舞い散るサクラに重ねる覚悟、良い流れを次代につなぐ——京都橘高校(下)

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「正解に一番近いところに導(dǎo)くのが部長の仕事」
春は別れの季節(jié)であると同時(shí)に、新しい始まりの季節(jié)でもある。
京都市にある私立京都橘高校吹奏楽部3年の竹內(nèi)望咲(みさき)は、新部長として2022年度を迎えた。望咲の擔(dān)當(dāng)楽器はフルート、入部のときに部員一人ひとりがもらうあだ名は「レンピー」だ。
校內(nèi)の桜並木から無數(shù)の花びらが舞い落ちているのが音楽室の窓から見えた。レンピーはその景色を、3月27?28日に大津市の滋賀県立蕓術(shù)劇場びわ湖ホールで開かれた定期演奏會(huì)のラストシーンに重ねていた。
クライマックスのステージでは、スイングジャズの名曲《シング?シング?シング》などを演奏しながら激しい動(dòng)きを繰り出すマーチングが続いていた。これを最後に卒部した當(dāng)時(shí)の3年生たちは、桜の花びらのように華麗に舞っていたのだ。

レンピーは小學(xué)4年で金管バンドに入り、中學(xué)校の吹奏楽部でフルートを吹き始めた。高校の志望校選びのため意中の公立校吹奏楽部の演奏を動(dòng)畫共有サイトで探していたとき、偶然巡り合ったのが京都橘高校のマーチング動(dòng)畫だった。
マーチングは演奏しながら行進(jìn)やパフォーマンスをする。京都橘はマーチングの名門で、全國大會(huì)である全日本マーチングコンテストの「常連」と言ってよい存在だ。鮮やかなオレンジ色の衣裝や激しい振り付け、大會(huì)での強(qiáng)さから「オレンジの悪魔」とも呼ばれる。
レンピーはこうした情報(bào)が頭に入っていたわけではない。オレンジの衣裝、手足を大きく動(dòng)かして激しく動(dòng)き回るパフォーマンス、迫力ある演奏……。そのすべてに目が釘付けになった。
「これは運(yùn)命の出會(huì)いやな! 私、絶対ここに入るんや!」
必死に両親を説得し、京都橘への進(jìn)學(xué)を認(rèn)めてもらった。

入學(xué)した2020年は新型コロナウイルスの影響で授業(yè)や部活がずっとストップし、部活に參加できたのは6月からだった。レンピーはやっと京都橘高校吹奏楽部の一員になれたことを喜んだが、厳しい練習(xí)が始まることへの不安もあった。
「これから毎日、泣きながら帰るようになるんやろか」
新入部員同士でそんな會(huì)話をしたことを覚えている。
実際には先輩たちは一生懸命教えてくれたし、優(yōu)しかった。顧問の兼城裕に対しては「部員一人ひとりを大切にしてくれるし、指導(dǎo)が熱い先生やな」という印象を持った。
京都橘の代名詞のような《シング?シング?シング》の振り付けを教わる段階では、レンピーは中學(xué)時(shí)代にマーチングの経験がなかったため、體力的にきつくなった。それでも、「自分がやりたかったことができている」という充実感が大きな支えになり、厳しい練習(xí)を乗り切っていった。
初めてオレンジの衣裝をもらったときはうれしくてたまらなかった。自宅の鏡の前で著てみて、「私、ホンマに『オレンジの悪魔』になったんやな」と喜びをかみ締めた。何度も家族に見せにいき、「もうええわ」とあきれられた。

2021年、高2となったレンピーは、前年は中止となったマーチングコンテストに出場できることになった。フルートパートの中でただひとり、フルートより1オクターブ上の音が出るピッコロを擔(dān)當(dāng)することになった。マーチングの広いフロアでもよく響く高音楽器だけに、ミスはできない。プレッシャーが大きかったが、練習(xí)を重ね、自信をつけていった。
京都橘は京都府大會(huì)、関西大會(huì)を突破し、6年ぶり16回目の全國大會(huì)に出場することになった。全國大會(huì)の會(huì)場は大阪城ホール。グリーンのシートが敷かれたフロアは、マーチングに打ち込む中高生の憧れの舞臺(tái)だ。
11月21日。25団體が出場する高校以上の部の11番目が京都橘だった。フロアへのドアが開き、目の前に「緑の床」が広がった。オレンジの衣裝を著た部員たちが楽器を手に元?dú)荬瑜wび出し、「緑の床」で「オレンジの悪魔」が鮮やかに舞った。
最後は《シング?シング?シング》だ。顔を上げて楽器を吹いたとき、レンピーは天井の照明が自分たちに降り注いでくるように感じた。
「橘の一員としてここに立てるなんてホンマ幸せや。みんなで最後まで楽しめて最高やったな!」
審査結(jié)果は金賞。京都橘にとっても、レンピーにとっても、大きな自信を得た大會(huì)だった。

時(shí)間は少しさかのぼるが、レンピーは全國大會(huì)前に次期部長に選ばれていた。
部長になることが決まってから、21年度部長の「スーチ」こと中村希星(きらら)と一緒に行動(dòng)し、部長の役割を観察したり、「ここはこうやるんだよ」と教えてもらったりした。
「部長って、部員たちが知らないところでこんなにいろんなことを考えたり、動(dòng)き回ったりしてくださっていたんやな……」
レンピーは、スーチやその前の代の部長に感謝した。と同時(shí)に、責(zé)任の重さを感じた。
「私の言葉ひとつで約90人の部員が動(dòng)くんや。自分の発言や行動(dòng)が京都橘全體に影響を與える。大変な役割や」
それでも、スーチの姿を見つめ、たくさんのアドバイスをもらううちに、部長としてやっていく覚悟は自然とできていった。
「やりたいことと実際にできること、理想と現(xiàn)実が必ずしも一致するわけやない。何がいちばん正解に近いのか、そこへ導(dǎo)いていくのが部長の仕事やな」
ぼんやりとではあるが、レンピーには進(jìn)むべき道が見え始めてきた。

3月28日の定期演奏會(huì)。最後のステージマーチングで、スーチたち3年生と《シング?シング?シング》を演奏した。自分たちと比べて、やはり3年生はパフォーマンスのキレも演奏も數(shù)段上に見えた。オーラも違う。
「すべての面で、私たちにとっての憧れや……」
先輩たちの目に涙が光るのが見え、レンピーの目も思わず潤んだ。
新年度を迎えた。もう先輩たちの姿はどこにもない。レンピーたちが最上級生となり、吹奏楽部を引っ張らなければならない。
全日本マーチングコンテスト金賞という昨年度の輝かしい実績は、レンピーたちにとって大きなプレッシャーだ。
「最高の結(jié)果を私たちに続く後輩たちにつないでいけるように。良い流れを作っていくのが私たちの代の役割なんや」
レンピーは目にぐっと力を込め、音楽室の前で舞う桜の花びらを見つめた。華やかに舞う無數(shù)の花びらに重ねたのは、1年後の自分たちの姿だ。(敬稱略)
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高校や中學(xué)校の吹奏楽部には、季節(jié)ごとのイベントや出來事があり、そのときどきの思いやストーリーが生まれます。吹奏楽作家?オザワ部長が全國を巡り、部員の心に寄り添い、エールを送る新シリーズです。
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オザワ部長 吹奏楽作家。神奈川県橫須賀市出身。早稲田大學(xué)第一文學(xué)部文蕓専修卒。自らの経験をいかして「みんなのあるある吹奏楽部」シリーズ(新紀(jì)元社)を執(zhí)筆。ペンネームの由來は「架空の吹奏楽部の部長」という設(shè)定から。2017年から22年3月まで朝日新聞デジタルで、吹奏楽に取り組む中高生を支える言葉とそれにまつわる物語をつづる「奏でるコトバ、響くココロ」を連載?!复底鄻S部アナザーストーリー」(上?下巻、KKベストセラーズ)として刊行。