【日本小5道德】10#一踏十年
一踏み十年(一踏十年)
作者:吉藤 一郎(よしふじ いちろう)
勇達の乗った高原バスは、ようやく室堂に著いた。ここは、海抜二千五百メートルもあり、立山直下に広がる、高山植物に覆われた臺地である。
(勇他們所乘坐的高原巴士終于抵達了室堂。這里是海拔二千五百米,被立山正下方蔓延的高山植物所覆蓋的臺地。)
勇は、初めて間近に見る立山の美しさに、すっかり見とれてしまった。母と二人で遊歩道のそばの草むらに腰を下ろし、あたりの三千メートル級の山々を眺めていた。
(勇完全陶醉于了這第一次近距離所見的立山之美。他和母親兩人在散步道旁的草叢上坐了下來,眺望著附近三千米的群山。)
「もし、もし?!工妊预β暏苏瘠晗颏?、若草色の制服を著た男の人が笑顔で立っている。
(“你們好?!眱扇寺劼暬仡^望去,只見一個穿著草綠色制服的男人正笑容滿面地站著。)
「すみませんが、そこに腰を下ろさないでください。あなた方の腰の下は全部高山植物なんです。ほら、そのクリーム色の花は、チングルマと言う高山植物ですよ?!?/p>
(“不好意思,請不要坐在那里。你們坐下的地方全都是高山植物???,那淡黃色的花是名為珍車的高山植物?!?/span>)
そう言われて勇達は、慌てて遊歩道に戻った。その後は、芝生のような草が折れ曲がり、その中にはチングルマも何本かあった。
(勇他們聞言慌張地回到了散步道。他們身后如同草坪一樣的草折彎了,其中還有幾棵珍車。)
「高山植物を大切にしなさい?!工?、勇は家を出る時、父から聞かされていたし、バスの中でも注意されたことだった。勇は、自分の頬が段々熱くなってくるのを感じていた。
(勇在離開家的時候,聽父親說了“要愛護高山植物。”在巴士上也被提醒了。勇感到自己的臉頰漸漸熱了起來。)
この人は、自然解説員の松井さんだった。その松井さんが、勇達を、「立山自然保護センター」と言う所に案內(nèi)してくれた。広い部屋には、白い掲示板が何枚もあり、高山に生えている木の年輪の大きな寫真が貼ってあった。
(這人是自然解說員松井先生。松井先生將勇他們帶到了“立山自然保護中心”。在寬敞的房間中,有好幾塊白色的布告牌,上面貼著生長于高山的樹的年輪的大照片。)
「さあ、これを覗いてごらん。」
(“來,看看這個。”)
松井さんはそばの蟲眼鏡を指差した。目を近づけると、固定されている蟲眼鏡のレンズを通して年輪が見える。勇は蟲眼鏡から目を離して、橫の方からそれを覗いてみた。そこに、マッチ棒より少し太めの植物の莖が、二センチメートルほどの長さに切られて立っていた。
(松井先生指著旁邊的放大鏡??拷豢?,通過固定著的放大鏡的鏡片,能夠看到年輪。勇將目光從放大鏡上移開,然后從旁邊看了一眼。那里豎著比火柴棒稍微粗一點的植物的莖,被切成長約兩厘米左右。)
(チングルマに年輪がある。チングルマは木なのだろうか。だって草と同じような莖があるではないか。)
(珍車有年輪。珍車是樹嗎?但和草有差不多的莖啊。)
「チングルマの莖には、年輪があるのですか?!?/p>
(“珍車的莖有年輪嗎?”)
勇は、思わず大きな聲で聞いた。
(勇不禁大聲問道。)
「そうです。高山植物には、木の仲間と、多年草の二種類があって、これは木の仲間です。ところで、その年輪を數(shù)えてごらんなさい?!?/p>
(“是的。高山植物分為樹的同類和多年草這兩種,這是樹的同類。話說,你數(shù)數(shù)它的年輪吧。”)
松井さんに言われて、勇は急いで蟲眼鏡に目を押し付けるようにして年輪を數(shù)えた。十以上は確かにある。それ以上はぎっしり詰まっていて數(shù)えられない。
(松井先生如此說道,于是勇趕緊將放大鏡按在眼前似的數(shù)起了年輪。十以上肯定是有的,然后就緊緊地擠在一起數(shù)不清了。)
「ああ、立ったマッチ棒くらいの太さになるのに十年以上も……?!?/p>
(“啊,長到和豎起來的火柴棒差不多粗竟要十年以上嗎……”)
勇は、チングルマに年輪があると分かった時よりも、もっと驚いた。そして、腰を下ろして折ってしまったチングルマを思い出して、胸がぎゅうっと痛んだ。
(這比得知珍車有年輪的時候,更令勇感到驚訝了。然后他回想起被自己坐折的珍車,感到胸口一緊。)
「昔から立山では『一踏み十年』と言う言葉があるのです。」
(“從前在立山有句‘一踏十年’的古話。”)
松井さんは、靜かに勇に語りかけた。
(松井先生輕輕地對勇說道。)
「それは、『高山植物を踏みつけてしまうと、元のようになるには、十年以上もかかるよ。皆で気を付けよう?!护妊预悉ぱ匀~なのです。バスが通っていない昔は、山へ登ることが大変辛いことでした。自分の足だけがたよりですからね。それでも山へ登ると言うのは、山がとても好きだからなのです。山が好きな仲間はこれを合い言葉にして、皆で山の自然を守ってきたのですね。
(“這是‘踩了高山植物的話,要恢復(fù)原狀,要花十年以上。大家一起注意吧。’的口號。在從前還沒有巴士的時候,爬山非常辛苦。因為只能靠自己的腿爬上來。即便如此,爬山是因為愛山。喜歡山的同伴之間以此為口號,大家一起守護山中的自然。)
今は、バスで誰でも來ることが出來ます。そして沢山の人に、この大自然を味わってもらいたいと思います。しかし、中には平気で花を折ったり、踏みつけたりする人もいます。そんな人を見ると悲しくなります。そんな人は、なんのために山へ來たのかと思いますよ?!?/p>
(如今,誰都可以乘巴士來山上。我想讓眾多的人體會大自然。然而其中也有人毫不在乎地折花、踩踏??吹竭@種人我很難過。我會想這些人到底是為了什么來山上。”)
勇は、その言葉一つ一つに重みを感じていた。
(勇感到了他的每一句話中的沉重感。)


