娘ギツネの恩返し
むかしむかし、山形県のある村に、熊蔵(くまぞう)と男がいました。
ある年の暮れ、熊蔵が町でお正月料理の魚(yú)や昆布を買(mǎi)った帰り道、林の中から美しい娘が飛び出して來(lái)て言いました。
「わたしは、この林に住むキツネの娘です。母親が病気で死にそうなので、その魚(yú)を一匹、どうかめぐんでくださりませんか?」
キツネと聞いてびっくりしましたが、心優(yōu)しい熊蔵は背負(fù)っていた新巻鮭を取り出すと、
「こんな物しかないが、病気のお母さんに食べさせてあげなさい」
と、その新巻鮭を娘にやりました。
「ありがとうございます。このご恩は、必ずお返しします。正月の五日の夕方に、またここへいらしてください」
娘はそう言うと、林の中へ消えていきました。
さて、約束の一月五日の夕方、熊蔵がキツネの娘と出會(huì)ったところへ行くと、娘が美しい身なりで現(xiàn)れて、何度も頭を下げながら熊蔵に母ギツネの病気がよくなった事を伝えました。そして、
「わたしは、このまま人間の娘の姿でおりますから、三年間だけ、どこかのお店で働かせてください。わたしを売ったお金は、熊蔵さんに全部差し上げますから」
と、言うのです。
しかし熊蔵は、首を橫に振って言いました。
「いいや、魚(yú)一匹ぐらいで、そんな事をしてもらうわけにはいかないよ。恩返しはいいから、母のところへお帰りなさい」
「いいえ。受けたご恩を返さなければ、私は母にしかられます。どうかお願(yuàn)いです。わたしをどこかのお店で」
「しかし???」
「お願(yuàn)いです」
娘が何度も何度も言うので、熊蔵は娘を町の大きな料理屋へ連れて行きました。
すると料理屋の主人は、その娘の美しさにびっくりです。
そこで主人は、十両で娘をやとってくれました。
それからしばらくたったある日、その料理屋に大阪から商人がやって來(lái)たのですが、美しい娘を一目見(jiàn)るなり言いました。
「実は、大阪の大金持ちの一人息子が、大暴れをして困っておるそうだ。この美しい娘がおれば、一人息子の気もおさまるだろう。どうかわたしと一緒に、大阪へ來(lái)て欲しい」
そして商人は料理やの主人に百二十両の大金を支払って、娘を大阪へ連れて行きました。
さて、大阪に大金持ちの家にやって來(lái)た娘は、一人息子を一目見(jiàn)ると家の人たちに言いました。
「息子さんの病気を、治してさしあげます。ですから、息子さんと二人だけにしてください」
そして娘は息子と二人で蔵の中に入ると、息子をキッとにらみつけて言いました。
「さあ、お前の正體はわかっているよ! いったい、どこのキツネがついているんだい!」
すると息子は、おどおどながら言いました。
「こっ、ここの庭にまつられている、稲荷です」
「ふーん。しかし、家にまつられている神が、なぜその家の人たちを苦しめるんだい」
「はっ、はい。実はこの家はケチで、供え物が少ないんです。それで頭にきて屋敷のニワトリを食ったら、家の人に煮え湯をかけられて殺されました。だから死神のキツネになって、息子に取りついて、死ぬまで苦しめてやる事にしたのです」
「そうかい。じゃあ、わたしが家の主人に言って、お供え物を増やしてもらうから、もう悪さをするんじゃないよ」
「はっ、はい。お願(yuàn)いします」
さっそく娘は屋敷の主人にこの話をして、お供え物を増やしてもらいました。
するととたんに、息子は元のやさしい若者に戻ったのです。
「おおっ、息子が元に戻った。ありがとう。本當(dāng)にありがとう」
主人はとても喜んで、お禮に千両という大金をくれました。
それから娘は主人が用意してくれた立派なかごにのって故郷に帰り、熊蔵にたくさんのお禮をしたそうです。
おしまい