20230622_こんにゃくえんま

こんにゃくえんま
むかしむかし、ある村に、えんま大王をまつったお堂がありました。
えんま大王は死んだ人間の罪をさばく、地獄(じごく)の恐ろしい王さまです。
このお堂のえんま大王も、金色の目をむいて、大きな口をクワーッと開けて、すごい顔でにらんでいます。
見ただけでも恐ろしいものだから、あまりお參りの人も來ませんでした。
ところがこのえんま堂に、雨が降っても風が吹いても、一日もかかさずお參りに來るおばあさんがいました。
このおばあさんは両方とも目が見えないので、孫の小さな女の子に手を引かせて來るのでした。
お彼岸(ひがん→春分?秋分の日を中日として、その前後7日間)のある日。
お參りに來たおばあさんは、いつもの様にえんまさまの前に座ります。
孫の女の子はえんまさまが怖いので、おばあさんの後ろに隠れていました。
「なんまいだー。なんまいだー。おじひ深いえんまさま。どうぞあなたさまのお力で、このババの目を治してくだされ」
おばあさんは繰り返し繰り返し、えんまさまの前でおじぎをしました。
えんま大王も、こうして毎日毎日おがまれると、聲をかけずにいられません。
「これ、ババよ。お前の願いを聞いてとらす。信心(しんじん→神仏をしんこうすること)してくれたお禮に、わしの片目をしんぜよう」
えんまさまが口を聞いたので、おばあさんはビックリして上を向きました。
すると、
「ありゃ! 見える、見える。あたりがよう見える!」
おばあさんの右の目が、パッと開いたのです。
おばあさんが大喜びしていると、女の子が叫びました。
「あっ、えんまさまの目が一つない」
おばあさんが見てみると、確かにえんまさまの目が一つ潰れています。
おばあさんは、ポロポロと涙を流して言いました。
「ああ、申し訳ない。えんまさまをかたわ(→不完全なこと)にして、わしが見えるようになるとは。ああ、もったいない、もったいない」
すると、片目のえんまさまが言いました。
「まあ、そう心配せんでもいい。
わしはお前たちとちごうて、別に働かなくてはならんということもない。
ただここにこうしておるぶんには、片目でもじゅうぶんじゃ」
「へえ、もったいない。ところで何か、お禮をさせていただきとうございますが」
「お禮か。???いや、そんなものはいらぬ」
「いいえ、そうおっしゃらずにどうぞ。わたしに出來ます事を、させてくださいまし」
「???さようか。それでは、こんにゃくを供えてくれ。わしは、こんにゃくが大好きでな」
それからおばあさんは、毎日毎日、えんまさまにこんにゃくをお供えしました。
その事が村で評判になって、えんまさまは『こんにゃくえんま』と呼ばれるようになりました。
それからはお參りの人も増えて、毎月の縁日(えんにち)には境內(けいだい→社寺のしきち)に、こんにゃくおでんの店がズラリと並ぶようになったのです。
おしまい