「1000日以內(nèi)に全國制覇する計(jì)畫を立てて明日から練習(xí)します」。100回大會で大敗した後、インタビューでそう公言した須江監(jiān)督。そのときから始まった計(jì)畫と軌跡をお伝えします。

　2018年1月。

　仙臺育英の須江航監(jiān)督は、1人で大阪に向かった。

　當(dāng)時(shí)34歳。

　系列の秀光中の野球部を率いて全國優(yōu)勝した経験があり、仙臺育英の監(jiān)督に就いたばかりだった。

　目的地は生駒山の中腹、大東市にある大阪桐蔭のグラウンドだった。外野の外に立ち練習(xí)を見學(xué)した。

　見學(xué)者がいることに気づいた西谷浩一監(jiān)督（52）にバックネット裏に招かれると、質(zhì)問攻めにした。

　「指導(dǎo)する上で大切にされていることは」

　「チームづくりとは」

　「強(qiáng)化と育成をどう両立されているのか」

　大阪桐蔭はこの時(shí)點(diǎn)で全國制覇が4度。選抜優(yōu)勝が2度。12年には最初の春夏連覇を遂げていた。

　どうすれば日本一になれるのか。學(xué)びたい一心だった。

　「若いのに、熱心な指導(dǎo)者だな」。西谷監(jiān)督はそのときのことを覚えている。

　就任から半年余りの18年夏、仙臺育英は第100回全國選手権記念大會に出場し、初戦の2回戦で浦和學(xué)院（埼玉）に0―9で大敗した。

　試合後のインタビューで須江監(jiān)督は言った。

　「1000日以內(nèi)に全國制覇する計(jì)畫を立てて明日から練習(xí)します」と。

　同じ大會で大阪桐蔭は2度目の春夏連覇を達(dá)成した。その選手たちの打球速度やパワーを冬の大東のグラウンドで體感し、「日本一までの距離感」もつかんだつもりだった。

　「周りは笑っていたかもしれないが、僕は本気だった。東北が日本一になれない理由はない」

　過去の甲子園の映像を繰り返し見て、課題を洗い出した。

　仙臺育英には夏の甲子園で2度の準(zhǔn)優(yōu)勝（1989年と15年）などの実績があり、東北一帯から有望な選手が進(jìn)んでくる。

　今夏のベンチ入りメンバーなら、18人のうち16人が東北地方の中學(xué)出身だ。

　1年目は走塁、2年目は打撃などとテーマを決めて、選手たちを鍛えていった。

　「どこよりも早く、新しいことをやらないと100年以上閉ざされた扉は開かない」

　重視したのがデータと継投策だ。

　選手の球速やスイングスピードなどを計(jì)測した。ベンチ入りメンバーは、これらの數(shù)値をもとに決めた。

　主將で控え外野手の佐藤悠斗は「結(jié)果を出せば試合に出られるし、ダメなら使われない。平等でわかりやすい」と言う。

　今大會、仙臺育英は140キロ超を誇る投手5人を擁して継投策をとってきた。

　「球速や球種の違う投手を、打者が慣れる前に起用できるメリットがある」と須江監(jiān)督。

　2番手で救援することが多いエースの古川翼は「役割がはっきりしているので準(zhǔn)備しやすい」と話す。

　深紅の大優(yōu)勝旗はいつ「白河の関」を越えられるのか。

　長く、同じ悲願を抱えてきた東北のチームには連帯感のようなものがある。

　11年夏、12年春夏と光星學(xué)院（現(xiàn)八戸學(xué)院光星、青森）が3季連続で甲子園で準(zhǔn)優(yōu)勝した。

　仙臺育英が全國選手権で2度目の決勝に進(jìn)んだのはその3年後。さらに3年後の第100回大會では金足（かなあし）農(nóng)（秋田）が頂點(diǎn)にあと1勝にまで迫った。

　花巻東（巖手）の菊池雄星、大谷翔平、大船渡（巖手）の佐々木朗希ら、東北の地から傑出した投手が現(xiàn)れれば、その豪速球を打とうと、東北の打者のレベルもまた上がっていった。

　強(qiáng)打を看板に選手権出場11回を數(shù)える盛岡大付はその典型だ。

　須江監(jiān)督は埼玉出身。仙臺育英から青森の八戸大（現(xiàn)八戸學(xué)院大）に進(jìn)み、指導(dǎo)者になった。

　「東北の人は『東北は一つだ』という思いが強(qiáng)い。埼玉出身の僕はなおさらそう感じる。東北の強(qiáng)豪校に追いつけ、追い越せでやってきた」

　中止の20年を挾んで4大會連続の代表の座をめざした昨夏の選手権は宮城大會4回戦で敗れた。

　隣の福島では14大會連続をめざした聖光學(xué)院が準(zhǔn)々決勝で敗れた。

　地方大會が終わってすぐ、聖光學(xué)院と練習(xí)試合を行い、斎藤智也監(jiān)督（59）と「來年は絶対にリベンジだ」と誓い合ったという。

　今大會の準(zhǔn)決勝、その聖光學(xué)院を甲子園で破った。

　試合後の整列で主將の佐藤は聖光學(xué)院の主將赤堀颯（はやと）から聲をかけられた。

　「同じ東北。必ず優(yōu)勝しろよ」

　この試合で5打點(diǎn)を挙げた6番打者の遠(yuǎn)藤太胡（だいご）は山形の出身。東北のチームで日本一になりたいと隣県の仙臺育英に進(jìn)んだ。

　「僕は仙臺に出てきたけれど、東北全體でがんばろうという思いがすごくある。地域の人の応援からもそれを感じる」

　須江監(jiān)督が一人で大阪桐蔭のグラウンドを訪ねた冬から約4年半。

　全國制覇への1000日計(jì)畫を公言したあの日から22日で1471日。

　100年以上閉ざされた、重い扉をこじ開けた。（山口裕起）