虎視眈々と構(gòu)える魔弾だ。だがそれも全て、彼女の戦いの方法であり、抗いの行いなのである。だが彼女は、朔と言う「ヒーロー」を撃ち抜こうとしているのだ。自分の思いに悩み、少女達(dá)のヒーローと言う立ち位置から外れた彼を。それは一體どういう事なのか。
「いまの夕湖に似合ってると思うよ」
夏休みも明け二學(xué)期、九月。朔達(dá)にとっては校外祭、體育祭、文化祭の三つが連なる飛び切り華やかなイベント。夕湖がイメチェンと新たな決意と言わんばかりに髪型を変え、クラスでの文化祭の出し物も決まる中。チーム千歳の面々は、応援団に立候補しグループパフォーマンスを行う事となり??k割りの編成により明日風(fēng)と紅葉が加わり、後輩キャラを加えた中で、夕湖の家でメンバー全員で合宿を行う事となる。
「私は先輩たちの輪には入れないし、入らないです」
「先輩の望みは、私の望みです」
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何気ない賑やかさを堪能したり、ヒロイン同士の関係が深まったり。そんな中、無害な後輩と言う印象を刷り込んでいた紅葉は一人、朔の心に忍び寄る。停滯から抜け出さなくては、という朔の本心を引っ張り出しそのお手伝いをしますと後輩らしい笑顔で、まるで新しい朝を連れてくるように言う。
だがその方法は、とても強(qiáng)引で、それこそ今まで築かれていた全ての舞臺をひっくり返すようなものだった。自分の思いに悩み切れ味を失った朔を振り回すように後輩としての権利を駆使し。気が付けば明日風(fēng)、陽、優(yōu)空の特別を奪っていく。
「私はなにかひとつでも卑怯なことをしましたか?」
「それって、みなさんが勝手に思い込んでるだけですよね」
「―――手を繋ぎ輪になって仲よく停滯してるんですよね」
「春を巻き戻したいんですよ」
次なる標(biāo)的として見定められ対峙する悠月。しかし身構(gòu)える彼女へ紅葉は容赦なく、彼女の、チーム千歳の現(xiàn)狀を指摘し。一目ぼれし全てを手に入れたい、全てを染めたいと言う己が願いを口にする。
そう、一人が辛いから二人の手を繋ぎ、二人が寂しいから輪になって手を繋いで。それで朔を取り囲んでも、それは朔と共にガラス瓶の底で停滯するようなもの。月に手を伸ばし続けるというのなら、輪を無くさなければいけない。そして紅葉は輪の外に敢えて身を置く事で、いつでも月を撃ち墜とせるという好機(jī)を伺っている。
正しく盤外から現(xiàn)れた彼女は劇薬、文字通り全てを荒らしていく嵐。その脅威を前に覚醒するのは「彼女」。果たしてこの先、どうなるのか。
少女達(dá)の魂を削るような慟哭と、切なる叫びが響く今巻。正に新章の始まりである。
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次巻、いよいよ本當(dāng)の戦いが始まる、のかもしれない。