【詩歌分享】1.1あきビンを選る人の唄
どのビンにも、どこか
みおぼえがあるようだが、
せんかたないことながら
どうもはっきりわからない。
いかついビンも
肩をおとしたのも
どのあきビンも
ラベルが剝がれ
底に、雨水が溜っていたり
泥でよごれ
口が缺け、
その底がぬけていたり、
吸いかけの卷煙草を耳に挾んで
數えるひとは
ビンを選りわけ、
割れを 片寄せ、
出生のおなじものを
一列にならべる。
なかま同士は
かちゃかちゃとふれあい、
どぶ川がしたをながれる
あぶない河岸っぷちに立って、
もう一度
點呼を待つ。
これからなにごとが始まるのか、
これで なにかが終ったのか、
ビンは知らない。
人間とおなじように。
ビンはビンづれと
一口に言っても
となりあうことは
とかく鬱陶(うっとう)しい。
ぱっとしない人間と
つきのよくない人間とが
袖すりあっても
ことばもかけたくないとおなじで
ビンとビンとがふれあって、
立てる音さえいまいましく、
こん畜生!
割れてしまえ、とおもう。
ビンが、敵(かたき)の末のように
互いにあたりちらすのは
形がよく似たうえに
辿ってきた運命もおなじだからだ。
きょうも 空地の日だまりの
薊蒲公英(あざみたんぽぽ)の根がしがみついた
石炭殻を捨てる空地の崖ふちに
あのビン、このビンの勢揃い。

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