假于物(漢文練習(xí))
假于物
夫人之于世也困矣。皮不足以禦風(fēng)寒,爪不足以敵禽獸,力不足以裂金石,身不足以免百疾。然而可禦風(fēng)寒,敵禽獸,裂金石,免百疾者,何也?非生而能之,善假于物也。
以物爲(wèi)器,猿亦知之,然世之至善者,未聞?dòng)谐苏咭?。草木生乎林,獸知食之,知藥之,而不知取其精而爲(wèi)藥也。煤、烷生乎地中,獸不知何以用,而人知采而燃之也。沙,至賤者也,人能以爲(wèi)光纖,而蠍、蛇、兔、鼠之類,雖纍世是居,彼安知之?
故人之興也,雖仰群之力,而善假于物,亦要條之一也。能于似無用之自然,見實(shí)有用之原材,此非人之所以貴乎?月無大氣,而木星之氣也多,金星之大氣也厚,火星之表也酷寒,此非林之艸木,地之煤烷,沙磧之沙乎?今者地上諸國(guó),悉以侵、攻、陵、霸爲(wèi)務(wù),欣欣然他損而自利,此豈勝于群獸爭(zhēng)于礦上,徒求腐鼠乎?若文教千年,猶唯蠍、蛇、兔、鼠是效,則我眾皆將徒臥沙穴以期朽耳,又焉知爲(wèi)人之樂哉!
物に假(か)る??(書下文)
夫(それ)人の世に于(お)きてや、困ずるなり。皮を以て風(fēng)寒を禦(ふせ)ぐに足らざり、爪を以て禽獸に敵ふに足らざり、力を以て金石を裂くに足らざり、身を以て百疾(はくしつ)を免(まぬか)るるに足らず。然而(しかれども)風(fēng)寒を禦ぎ、禽獸に敵ひ、金石を裂き、百疾を免る可き者、何なりぞや?生まれて之を能くするに非ざり、善く物に假(か)ればなり。物を以て器に爲(wèi)(な)すこと、猿も亦之を知れども、然し世の至りて善くする者、未だ人を超えらるる者有ると聞かえざるなり。草木は林に生(は)え、獸は之を食ふこと知り、之を藥とすること知り、而(しかく)して其の精を取りて藥と爲(wèi)(な)すこと知らず。煤(ばい)、烷(くわん、alkane)は地の中に生え、獸は何を以て用うること知らざり、而して人は之を采りて燃やすこと知るなり。砂は、至りて賤しき者なれども、人は采りて光纖(くわうせん)と爲(wèi)せども、而して蠍、蛇、兔、鼠の類は、纍世(るいせい)是(ここ)にゐると雖(いへど)も、彼らは安(いづく)にぞ之を知らんや?
故(ゆゑ)に人の興るや、群れの力を仰(あふ)ぐと雖も、善く物に假(か)ること、亦要條(ようじゃう)の一つなり。無用に似るの自然に、實(shí)に有用なる原材を見ゆること、此れ人の貴(たふと)き所以(ゆゑ)に非ずや?月に大氣無く、而(しか)も木星の氣や尤(こと)に多く、金星の大氣や尤に厚く、火星の表や酷く寒けれども、此れは林の草木、地の煤(ばい)烷(くわん、alkane)、砂磧(させき)の砂に非ずや?今者(いまに)地上の諸國(guó)、悉(ことごと)く侵すこと、攻むること、陵ぐこと、霸することを以て務(wù)めとし、欣欣然(きんきんぜん)として他を損なひて自ら利をして、此れ豈に群獸の礦上に爭(zhēng)ひ、徒(いたづら)に腐鼠(ふそ)を求むるに勝(まさ)らんや?若し文教は千年あれども、猶唯(なほただ)蠍、蛇、兔、鼠に是れを效(なら)はば、則ち我が眾皆將(まさ)に徒だ沙の穴に臥すことを以て朽ちんと期するのみ、又焉(いづく)にぞ人と爲(wèi)すの樂しみを知る哉?
光纖:光學(xué)纖維(くわうがくせんゐ、こうがくせんい)の略。
砂磧:砂漠。
群獸:獸の群れ。
百疾:百種の病氣。廣くて色々な病氣にも指す。
要條:必要條件。
欣欣然:「欣然」の強(qiáng)調(diào)。
我眾:我等、我々。
霸する:制霸する、爭(zhēng)霸する。