14あなたの愛が正しいわ~
本專欄僅供學習和作為交流資料使用??

14 最強で最高
今思い返せば、夜會會場から出るとき、デイヴィスにエスコートされていたような気がする。
あまりに心がうわついていて、隣にいたはずのデイヴィスまで気が回らなかった。馬車の中で向かいの席に座るデイヴィスは何かを深く考えこんでいるようだ。
「ローザ……。夜會は楽しかったかい?」
「それは、もちろん! 公爵様とのダンス、とっても楽しかったわ」
私が笑顔で答えると、デイヴィスからは「そう」と返事が返ってくる。
「じゃあさ、今度は僕とも踴ろうよ」
「え?」
デイヴィスは、無理に笑みを作っているような不自然な表情を浮かべていた。
「あなたはダンスを踴らない主義でしょう? だったら、無理をしなくても……」
デイヴィスは、「君と一緒に踴りたいんだ!」と私の言葉をさえぎる。
「あら、そうなの?」
「そうなんだ!」
気が変わったのかなんなのか。私はきまぐれなデイヴィスの言葉にあきれてしまった。
「まぁ、でも、そうね。あなたと踴ったあとなら、いろんな方と踴れるから、それも良いかもね。わかったわ、次の夜會では踴りましょう」
私がデイヴィスに微笑みかけると、なぜかデイヴィスの頬が引きつる。
「……君は、僕と踴ったあとに、他の男とも踴るつもりなの?」
「ええ、そうよ?」
グラジオラス公爵のように『パートナー以外と踴りたくない』という人はまれで、夜會ではいろんな人とダンスを楽しむのが普通だった。
『もしかしたら、そこから広がるご縁があるかもしれない』と思うと、デイヴィスから自立したい私は嬉しくなる。
ニコニコしている私とは対照的に、デイヴィスの眉間にシワがよった。
「じゃあダメだ。やっぱり踴らない。君とは絶対に踴らない!」
なぜか急に怒り出したデイヴィスに驚いてしまう。つい先ほど、年上で落ち著いたグラジオラス公爵を見たせいか、デイヴィスがとても子どもっぽく見えた。
デイヴィスってこんな人だったかしら? と思い、思い返してみると、まぁそんな人だったような気もする。
今までの私は何を言われても、何をされても『デイヴィスが悪い』と思ったことがなかった?!簝?yōu)しい彼を怒らせてしまった私が悪いんだわ』と思い、いつも自分を責めていた。
でも、グラジオラス公爵夫妻を見たあとでは、それは間違いだったとわかる。
公爵夫妻は、思っていることをきちんと相手に伝えあっていた。それでも、お互いに納得できないところもあるようだったけど、それを踏まえた上で、夫妻が相手を大切に思っているのが伝わってきた。
そういうことをしてこなかったから、私とデイヴィスはお互いを思い合う夫婦になれなかったのだと今ならわかる。
外に愛人がいるであろうデイヴィスとは、もう何を話しあっても無理かもしれないけど、それでも私は今からでも彼に向き合おうと思った。
どうせ二年後には離婚される可能性が高いので、今の私に怖いものなんて何もない。それに、逆を言えば、二年間は何をしても彼は私と離婚することができない。だったらもう好きにさせてもらう。
私は、私から目を背けている不機嫌そうなデイヴィスに聲をかけた。彼は私を見なかったけど、そんなことはどうでもいい。
「デイヴィス、あなたのそういう気まぐれな態(tài)度、良くないわ」
そういうと、デイヴィスはようやく私を見た。青い瞳がこれでもかと見開いている。
「急に不機嫌になって黙り込まれるのも気分が悪いわ」
「なっ???」
驚きすぎて聲も出ないのか、デイヴィスは口をパクパクさせた。
その表情を見て、私は胸がスッとした。
「言いたいことを言うって気持ちが良いのね。これからは、私も思ったことを言わせてもらうわ」
うす暗い馬車の中でもわかるくらい、デイヴィスは怒りで顔を赤くしている。デイヴィスににらまれても少しも怖くない。なぜなら、どれだけ怒ってもデイヴィスは、決して女性に手を上げないから。
今までずっとデイヴィスだけを見つめて追いかけてきた私だからこそ、彼のそういう良いところも知っていた。
それにしても、相手に嫌われても好かれてもどうでも良いって、最高で最強だと思う。
私は、デイヴィスの機嫌をとることなく、視線をそらすと窓の外に浮かぶ月を見上げた。
馬車をどこまで走らせても、あとをついてくる月は、簡単には切ることができない夫婦の縁のようだと思った。
