花人局 さよならを置いて僕に花もたせ 覚束(おぼつか)ぬままに夜が明けて 誰もいない部屋で起きた その溫もり一つ殘して 昨日の夜のことは少しも覚えてないけれど 他に誰かが居た、そんな気がただしている 二日酔(ふつかよ)いが殘る 頭は回っちゃいないけれど わからないままでもまぁ、 それはそれでも綺麗だ 洗面臺の歯(は)ブラシ、誰かのコップ、 棚(たな)の化粧水 覚えのない物(もの)ばかりだ 枕(まくら)は花の匂いがする さよならを置いて僕に花もたせ 覚束ぬままに夜が明けて 誰もいない部屋で起きる その溫もり一つ殘して 昨日の夜のことはそこまで覚えてないけれど 美人局(つつもたせ)を疑(うたが)う、 そんな気もしないでいる 二日酔(ふつかよ)いも醒(さ)めた 頭で考えていたけど、 わからないままでもいい むしろその方がいい 窓際(まどぎわ)咲くラベンダー、 汚(よご)れたシンク、 編(あ)み掛(か)けのマフラー、 覚えのない事ばかりだ 部屋には春の匂いがする 浮雲(yún)(うきぐも)摑(つか)むような花人局 誰も來ないまま日が暮れて 夕陽の差した窓一つ 何も知らない僕を殘して 昨日の夜のことも本當(dāng)は少し覚えてるんだ 貴方の居ない暮らし、それが続くことも 今でもこの頭一つで考えているばかり 花一つ持たせて消えた貴方のこと 明日にはきっと戻ってくる 何気(げ)ない顔で帰ってくる 今にドアが開(ひら)いて聞こえる ごめんね、遅(おそ)くなったって 言葉だけをずっと待っている 夕焼けをじっと待っている 忘れてしまう前に花描け 今日も一人また夜が來て 誰もいない部屋で眠る その溫もり、僕に殘して 馬鹿みたいに愛は花もたせ この部屋にもまた春が來て 貴方のいない街を生きる その溫もり、僕に殘して 僕にひとつ、花を殘して 言葉だけをずっと待っている 夕焼けをじっと待っている