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日語(yǔ)《我是貓》第六章

2022-12-28 12:46 作者:日本異文化  | 我要投稿

六 こう暑くては貓といえどもやり切れない。皮を脫いで、肉を脫いで骨だけで涼みたいものだと英吉利イギリスのシドニー?スミスとか云う人が苦しがったと云う話があるが、たとい骨だけにならなくとも好いから、せめてこの淡灰色の斑入ふいりの毛衣けごろもだけはちょっと洗い張りでもするか、もしくは當(dāng)分の中うち質(zhì)にでも入れたいような気がする。人間から見(jiàn)たら貓などは年が年中同じ顔をして、春夏秋冬一枚看板で押し通す、至って単純な無(wú)事な銭ぜにのかからない生涯しょうがいを送っているように思われるかも知れないが、いくら貓だって相応に暑さ寒さの感じはある。たまには行水ぎょうずいの一度くらいあびたくない事もないが、何しろこの毛衣の上から湯を使った日には乾かすのが容易な事でないから汗臭いのを我慢してこの年になるまで洗湯の暖簾のれんを潛くぐった事はない。折々は団扇うちわでも使って見(jiàn)ようと云う気も起らんではないが、とにかく握る事が出來(lái)ないのだから仕方がない。それを思うと人間は贅沢ぜいたくなものだ。なまで食ってしかるべきものをわざわざ煮て見(jiàn)たり、焼いて見(jiàn)たり、酢すに漬つけて見(jiàn)たり、味噌みそをつけて見(jiàn)たり好んで余計(jì)な手?jǐn)?shù)てすうを懸けて御互に恐悅している。著物だってそうだ。貓のように一年中同じ物を著通せと云うのは、不完全に生れついた彼等にとって、ちと無(wú)理かも知れんが、なにもあんなに雑多なものを皮膚の上へ載のせて暮さなくてもの事だ。羊の御厄介になったり、蠶かいこの御世話になったり、綿畠の御情おなさけさえ受けるに至っては贅沢ぜいたくは無(wú)能の結(jié)果だと斷言しても好いくらいだ。衣食はまず大目に見(jiàn)て勘弁するとしたところで、生存上直接の利害もないところまでこの調(diào)子で押して行くのは毫ごうも合點(diǎn)がてんが行かぬ。第一頭の毛などと云うものは自然に生えるものだから、放ほうっておく方がもっとも簡(jiǎn)便で當(dāng)人のためになるだろうと思うのに、彼等は入らぬ算段をして種々雑多な恰好かっこうをこしらえて得意である。坊主とか自稱(chēng)するものはいつ見(jiàn)ても頭を青くしている。暑いとその上へ日傘をかぶる。寒いと頭巾ずきんで包む。これでは何のために青い物を出しているのか主意が立たんではないか。そうかと思うと櫛くしとか稱(chēng)する無(wú)意味な鋸様のこぎりようの道具を用いて頭の毛を左右に等分して嬉しがってるのもある。等分にしないと七分三分の割合で頭蓋骨ずがいこつの上へ人為的の區(qū)劃くかくを立てる。中にはこの仕切りがつむじを通り過(guò)して後うしろまで食はみ出しているのがある。まるで贋造がんぞうの芭蕉葉ばしょうはのようだ。その次には脳天を平らに刈って左右は真直に切り落す。丸い頭へ四角な枠わくをはめているから、植木屋を入れた杉垣根の寫(xiě)生としか受け取れない。このほか五分刈、三分刈、一分刈さえあると云う話だから、しまいには頭の裏まで刈り込んでマイナス一分刈、マイナス三分刈などと云う新奇な奴が流行するかも知れない。とにかくそんなに憂身うきみを窶やつしてどうするつもりか分らん。第一、足が四本あるのに二本しか使わないと云うのから贅沢だ。四本であるけばそれだけはかも行く訳だのに、いつでも二本ですまして、殘る二本は到來(lái)の棒鱈ぼうだらのように手持無(wú)沙汰にぶら下げているのは馬鹿馬鹿しい。これで見(jiàn)ると人間はよほど貓より閑ひまなもので退屈のあまりかようないたずらを考案して楽んでいるものと察せられる。ただおかしいのはこの閑人ひまじんがよると障さわると多忙だ多忙だと觸れ廻わるのみならず、その顔色がいかにも多忙らしい、わるくすると多忙に食い殺されはしまいかと思われるほどこせついている。彼等のあるものは吾輩を見(jiàn)て時(shí)々あんなになったら気楽でよかろうなどと云うが、気楽でよければなるが好い。そんなにこせこせしてくれと誰(shuí)も頼んだ訳でもなかろう。自分で勝手な用事を手に負(fù)えぬほど製造して苦しい苦しいと云うのは自分で火をかんかん起して暑い暑いと云うようなものだ。貓だって頭の刈り方を二十通りも考え出す日には、こう気楽にしてはおられんさ。気楽になりたければ吾輩のように夏でも毛衣けごろもを著て通されるだけの修業(yè)をするがよろしい。――とは云うものの少々熱い。毛衣では全く熱あつ過(guò)ぎる。 これでは一手専売の晝寢も出來(lái)ない。何かないかな、永らく人間社會(huì)の観察を怠おこたったから、今日は久し振りで彼等が酔興に齷齪あくせくする様子を拝見(jiàn)しようかと考えて見(jiàn)たが、生憎あいにく主人はこの點(diǎn)に関してすこぶる貓に近い性分しょうぶんである。晝寢は吾輩に劣らぬくらいやるし、ことに暑中休暇後になってからは何一つ人間らしい仕事をせんので、いくら観察をしても一向いっこう観察する張合がない。こんな時(shí)に迷亭でも來(lái)ると胃弱性の皮膚も幾分か反応を呈して、しばらくでも貓に遠(yuǎn)ざかるだろうに、先生もう來(lái)ても好い時(shí)だと思っていると、誰(shuí)とも知らず風(fēng)呂場(chǎng)でざあざあ水を浴びるものがある。水を浴びる音ばかりではない、折々大きな聲で相の手を入れている。「いや結(jié)構(gòu)」「どうも良い心持ちだ」「もう一杯」などと家中うちじゅうに響き渡るような聲を出す。主人のうちへ來(lái)てこんな大きな聲と、こんな無(wú)作法ぶさほうな真似をやるものはほかにはない。迷亭に極きまっている。 いよいよ來(lái)たな、これで今日半日は潰つぶせると思っていると、先生汗を拭ふいて肩を入れて例のごとく座敷までずかずか上って來(lái)て「奧さん、苦沙彌くしゃみ君はどうしました」と呼ばわりながら帽子を畳の上へ拋ほうり出す。細(xì)君は隣座敷で針箱の側(cè)そばへ突っ伏して好い心持ちに寢ている最中にワンワンと何だか鼓膜へ答えるほどの響がしたのではっと驚ろいて、醒さめぬ眼をわざと睜みはって座敷へ出て來(lái)ると迷亭が薩摩上布さつまじょうふを著て勝手な所へ陣取ってしきりに扇使いをしている。 「おやいらしゃいまし」と云ったが少々狼狽ろうばいの気味で「ちっとも存じませんでした」と鼻の頭へ汗をかいたまま御辭儀をする?!袱いā⒔駚?lái)たばかりなんですよ。今風(fēng)呂場(chǎng)で御三おさんに水を掛けて貰ってね。ようやく生き帰ったところで――どうも暑いじゃありませんか」「この両三日りょうさんちは、ただじっとしておりましても汗が出るくらいで、大変御暑うございます。――でも御変りもございませんで」と細(xì)君は依然として鼻の汗をとらない?!袱ààⅳ辘趣?。なに暑いくらいでそんなに変りゃしませんや。しかしこの暑さは別物ですよ。どうも體がだるくってね」「私わたくしなども、ついに晝寢などを致した事がないんでございますが、こう暑いとつい――」「やりますかね。好いですよ。晝寢られて、夜寢られりゃ、こんな結(jié)構(gòu)な事はないでさあ」とあいかわらず呑気のんきな事を並べて見(jiàn)たがそれだけでは不足と見(jiàn)えて「私わたしなんざ、寢たくない、質(zhì)たちでね??嗌硰浘胜嗓韦瑜Δ藖?lái)るたんびに寢ている人を見(jiàn)ると羨うらやましいですよ。もっとも胃弱にこの暑さは答えるからね。丈夫な人でも今日なんかは首を肩の上に載のせてるのが退儀でさあ。さればと云って載ってる以上はもぎとる訳にも行かずね」と迷亭君いつになく首の処置に窮している?!笂Wさんなんざ首の上へまだ載っけておくものがあるんだから、坐っちゃいられないはずだ。髷まげの重みだけでも橫になりたくなりますよ」と云うと細(xì)君は今まで寢ていたのが髷の恰好かっこうから露見(jiàn)したと思って「ホホホ口の悪い」と云いながら頭をいじって見(jiàn)る。 迷亭はそんな事には頓著なく「奧さん、昨日きのうはね、屋根の上で玉子のフライをして見(jiàn)ましたよ」と妙な事を云う?!弗榨楗い颏嗓Δ胜丹盲郡螭扦搐钉い蓼埂埂肝莞瓮撙ⅳ蓼暌?jiàn)事に焼けていましたから、ただ置くのも勿體ないと思ってね。バタを溶かして玉子を落したんでさあ」「あらまあ」「ところがやっぱり天日てんぴは思うように行きませんや。なかなか半熟にならないから、下へおりて新聞を読んでいると客が來(lái)たもんだからつい忘れてしまって、今朝になって急に思い出して、もう大丈夫だろうと上って見(jiàn)たらね」「どうなっておりました」「半熟どころか、すっかり流れてしまいました」「おやおや」と細(xì)君は八の字を寄せながら感嘆した。 「しかし土用中あんなに涼しくって、今頃から暑くなるのは不思議ですね」「ほんとでございますよ。せんだってじゅうは単衣ひとえでは寒いくらいでございましたのに、一昨日おとといから急に暑くなりましてね」「蟹かになら橫に這はうところだが今年の気候はあとびさりをするんですよ。倒行とうこうして逆施げきしすまた可ならずやと云うような事を言っているかも知れない」「なんでござんす、それは」「いえ、何でもないのです。どうもこの気候の逆戻りをするところはまるでハーキュリスの牛ですよ」と図に乗っていよいよ変ちきりんな事を言うと、果せるかな細(xì)君は分らない。しかし最前の倒行して逆施すで少々懲こりているから、今度はただ「へえー」と云ったのみで問(wèn)い返さなかった。これを問(wèn)い返されないと迷亭はせっかく持ち出した甲斐かいがない?!笂Wさん、ハーキュリスの牛を御存じですか」「そんな牛は存じませんわ」「御存じないですか、ちょっと講釈をしましょうか」と云うと細(xì)君もそれには及びませんとも言い兼ねたものだから「ええ」と云った?!肝簸啶伐烯`キュリスが牛を引っ張って來(lái)たんです」「そのハーキュリスと云うのは牛飼ででもござんすか」「牛飼じゃありませんよ。牛飼やいろはの亭主じゃありません。その節(jié)は希臘ギリシャにまだ牛肉屋が一軒もない時(shí)分の事ですからね」「あら希臘のお話しなの? そんなら、そうおっしゃればいいのに」と細(xì)君は希臘と云う國(guó)名だけは心得ている?!袱坤盲匹烯`キュリスじゃありませんか」「ハーキュリスなら希臘なんですか」「ええハーキュリスは希臘の英雄でさあ」「どうりで、知らないと思いました。それでその男がどうしたんで――」「その男がね奧さん見(jiàn)たように眠くなってぐうぐう寢ている――」「あらいやだ」「寢ている間まに、ヴァルカンの子が來(lái)ましてね」「ヴァルカンて何です」「ヴァルカンは鍛冶屋かじやですよ。この鍛冶屋のせがれがその牛を盜んだんでさあ。ところがね。牛の尻尾しっぽを持ってぐいぐい引いて行ったもんだからハーキュリスが眼を覚さまして牛やーい牛やーいと尋ねてあるいても分らないんです。分らないはずでさあ。牛の足跡をつけたって前の方へあるかして連れて行ったんじゃありませんもの、後うしろへ後うしろへと引きずって行ったんですからね。鍛冶屋のせがれにしては大出來(lái)ですよ」と迷亭先生はすでに天気の話は忘れている。 「時(shí)に御主人はどうしました。相変らず午睡ひるねですかね。午睡も支那人の詩(shī)に出てくると風(fēng)流だが、苦沙彌君のように日課としてやるのは少々俗気がありますね。何の事あない毎日少しずつ死んで見(jiàn)るようなものですぜ、奧さん御手?jǐn)?shù)おてすうだがちょっと起していらっしゃい」と催促すると細(xì)君は同感と見(jiàn)えて「ええ、ほんとにあれでは困ります。第一あなた、からだが悪るくなるばかりですから。今御飯をいただいたばかりだのに」と立ちかけると迷亭先生は「奧さん、御飯と云やあ、僕はまだ御飯をいただかないんですがね」と平気な顔をして聞きもせぬ事を吹聴ふいちょうする?!袱浃蓼?、時(shí)分どきだのにちっとも気が付きませんで――それじゃ何もございませんが御茶漬でも」「いえ御茶漬なんか頂戴しなくっても好いですよ」「それでも、あなた、どうせ御口に合うようなものはございませんが」と細(xì)君少々厭味を並べる。迷亭は悟ったもので「いえ御茶漬でも御湯漬でも御免蒙るんです。今途中で御馳走を誂あつらえて來(lái)ましたから、そいつを一つここでいただきますよ」ととうてい素人しろうとには出來(lái)そうもない事を述べる。細(xì)君はたった一言ひとこと「まあ!」と云ったがそのまあの中うちには驚ろいたまあと、気を悪るくしたまあと、手?jǐn)?shù)てすうが省けてありがたいと云うまあが合併している。 ところへ主人が、いつになくあまりやかましいので、寢つき掛った眠をさかに扱こかれたような心持で、ふらふらと書(shū)斎から出て來(lái)る?!赶鄩浃椁氦浃蓼筏つ肖馈¥护盲盲ば某证藢嫟瑜Δ趣筏郡趣长恧颉工惹飞旖护ⅳ婴蓼袱辘藖栱斆妞证盲沥绀Δ扭椁颏工?。「いや御目覚おめざめかね。鳳眠ほうみんを驚かし奉ってはなはだ相済まん。しかしたまには好かろう。さあ坐りたまえ」とどっちが客だか分らぬ挨拶をする。主人は無(wú)言のまま座に著いて寄木細(xì)工よせぎざいくの巻煙草まきたばこ入から「朝日」を一本出してすぱすぱ吸い始めたが、ふと向むこうの隅すみに転がっている迷亭の帽子に眼をつけて「君帽子を買(mǎi)ったね」と云った。迷亭はすぐさま「どうだい」と自慢らしく主人と細(xì)君の前に差し出す?!袱蓼⑵纣悿朗?。大変目が細(xì)かくって柔らかいんですね」と細(xì)君はしきりに撫で廻わす?!笂Wさんこの帽子は重寶ちょうほうですよ、どうでも言う事を聞きますからね」と拳骨げんこつをかためてパナマの橫ッ腹をぽかりと張り付けると、なるほど意のごとく拳こぶしほどな穴があいた。細(xì)君が「へえ」と驚く間まもなく、この度たびは拳骨を裏側(cè)へ入れてうんと突ッ張ると釜かまの頭がぽかりと尖とんがる。次には帽子を取って鍔つばと鍔とを両側(cè)から圧おし潰つぶして見(jiàn)せる。潰れた帽子は麺棒めんぼうで延のした蕎麥そばのように平たくなる。それを片端から蓆むしろでも巻くごとくぐるぐる畳む。「どうですこの通り」と丸めた帽子を懐中へ入れて見(jiàn)せる。「不思議です事ねえ」と細(xì)君は帰天斎正一きてんさいしょういちの手品でも見(jiàn)物しているように感嘆すると、迷亭もその気になったものと見(jiàn)えて、右から懐中に収めた帽子をわざと左の袖口そでぐちから引っ張り出して「どこにも傷はありません」と元のごとくに直して、人さし指の先へ釜の底を載のせてくるくると廻す。もう休やめるかと思ったら最後にぽんと後うしろへ放なげてその上へ堂どっさりと尻餅を突いた。「君大丈夫かい」と主人さえ懸念けねんらしい顔をする。細(xì)君は無(wú)論の事心配そうに「せっかく見(jiàn)事な帽子をもし壊こわしでもしちゃあ大変ですから、もう好い加減になすったら宜ようござんしょう」と注意をする。得意なのは持主だけで「ところが壊われないから妙でしょう」と、くちゃくちゃになったのを尻の下から取り出してそのまま頭へ載せると、不思議な事には、頭の恰好かっこうにたちまち回復(fù)する。「実に丈夫な帽子です事ねえ、どうしたんでしょう」と細(xì)君がいよいよ感心すると「なにどうもしたんじゃありません、元からこう云う帽子なんです」と迷亭は帽子を被ったまま細(xì)君に返事をしている。 「あなたも、あんな帽子を御買(mǎi)になったら、いいでしょう」としばらくして細(xì)君は主人に勧めかけた?!袱坤盲瓶嗌硰浘狭⑴嗓墅溵护啶铯椁闻虺证盲皮毪袱悚ⅳ辘蓼护螭埂袱趣长恧ⅳ胜?、せんだって小供があれを踏み潰つぶしてしまいまして」「おやおやそりゃ措しい[#「措しい」はママ]事をしましたね」「だから今度はあなたのような丈夫で奇麗なのを買(mǎi)ったら善かろうと思いますんで」と細(xì)君はパナマの価段ねだんを知らないものだから「これになさいよ、ねえ、あなた」としきりに主人に勧告している。 迷亭君は今度は右の袂たもとの中から赤いケース入りの鋏はさみを取り出して細(xì)君に見(jiàn)せる?!笂Wさん、帽子はそのくらいにしてこの鋏を御覧なさい。これがまたすこぶる重寶ちょうほうな奴で、これで十四通りに使えるんです」この鋏が出ないと主人は細(xì)君のためにパナマ責(zé)めになるところであったが、幸に細(xì)君が女として持って生れた好奇心のために、この厄運(yùn)やくうんを免まぬかれたのは迷亭の機(jī)転と云わんよりむしろ僥倖ぎょうこうの仕合せだと吾輩は看破した?!袱饯武eがどうして十四通りに使えます」と聞くや否や迷亭君は大得意な調(diào)子で「今一々説明しますから聞いていらっしゃい。いいですか。ここに三日月形みかづきがたの欠け目がありましょう、ここへ葉巻を入れてぷつりと口を切るんです。それからこの根にちょと細(xì)工がありましょう、これで針金をぽつぽつやりますね。次には平たくして紙の上へ橫に置くと定規(guī)じょうぎの用をする。また刃はの裏には度盛どもりがしてあるから物指ものさしの代用も出來(lái)る。こちらの表にはヤスリが付いているこれで爪を磨すりまさあ。ようがすか。この先さきを螺旋鋲らせんびょうの頭へ刺し込んでぎりぎり廻すと金槌かなづちにも使える。うんと突き込んでこじ開(kāi)けると大抵の釘付くぎづけの箱なんざあ苦もなく蓋ふたがとれる。まった、こちらの刃の先は錐きりに出來(lái)ている。ここん所とこは書(shū)き損いの字を削けずる場(chǎng)所で、ばらばらに離すと、ナイフとなる。一番しまいに――さあ奧さん、この一番しまいが大変面白いんです、ここに蠅はえの眼玉くらいな大きさの球たまがありましょう、ちょっと、覗のぞいて御覧なさい」「いやですわまたきっと馬鹿になさるんだから」「そう信用がなくっちゃ困ったね。だが欺だまされたと思って、ちょいと覗いて御覧なさいな。え? 厭いやですか、ちょっとでいいから」と鋏はさみを細(xì)君に渡す。細(xì)君は覚束おぼつかなげに鋏を取りあげて、例の蠅の眼玉の所へ自分の眼玉を付けてしきりに覘ねらいをつけている。「どうです」「何だか真黒ですわ」「真黒じゃいけませんね。も少し障子の方へ向いて、そう鋏を?qū)嫟丹氦栓D―そうそうそれなら見(jiàn)えるでしょう」「おやまあ寫(xiě)真ですねえ。どうしてこんな小さな寫(xiě)真を張り付けたんでしょう」「そこが面白いところでさあ」と細(xì)君と迷亭はしきりに問(wèn)答をしている。最前から黙っていた主人はこの時(shí)急に寫(xiě)真が見(jiàn)たくなったものと見(jiàn)えて「おい俺にもちょっと覧みせろ」と云うと細(xì)君は鋏を顔へ押し付けたまま「実に奇麗です事、裸體の美人ですね」と云ってなかなか離さない?!袱い沥绀盲扔?jiàn)せと云うのに」「まあ待っていらっしゃいよ。美くしい髪ですね。腰までありますよ。少し仰向あおむいて恐ろしい背せいの高い女だ事、しかし美人ですね」「おい御見(jiàn)せと云ったら、大抵にして見(jiàn)せるがいい」と主人は大おおいに急せき込んで細(xì)君に食って掛る?!袱丐ㄓh(yuǎn)さま、たんと御覧遊ばせ」と細(xì)君が鋏を主人に渡す時(shí)に、勝手から御三おさんが御客さまの御誂おあつらえが參りましたと、二個(gè)の笊蕎麥ざるそばを座敷へ持って來(lái)る。 「奧さんこれが僕の自弁じべんの御馳走ですよ。ちょっと御免蒙って、ここでぱくつく事に致しますから」と叮嚀ていねいに御辭儀をする。真面目なような巫山戯ふざけたような動(dòng)作だから細(xì)君も応対に窮したと見(jiàn)えて「さあどうぞ」と軽く返事をしたぎり拝見(jiàn)している。主人はようやく寫(xiě)真から眼を放して「君この暑いのに蕎麥そばは毒だぜ」と云った?!袱胜ⅳ舜笳煞?、好きなものは滅多めったに中あたるもんじゃない」と蒸籠せいろの蓋ふたをとる。「打ち立てはありがたいな。蕎麥そばの延びたのと、人間の間まが抜けたのは由來(lái)たのもしくないもんだよ」と薬味やくみをツユの中へ入れて無(wú)茶苦茶に掻かき廻わす?!妇饯螭胜松娇铯丹婴蛉毪欷毪刃沥椁い肌工戎魅摔闲呐浃饯Δ俗⒁猡筏俊!甘w麥はツユと山葵で食うもんだあね。君は蕎麥が嫌いなんだろう」「僕は饂飩うどんが好きだ」「饂飩は馬子まごが食うもんだ。蕎麥の味を解しない人ほど気の毒な事はない」と云いながら杉箸すぎばしをむざと突き込んで出來(lái)るだけ多くの分量を二寸ばかりの高さにしゃくい上げた?!笂Wさん蕎麥を食うにもいろいろ流儀がありますがね。初心しょしんの者に限って、無(wú)暗むやみにツユを著けて、そうして口の內(nèi)でくちゃくちゃやっていますね。あれじゃ蕎麥の味はないですよ。何でも、こう、一ひとしゃくいに引っ掛けてね」と云いつつ箸を上げると、長(zhǎng)い奴が勢(shì)揃せいぞろいをして一尺ばかり空中に釣るし上げられる。迷亭先生もう善かろうと思って下を見(jiàn)ると、まだ十二三本の尾が蒸籠の底を離れないで簀垂すだれの上に纏綿てんめんしている?!袱长い膜祥L(zhǎng)いな、どうです奧さん、この長(zhǎng)さ加減は」とまた奧さんに相の手を要求する。奧さんは「長(zhǎng)いものでございますね」とさも感心したらしい返事をする。「この長(zhǎng)い奴へツユを三分一さんぶいちつけて、一口に飲んでしまうんだね。噛かんじゃいけない。噛んじゃ蕎麥の味がなくなる。つるつると咽喉のどを滑すべり込むところがねうちだよ」と思い切って箸はしを高く上げると蕎麥はようやくの事で地を離れた。左手ゆんでに受ける茶碗の中へ、箸を少しずつ落して、尻尾の先からだんだんに浸ひたすと、アーキミジスの理論によって、蕎麥の浸つかった分量だけツユの嵩かさが増してくる。ところが茶碗の中には元からツユが八分目這入はいっているから、迷亭の箸にかかった蕎麥の四半分しはんぶんも浸つからない先に茶碗はツユで一杯になってしまった。迷亭の箸は茶碗を去さる五寸の上に至ってぴたりと留まったきりしばらく動(dòng)かない。動(dòng)かないのも無(wú)理はない。少しでも卸おろせばツユが溢こぼれるばかりである。迷亭もここに至って少し躕躇ちゅうちょの體ていであったが、たちまち脫兎だっとの勢(shì)を以て、口を箸の方へ持って行ったなと思う間まもなく、つるつるちゅうと音がして咽喉笛のどぶえが一二度上下じょうげへ?zé)o理に動(dòng)いたら箸の先の蕎麥は消えてなくなっておった。見(jiàn)ると迷亭君の両眼から涙のようなものが一二滴眼尻めじりから頬へ流れ出した。山葵わさびが利きいたものか、飲み込むのに骨が折れたものかこれはいまだに判然しない?!父行膜坤胜ⅰ¥瑜饯螭胜艘护嗓孙嫟咿zめたものだ」と主人が敬服すると「御見(jiàn)事です事ねえ」と細(xì)君も迷亭の手際てぎわを激賞した。迷亭は何にも云わないで箸を置いて胸を二三度敲たたいたが「奧さん笊ざるは大抵三口半か四口で食うんですね。それより手?jǐn)?shù)てすうを掛けちゃ旨うまく食えませんよ」とハンケチで口を拭いてちょっと一息入れている。 ところへ寒月君が、どう云う了見(jiàn)りょうけんかこの暑いのに御苦労にも冬帽を被かぶって両足を埃ほこりだらけにしてやってくる?!袱い浜媚凶婴斡雭?lái)ごにゅうらいだが、喰い掛けたものだからちょっと失敬しますよ」と迷亭君は衆(zhòng)人環(huán)座しゅうじんかんざの裏うちにあって臆面おくめんもなく殘った蒸籠を平たいらげる。今度は先刻さっきのように目覚めざましい食方もしなかった代りに、ハンケチを使って、中途で息を入れると云う不體裁もなく、蒸籠せいろ二つを安々とやってのけたのは結(jié)構(gòu)だった。 「寒月君博士論文はもう脫稿するのかね」と主人が聞くと迷亭もその後あとから「金田令嬢がお待ちかねだから早々そうそう呈出ていしゅつしたまえ」と云う。寒月君は例のごとく薄気味の悪い笑を洩もらして「罪ですからなるべく早く出して安心させてやりたいのですが、何しろ問(wèn)題が問(wèn)題で、よほど労力の入いる研究を要するのですから」と本気の沙汰とも思われない事を本気の沙汰らしく云う?!袱饯Δ祮?wèn)題が問(wèn)題だから、そう鼻の言う通りにもならないね。もっともあの鼻なら充分鼻息をうかがうだけの価値はあるがね」と迷亭も寒月流な挨拶をする。比較的に真面目なのは主人である。「君の論文の問(wèn)題は何とか云ったっけな」「蛙の眼球めだまの電動(dòng)作用に対する紫外光線しがいこうせんの影響と云うのです」「そりゃ奇だね。さすがは寒月先生だ、蛙の眼球は振ふるってるよ。どうだろう苦沙彌君、論文脫稿前にその問(wèn)題だけでも金田家へ報(bào)知しておいては」主人は迷亭の云う事には取り合わないで「君そんな事が骨の折れる研究かね」と寒月君に聞く。「ええ、なかなか複雑な問(wèn)題です、第一蛙の眼球のレンズの構(gòu)造がそんな単簡(jiǎn)たんかんなものでありませんからね。それでいろいろ実験もしなくちゃなりませんがまず丸い硝子ガラスの球たまをこしらえてそれからやろうと思っています」「硝子の球なんかガラス屋へ行けば訳ないじゃないか」「どうして――どうして」と寒月先生少々反身そりみになる?!冈獊?lái)円えんとか直線とか云うのは幾何學(xué)的のもので、あの定義に合ったような理想的な円や直線は現(xiàn)実世界にはないもんです」「ないもんなら、廃よしたらよかろう」と迷亭が口を出す?!袱饯欷扦蓼簩g験上差さし支つかえないくらいな球を作って見(jiàn)ようと思いましてね。せんだってからやり始めたのです」「出來(lái)たかい」と主人が訳のないようにきく?!赋鰜?lái)るものですか」と寒月君が云ったが、これでは少々矛盾だと気が付いたと見(jiàn)えて「どうもむずかしいです。だんだん磨すって少しこっち側(cè)の半徑が長(zhǎng)過(guò)ぎるからと思ってそっちを心持落すと、さあ大変今度は向側(cè)むこうがわが長(zhǎng)くなる。そいつを骨を折ってようやく磨すり潰つぶしたかと思うと全體の形がいびつになるんです。やっとの思いでこのいびつを取るとまた直徑に狂いが出來(lái)ます。始めは林檎りんごほどな大きさのものがだんだん小さくなって苺いちごほどになります。それでも根気よくやっていると大豆だいずほどになります。大豆ほどになってもまだ完全な円は出來(lái)ませんよ。私も隨分熱心に磨りましたが――この正月からガラス玉を大小六個(gè)磨り潰しましたよ」と噓だか本當(dāng)だか見(jiàn)當(dāng)のつかぬところを喋々ちょうちょうと述べる。「どこでそんなに磨っているんだい」「やっぱり學(xué)校の実験室です、朝磨り始めて、晝飯のときちょっと休んでそれから暗くなるまで磨るんですが、なかなか楽じゃありません」「それじゃ君が近頃忙がしい忙がしいと云って毎日日曜でも學(xué)校へ行くのはその珠を磨りに行くんだね」「全く目下のところは朝から晩まで珠ばかり磨っています」「珠作りの博士となって入り込みしは――と云うところだね。しかしその熱心を聞かせたら、いかな鼻でも少しはありがたがるだろう。実は先日僕がある用事があって図書(shū)館へ行って帰りに門(mén)を出ようとしたら偶然老梅ろうばい君に出逢ったのさ。あの男が卒業(yè)後図書(shū)館に足が向くとはよほど不思議な事だと思って感心に勉強(qiáng)するねと云ったら先生妙な顔をして、なに本を読みに來(lái)たんじゃない、今門(mén)前を通り掛ったらちょっと小用こようがしたくなったから拝借に立ち寄ったんだと云ったんで大笑をしたが、老梅君と君とは反対の好例として新撰蒙求しんせんもうぎゅうに是非入れたいよ」と迷亭君例のごとく長(zhǎng)たらしい註釈をつける。主人は少し真面目になって「君そう毎日毎日珠ばかり磨ってるのもよかろうが、元來(lái)いつ頃出來(lái)上るつもりかね」と聞く?!袱蓼ⅳ长稳葑婴瑜Δ工袱闶辘椁い辘饯Δ扦埂工群戮现魅摔瑜陞讱荬韦螭艘?jiàn)受けられる?!甘辘袱悒D―もう少し早く磨り上げたらよかろう」「十年じゃ早い方です、事によると廿年くらいかかります」「そいつは大変だ、それじゃ容易に博士にゃなれないじゃないか」「ええ一日も早くなって安心さしてやりたいのですがとにかく珠を磨り上げなくっちゃ肝心の実験が出來(lái)ませんから……」 寒月君はちょっと句を切って「何、そんなにご心配には及びませんよ。金田でも私の珠ばかり磨ってる事はよく承知しています。実は二三日にさんち前行った時(shí)にもよく事情を話して來(lái)ました」としたり顔に述べ立てる。すると今まで三人の談話を分らぬながら傾聴していた細(xì)君が「それでも金田さんは家族中殘らず、先月から大磯へ行っていらっしゃるじゃありませんか」と不審そうに尋ねる。寒月君もこれには少し辟易へきえきの體ていであったが「そりゃ妙ですな、どうしたんだろう」ととぼけている。こう云う時(shí)に重寶なのは迷亭君で、話の途切とぎれた時(shí)、極きまりの悪い時(shí)、眠くなった時(shí)、困った時(shí)、どんな時(shí)でも必ず橫合から飛び出してくる?!赶仍麓蟠墹匦肖盲郡猡韦藖I三日りょうさんち前東京で逢うなどは神秘的でいい。いわゆる霊の交換だね。相思の情の切な時(shí)にはよくそう云う現(xiàn)象が起るものだ。ちょっと聞くと夢(mèng)のようだが、夢(mèng)にしても現(xiàn)実よりたしかな夢(mèng)だ。奧さんのように別に思いも思われもしない苦沙彌君の所へ片付いて生涯しょうがい戀の何物たるを御解しにならん方には、御不審ももっともだが……」「あら何を証拠にそんな事をおっしゃるの。隨分軽蔑けいべつなさるのね」と細(xì)君は中途から不意に迷亭に切り付ける?!妇坤盲茟贌─长い铯氦椁い胜螭筏渴陇悉胜丹饯Δ袱悚胜い工戎魅摔庹妞榧?xì)君に助太刀をする?!袱饯辘銉Wの艶聞えんぶんなどは、いくら有ってもみんな七十五日以上経過(guò)しているから、君方きみがたの記憶には殘っていないかも知れないが――実はこれでも失戀の結(jié)果、この歳になるまで獨(dú)身で暮らしているんだよ」と一順列座の顔を公平に見(jiàn)廻わす?!弗邾邾邾勖姘驻な隆工仍皮盲郡韦霞?xì)君で、「馬鹿にしていらあ」と庭の方を向いたのは主人である。ただ寒月君だけは「どうかその懐舊談を後學(xué)こうがくのために伺いたいもので」と相変らずにやにやする。 「僕のも大分だいぶ神秘的で、故小泉八雲(yún)先生に話したら非常に受けるのだが、惜しい事に先生は永眠されたから、実のところ話す張合もないんだが、せっかくだから打ち開(kāi)けるよ。その代りしまいまで謹(jǐn)聴しなくっちゃいけないよ」と念を押していよいよ本文に取り掛る?!富仡櫎工毪冉瘠蛉イ胧篓D―ええと――何年前だったかな――面倒だからほぼ十五六年前としておこう」「冗談じょうだんじゃない」と主人は鼻からフンと息をした?!复髩湮镆櫎à鶒櫎い韦汀工燃?xì)君がひやかした。寒月君だけは約束を守って一言いちごんも云わずに、早くあとが聴きたいと云う風(fēng)をする?!负韦扦猡ⅳ肽辘味问陇坤Wが越後の國(guó)は蒲原郡かんばらごおり筍谷たけのこだにを通って、蛸壺峠たこつぼとうげへかかって、これからいよいよ會(huì)津領(lǐng)あいづりょう[#ルビの「あいづりょう」は底本では「あいずりょう」]へ出ようとするところだ」「妙なところだな」と主人がまた邪魔をする?!袱坤蓼盲坡棨い皮い椁盲筏悚い?。面白いから」と細(xì)君が制する?!袱趣长恧栅夏氦欷?、路は分らず、腹は減る、仕方がないから峠の真中にある一軒屋を敲たたいて、これこれかようかようしかじかの次第だから、どうか留めてくれと云うと、御安い御用です、さあ御上がんなさいと裸蝋燭はだかろうそくを僕の顔に差しつけた娘の顔を見(jiàn)て僕はぶるぶると悸ふるえたがね。僕はその時(shí)から戀と云う曲者くせものの魔力を切実に自覚したね」「おやいやだ。そんな山の中にも美しい人があるんでしょうか」「山だって海だって、奧さん、その娘を一目あなたに見(jiàn)せたいと思うくらいですよ、文金ぶんきんの高島田たかしまだに髪を結(jié)いいましてね」「へえー」と細(xì)君はあっけに取られている?!高@入はいって見(jiàn)ると八畳の真中に大きな囲爐裏いろりが切ってあって、その周まわりに娘と娘の爺じいさんと婆ばあさんと僕と四人坐ったんですがね。さぞ御腹おなかが御減おへりでしょうと云いますから、何でも善いから早く食わせ給えと請(qǐng)求したんです。すると爺さんがせっかくの御客さまだから蛇飯へびめしでも炊たいて上げようと云うんです。さあこれからがいよいよ失戀に取り掛るところだからしっかりして聴きたまえ」「先生しっかりして聴く事は聴きますが、なんぼ越後の國(guó)だって冬、蛇がいやしますまい」「うん、そりゃ一応もっともな質(zhì)問(wèn)だよ。しかしこんな詩(shī)的な話しになるとそう理窟りくつにばかり拘泥こうでいしてはいられないからね。鏡花の小説にゃ雪の中から蟹かにが出てくるじゃないか」と云ったら寒月君は「なるほど」と云ったきりまた謹(jǐn)聴の態(tài)度に復(fù)した。 「その時(shí)分の僕は隨分悪あくもの食いの隊(duì)長(zhǎng)で、蝗いなご、なめくじ、赤蛙などは食い厭あきていたくらいなところだから、蛇飯は乙おつだ。早速御馳走になろうと爺さんに返事をした。そこで爺さん囲爐裏の上へ鍋なべをかけて、その中へ米を入れてぐずぐず煮出したものだね。不思議な事にはその鍋なべの蓋ふたを見(jiàn)ると大小十個(gè)ばかりの穴があいている。その穴から湯気がぷうぷう吹くから、旨うまい工夫をしたものだ、田舎いなかにしては感心だと見(jiàn)ていると、爺さんふと立って、どこかへ出て行ったがしばらくすると、大きな笊ざるを小脇に抱かい込んで帰って來(lái)た。何気なくこれを囲爐裏の傍そばへ置いたから、その中を覗のぞいて見(jiàn)ると――いたね。長(zhǎng)い奴が、寒いもんだから御互にとぐろの捲まきくらをやって塊かたまっていましたね」「もうそんな御話しは廃よしになさいよ。厭らしい」と細(xì)君は眉に八の字を寄せる。「どうしてこれが失戀の大源因になるんだからなかなか廃せませんや。爺さんはやがて左手に鍋の蓋をとって、右手に例の塊まった長(zhǎng)い奴を無(wú)雑作むぞうさにつかまえて、いきなり鍋の中へ放ほうり込んで、すぐ上から蓋をしたが、さすがの僕もその時(shí)ばかりははっと息の穴が塞ふさがったかと思ったよ」「もう御やめになさいよ。気味きびの悪るい」と細(xì)君しきりに怖こわがっている?!袱猡ι伽筏鞘伽摔胜毪椁筏肖椁帘Г筏螭埭Δ筏皮い椁盲筏悚ぁ¥工毪纫环至ⅳ膜ⅳ郡胜いΔ沥松wの穴から鎌首かまくびがひょいと一つ出ましたのには驚ろきましたよ。やあ出たなと思うと、隣の穴からもまたひょいと顔を出した。また出たよと云ううち、あちらからも出る。こちらからも出る。とうとう鍋中なべじゅう蛇の面つらだらけになってしまった」「なんで、そんなに首を出すんだい」「鍋の中が熱いから、苦しまぎれに這い出そうとするのさ。やがて爺さんは、もうよかろう、引っ張らっしとか何とか云うと、婆さんははあーと答える、娘はあいと挨拶をして、名々めいめいに蛇の頭を持ってぐいと引く。肉は鍋の中に殘るが、骨だけは奇麗に離れて、頭を引くと共に長(zhǎng)いのが面白いように抜け出してくる」「蛇の骨抜きですね」と寒月君が笑いながら聞くと「全くの事骨抜だ、器用な事をやるじゃないか。それから蓋を取って、杓子しゃくしでもって飯と肉を矢鱈やたらに掻かき交まぜて、さあ召し上がれと來(lái)た」「食ったのかい」と主人が冷淡に尋ねると、細(xì)君は苦にがい顔をして「もう廃よしになさいよ、胸が悪るくって御飯も何もたべられやしない」と愚癡をこぼす?!笂Wさんは蛇飯を召し上がらんから、そんな事をおっしゃるが、まあ一遍たべてご覧なさい、あの味ばかりは生涯しょうがい忘れられませんぜ」「おお、いやだ、誰(shuí)が食べるもんですか」「そこで充分御饌ごぜんも頂戴し、寒さも忘れるし、娘の顔も遠(yuǎn)慮なく見(jiàn)るし、もう思いおく事はないと考えていると、御休みなさいましと云うので、旅の労つかれもある事だから、仰おおせに従って、ごろりと橫になると、すまん訳だが前後を忘卻して寢てしまった」「それからどうなさいました」と今度は細(xì)君の方から催促する。「それから明朝あくるあさになって眼を覚さましてからが失戀でさあ」「どうかなさったんですか」「いえ別にどうもしやしませんがね。朝起きて巻煙草まきたばこをふかしながら裏の窓から見(jiàn)ていると、向うの筧かけひの傍そばで、薬缶頭やかんあたまが顔を洗っているんでさあ」「爺さんか婆さんか」と主人が聞く。「それがさ、僕にも識(shí)別しにくかったから、しばらく拝見(jiàn)していて、その薬缶がこちらを向く段になって驚ろいたね。それが僕の初戀をした昨夜ゆうべの娘なんだもの」「だって娘は島田に結(jié)いっているとさっき云ったじゃないか」「前夜は島田さ、しかも見(jiàn)事な島田さ。ところが翌朝は丸薬缶さ」「人を馬鹿にしていらあ」と主人は例によって天井の方へ視線をそらす?!竷Wも不思議の極きょく內(nèi)心少々怖こわくなったから、なお余所よそながら容子ようすを窺うかがっていると、薬缶はようやく顔を洗い了おわって、傍かたえの石の上に置いてあった高島田の鬘かずらを無(wú)雑作に被かぶって、すましてうちへ這入はいったんでなるほどと思った。なるほどとは思ったようなもののその時(shí)から、とうとう失戀の果敢はかなき運(yùn)命をかこつ身となってしまった」「くだらない失戀もあったもんだ。ねえ、寒月君、それだから、失戀でも、こんなに陽(yáng)気で元?dú)荬いい螭坤琛工戎魅摔戮讼颏盲泼酝ぞ问伽蛟u(píng)すると、寒月君は「しかしその娘が丸薬缶でなくってめでたく東京へでも連れて御帰りになったら、先生はなお元?dú)荬庵欷蓼护螭?、とにかくせっかくの娘が禿はげであったのは千秋せんしゅうの恨事こんじですねえ。それにしても、そんな若い女がどうして、毛が抜けてしまったんでしょう」「僕もそれについてはだんだん考えたんだが全く蛇飯を食い過(guò)ぎたせいに相違ないと思う。蛇飯てえ奴はのぼせるからね」「しかしあなたは、どこも何ともなくて結(jié)構(gòu)でございましたね」「僕は禿にはならずにすんだが、その代りにこの通りその時(shí)から近眼きんがんになりました」と金縁の眼鏡をとってハンケチで叮嚀ていねいに拭ふいている。しばらくして主人は思い出したように「全體どこが神秘的なんだい」と念のために聞いて見(jiàn)る?!袱ⅳ昔Nはどこで買(mǎi)ったのか、拾ったのかどう考えても未いまだに分らないからそこが神秘さ」と迷亭君はまた眼鏡を元のごとく鼻の上へかける?!袱蓼毪菄彜悉胜芳窑卧挙蚵劋瑜Δ扦搐钉螭工汀工趣霞?xì)君の批評(píng)であった。 迷亭の駄弁もこれで一段落を告げたから、もうやめるかと思いのほか、先生は猿轡さるぐつわでも嵌はめられないうちはとうてい黙っている事が出來(lái)ぬ性たちと見(jiàn)えて、また次のような事をしゃべり出した。 「僕の失戀も苦にがい経験だが、あの時(shí)あの薬缶やかんを知らずに貰ったが最後生涯の目障めざわりになるんだから、よく考えないと険呑けんのんだよ。結(jié)婚なんかは、いざと云う間際になって、飛んだところに傷口が隠れているのを見(jiàn)出みいだす事がある者だから。寒月君などもそんなに憧憬しょうけいしたり惝怳しょうきょうしたり獨(dú)ひとりでむずかしがらないで、篤とくと気を落ちつけて珠たまを磨するがいいよ」といやに異見(jiàn)めいた事を述べると、寒月君は「ええなるべく珠ばかり磨っていたいんですが、向うでそうさせないんだから弱り切ります」とわざと辟易へきえきしたような顔付をする。「そうさ、君などは先方が騒ぎ立てるんだが、中には滑稽なのがあるよ。あの図書(shū)館へ小便をしに來(lái)た老梅ろうばい君などになるとすこぶる奇だからね」「どんな事をしたんだい」と主人が調(diào)子づいて承うけたまわる?!袱胜ⅳ?、こう云う訳さ。先生その昔靜岡の東西館へ泊った事があるのさ。――たった一と晩だぜ――それでその晩すぐにそこの下女に結(jié)婚を申し込んだのさ。僕も隨分呑気のんきだが、まだあれほどには進(jìn)化しない。もっともその時(shí)分には、あの宿屋に御夏おなつさんと云う有名な別嬪べっぴんがいて老梅君の座敷へ出たのがちょうどその御夏さんなのだから無(wú)理はないがね」「無(wú)理がないどころか君の何とか峠とまるで同じじゃないか」「少し似ているね、実を云うと僕と老梅とはそんなに差異はないからな。とにかく、その御夏さんに結(jié)婚を申し込んで、まだ返事を聞かないうちに水瓜すいかが食いたくなったんだがね」「何だって?」と主人が不思議な顔をする。主人ばかりではない、細(xì)君も寒月も申し合せたように首をひねってちょっと考えて見(jiàn)る。迷亭は構(gòu)わずどんどん話を進(jìn)行させる。「御夏さんを呼んで靜岡に水瓜はあるまいかと聞くと、御夏さんが、なんぼ靜岡だって水瓜くらいはありますよと、御盆に水瓜を山盛りにして持ってくる。そこで老梅君食ったそうだ。山盛りの水瓜をことごとく平らげて、御夏さんの返事を待っていると、返事の來(lái)ないうちに腹が痛み出してね、うーんうーんと唸うなったが少しも利目ききめがないからまた御夏さんを呼んで今度は靜岡に醫(yī)者はあるまいかと聞いたら、御夏さんがまた、なんぼ靜岡だって醫(yī)者くらいはありますよと云って、天地玄黃てんちげんこうとかいう千字文せんじもんを盜んだような名前のドクトルを連れて來(lái)た。翌朝あくるあさになって、腹の痛みも御蔭でとれてありがたいと、出立する十五分前に御夏さんを呼んで、昨日きのう申し込んだ結(jié)婚事件の諾否を?qū)い亭毪?、御夏さんは笑いながら靜岡には水瓜もあります、御醫(yī)者もありますが一夜作りの御嫁はありませんよと出て行ったきり顔を見(jiàn)せなかったそうだ。それから老梅君も僕同様失戀になって、図書(shū)館へは小便をするほか來(lái)なくなったんだって、考えると女は罪な者だよ」と云うと主人がいつになく引き受けて「本當(dāng)にそうだ。せんだってミュッセの腳本を読んだらそのうちの人物が羅馬ローマの詩(shī)人を引用してこんな事を云っていた。――羽より軽い者は塵ちりである。塵より軽いものは風(fēng)である。風(fēng)より軽い者は女である。女より軽いものは無(wú)むである。――よく穿うがってるだろう。女なんか仕方がない」と妙なところで力味りきんで見(jiàn)せる。これを承うけたまわった細(xì)君は承知しない?!概屋Xいのがいけないとおっしゃるけれども、男の重いんだって好い事はないでしょう」「重いた、どんな事だ」「重いと云うな重い事ですわ、あなたのようなのです」「俺がなんで重い」「重いじゃありませんか」と妙な議論が始まる。迷亭は面白そうに聞いていたが、やがて口を開(kāi)いて「そう赤くなって互に弁難攻撃をするところが夫婦の真相と云うものかな。どうも昔の夫婦なんてものはまるで無(wú)意味なものだったに違いない」とひやかすのだか賞ほめるのだか曖昧あいまいな事を言ったが、それでやめておいても好い事をまた例の調(diào)子で布衍ふえんして、下しものごとく述べられた。 「昔は亭主に口返答なんかした女は、一人もなかったんだって云うが、それなら唖おしを女房にしていると同じ事で僕などは一向いっこうありがたくない。やっぱり奧さんのようにあなたは重いじゃありませんかとか何とか云われて見(jiàn)たいね。同じ女房を持つくらいなら、たまには喧嘩の一つ二つしなくっちゃ退屈でしようがないからな。僕の母などと來(lái)たら、おやじの前へ出てはいとへいで持ち切っていたものだ。そうして二十年もいっしょになっているうちに寺參りよりほかに外へ出た事がないと云うんだから情けないじゃないか。もっとも御蔭で先祖代々の戒名かいみょうはことごとく暗記している。男女間の交際だってそうさ、僕の小供の時(shí)分などは寒月君のように意中の人と合奏をしたり、霊の交換をやって朦朧體もうろうたいで出合って見(jiàn)たりする事はとうてい出來(lái)なかった」「御気の毒様で」と寒月君が頭を下げる。「実に御気の毒さ。しかもその時(shí)分の女が必かならずしも今の女より品行がいいと限らんからね。奧さん近頃は女學(xué)生が墮落したの何だのとやかましく云いますがね。なに昔はこれより烈はげしかったんですよ」「そうでしょうか」と細(xì)君は真面目である。「そうですとも、出鱈目でたらめじゃない、ちゃんと証拠があるから仕方がありませんや??嗌硰浘?、君も覚えているかも知れんが僕等の五六歳の時(shí)までは女の子を唐茄子とうなすのように籠かごへ入れて天秤棒てんびんぼうで擔(dān)かついで売ってあるいたもんだ、ねえ君」「僕はそんな事は覚えておらん」「君の國(guó)じゃどうだか知らないが、靜岡じゃたしかにそうだった」「まさか」と細(xì)君が小さい聲を出すと、「本當(dāng)ですか」と寒月君が本當(dāng)らしからぬ様子で聞く。 「本當(dāng)さ?,F(xiàn)に僕のおやじが価ねを付けた事がある。その時(shí)僕は何でも六つくらいだったろう。おやじといっしょに油町あぶらまちから通町とおりちょうへ散歩に出ると、向うから大きな聲をして女の子はよしかな、女の子はよしかなと怒鳴どなってくる。僕等がちょうど二丁目の角へ來(lái)ると、伊勢(shì)源いせげんと云う呉服屋の前でその男に出っ食わした。伊勢(shì)源と云うのは間口が十間で蔵くらが五いつ戸前とまえあって靜岡第一の呉服屋だ。今度行ったら見(jiàn)て來(lái)給え。今でも歴然と殘っている。立派なうちだ。その番頭が甚兵衛(wèi)と云ってね。いつでも御袋おふくろが三日前に亡なくなりましたと云うような顔をして帳場(chǎng)の所へ控ひかえている。甚兵衛(wèi)君の隣りには初はつさんという二十四五の若い衆(zhòng)しゅが坐っているが、この初さんがまた雲(yún)照律師うんしょうりっしに帰依きえして三七二十一日の間蕎麥湯そばゆだけで通したと云うような青い顔をしている。初さんの隣りが長(zhǎng)ちょうどんでこれは昨日きのう火事で焚やき出されたかのごとく愁然しゅうぜんと算盤(pán)そろばんに身を憑もたしている。長(zhǎng)どんと併ならんで……」「君は呉服屋の話をするのか、人売りの話をするのか」「そうそう人売りの話しをやっていたんだっけ。実はこの伊勢(shì)源についてもすこぶる奇譚きだんがあるんだが、それは割?lèi)?ài)かつあいして今日は人売りだけにしておこう」「人売りもついでにやめるがいい」「どうしてこれが二十世紀(jì)の今日こんにちと明治初年頃の女子の品性の比較について大だいなる?yún)⒖激摔胜氩牧悉坤?、そんなに容易たやすくやめられるものか――それで僕がおやじと伊勢(shì)源の前までくると、例の人売りがおやじを見(jiàn)て旦那女の子の仕舞物しまいものはどうです、安く負(fù)けておくから買(mǎi)っておくんなさいと云いながら天秤棒てんびんぼうをおろして汗を拭ふいているのさ。見(jiàn)ると籠の中には前に一人後うしろに一人両方とも二歳ばかりの女の子が入れてある。おやじはこの男に向って安ければ買(mǎi)ってもいいが、もうこれぎりかいと聞くと、へえ生憎あいにく今日はみんな売り盡つくしてたった二つになっちまいました。どっちでも好いから取っとくんなさいなと女の子を両手で持って唐茄子とうなすか何ぞのようにおやじの鼻の先へ出すと、おやじはぽんぽんと頭を叩たたいて見(jiàn)て、ははあかなりな音だと云った。それからいよいよ談判が始まって散々さんざ価切ねぎった末おやじが、買(mǎi)っても好いが品はたしかだろうなと聞くと、ええ前の奴は始終見(jiàn)ているから間違はありませんがね後うしろに擔(dān)かついでる方は、何しろ眼がないんですから、ことによるとひびが入ってるかも知れません。こいつの方なら受け合えない代りに価段ねだんを引いておきますと云った。僕はこの問(wèn)答を未いまだに記憶しているんだがその時(shí)小供心に女と云うものはなるほど油斷のならないものだと思ったよ。――しかし明治三十八年の今日こんにちこんな馬鹿な真似をして女の子を売ってあるくものもなし、眼を放して後うしろへ?fù)?dān)かついだ方は険呑けんのんだなどと云う事も聞かないようだ。だから、僕の考ではやはり泰西たいせい文明の御蔭で女の品行もよほど進(jìn)歩したものだろうと斷定するのだが、どうだろう寒月君」 寒月君は返事をする前にまず鷹揚(yáng)おうような咳払せきばらいを一つして見(jiàn)せたが、それからわざと落ちついた低い聲で、こんな観察を述べられた?!袱长雾暏闻蠈W(xué)校の行き帰りや、合奏會(huì)や、慈善會(huì)や、園遊會(huì)で、ちょいと買(mǎi)って頂戴な、あらおいや? などと自分で自分を売りにあるいていますから、そんな八百屋やおやのお余りを雇って、女の子はよしか、なんて下品な依托販売いたくはんばいをやる必要はないですよ。人間に獨(dú)立心が発達(dá)してくると自然こんな風(fēng)になるものです。老人なんぞはいらぬ取越苦労をして何とかかとか云いますが、実際を云うとこれが文明の趨勢(shì)すうせいですから、私などは大おおいに喜ばしい現(xiàn)象だと、ひそかに慶賀の意を表しているのです。買(mǎi)う方だって頭を敲たたいて品物は確かかなんて聞くような野暮やぼは一人もいないんですからその辺は安心なものでさあ。またこの複雑な世の中に、そんな手?jǐn)?shù)てすうをする日にゃあ、際限がありませんからね。五十になったって六十になったって亭主を持つ事も嫁に行く事も出來(lái)やしません」寒月君は二十世紀(jì)の青年だけあって、大おおいに當(dāng)世流の考を開(kāi)陳かいちんしておいて、敷島しきしまの煙をふうーと迷亭先生の顔の方へ吹き付けた。迷亭は敷島の煙くらいで辟易へきえきする男ではない?!秆訾护瓮à攴浇瘠郅Δ长螭闻?、令嬢などは自尊自信の念から骨も肉も皮まで出來(lái)ていて、何でも男子に負(fù)けないところが敬服の至りだ。僕の近所の女學(xué)校の生徒などと來(lái)たらえらいものだぜ。筒袖つつそでを穿はいて鉄棒かなぼうへぶら下がるから感心だ。僕は二階の窓から彼等の體操を目撃するたんびに古代希臘ギリシャの婦人を追懐するよ」「また希臘か」と主人が冷笑するように云い放つと「どうも美な感じのするものは大抵希臘から源を発しているから仕方がない。美學(xué)者と希臘とはとうてい離れられないやね。――ことにあの色の黒い女學(xué)生が一心不亂に體操をしているところを拝見(jiàn)すると、僕はいつでも Agnodice の逸話を思い出すのさ」と物知り顔にしゃべり立てる?!袱蓼郡啶氦筏っ挨訾苼?lái)ましたね」と寒月君は依然としてにやにやする?!窤gnodice はえらい女だよ、僕は実に感心したね。當(dāng)時(shí)亜典アテンの法律で女が産婆を営業(yè)する事を禁じてあった。不便な事さ。Agnodice だってその不便を感ずるだろうじゃないか」「何だい、その――何とか云うのは」「女さ、女の名前だよ。この女がつらつら考えるには、どうも女が産婆になれないのは情けない、不便極まる。どうかして産婆になりたいもんだ、産婆になる工夫はあるまいかと三日三晩手を拱こまぬいて考え込んだね。ちょうど三日目の暁方あけがたに、隣の家で赤ん坊がおぎゃあと泣いた聲を聞いて、うんそうだと豁然大悟かつぜんたいごして、それから早速長(zhǎng)い髪を切って男の著物をきて Hierophilus の講義をききに行った。首尾よく講義をきき終おおせて、もう大丈夫と云うところでもって、いよいよ産婆を開(kāi)業(yè)した。ところが、奧さん流行はやりましたね。あちらでもおぎゃあと生れるこちらでもおぎゃあと生れる。それがみんな Agnodice の世話なんだから大変儲(chǔ)もうかった。ところが人間萬(wàn)事塞翁さいおうの馬、七転ななころび八起やおき、弱り目に祟たたり目で、ついこの秘密が露見(jiàn)に及んでついに御上おかみの御法度ごはっとを破ったと云うところで、重き御仕置しおきに仰せつけられそうになりました」「まるで講釈見(jiàn)たようです事」「なかなか旨うまいでしょう。ところが亜典アテンの女連が一同連署して嘆願(yuàn)に及んだから、時(shí)の御奉行もそう木で鼻を括くくったような挨拶も出來(lái)ず、ついに當(dāng)人は無(wú)罪放免、これからはたとい女たりとも産婆営業(yè)勝手たるべき事と云う御布令おふれさえ出てめでたく落著を告げました」「よくいろいろな事を知っていらっしゃるのね、感心ねえ」「ええ大概の事は知っていますよ。知らないのは自分の馬鹿な事くらいなものです。しかしそれも薄々は知ってます」「ホホホホ面白い事ばかり……」と細(xì)君相形そうごうを崩して笑っていると、格子戸こうしどのベルが相変らず著けた時(shí)と同じような音を出して鳴る?!袱浃蓼坑蜆敜馈工燃?xì)君は茶の間へ引き下がる。細(xì)君と入れ違いに座敷へ這入はいって來(lái)たものは誰(shuí)かと思ったらご存じの越智東風(fēng)おちとうふう君であった。 ここへ東風(fēng)君さえくれば、主人の家うちへ出入でいりする変人はことごとく網(wǎng)羅し盡つくしたとまで行かずとも、少なくとも吾輩の無(wú)聊ぶりょうを慰むるに足るほどの頭數(shù)あたまかずは御揃おそろいになったと云わねばならぬ。これで不足を云っては勿體もったいない。運(yùn)悪るくほかの家へ飼われたが最後、生涯人間中にかかる先生方が一人でもあろうとさえ気が付かずに死んでしまうかも知れない。幸さいわいにして苦沙彌先生門(mén)下の貓児びょうじとなって朝夕ちょうせき虎皮こひの前に侍はんべるので先生は無(wú)論の事迷亭、寒月乃至ないし東風(fēng)などと云う広い東京にさえあまり例のない一騎當(dāng)千の豪傑連の挙止動(dòng)作を?qū)嫟胜閽呉?jiàn)するのは吾輩にとって千載一遇の光栄である。御蔭様でこの暑いのに毛袋でつつまれていると云う難儀も忘れて、面白く半日を消光する事が出來(lái)るのは感謝の至りである。どうせこれだけ集まれば只事ただごとではすまない。何か持ち上がるだろうと襖ふすまの陰から謹(jǐn)つつしんで拝見(jiàn)する。 「どうもご無(wú)沙汰を致しました。しばらく」と御辭儀をする東風(fēng)君の顔を見(jiàn)ると、先日のごとくやはり奇麗に光っている。頭だけで評(píng)すると何か緞帳役者どんちょうやくしゃのようにも見(jiàn)えるが、白い小倉(cāng)こくらの袴はかまのゴワゴワするのを御苦労にも鹿爪しかつめらしく穿はいているところは榊原健吉さかきばらけんきちの內(nèi)弟子としか思えない。従って東風(fēng)君の身體で普通の人間らしいところは肩から腰までの間だけである。「いや暑いのに、よく御出掛だね。さあずっと、こっちへ通りたまえ」と迷亭先生は自分の家うちらしい挨拶をする?!赶壬摔洗蠓证坤い志盲筏郡摔辘蓼护蟆埂袱饯Δ怠ⅳ郡筏长未氦卫收i會(huì)ぎりだったね。朗読會(huì)と云えば近頃はやはり御盛おさかんかね。その後ご御宮おみやにゃなりませんか。あれは旨うまかったよ。僕は大おおいに拍手したぜ、君気が付いてたかい」「ええ御蔭で大きに勇気が出まして、とうとうしまいまで漕こぎつけました」「今度はいつ御催しがありますか」と主人が口を出す?!钙甙藖I月ふたつきは休んで九月には何か賑にぎやかにやりたいと思っております。何か面白い趣向はございますまいか」「さよう」と主人が気のない返事をする?!笘|風(fēng)君僕の創(chuàng)作を一つやらないか」と今度は寒月君が相手になる?!妇蝿?chuàng)作なら面白いものだろうが、一體何かね」「腳本さ」と寒月君がなるべく押しを強(qiáng)く出ると、案のごとく、三人はちょっと毒気をぬかれて、申し合せたように本人の顔を見(jiàn)る?!改_本はえらい。喜劇かい悲劇かい」と東風(fēng)君が歩を進(jìn)めると、寒月先生なお澄し返って「なに喜劇でも悲劇でもないさ。近頃は舊劇とか新劇とか大部だいぶやかましいから、僕も一つ新機(jī)軸を出して俳劇はいげきと云うのを作って見(jiàn)たのさ」「俳劇たどんなものだい」「俳句趣味の劇と云うのを詰めて俳劇の二字にしたのさ」と云うと主人も迷亭も多少煙けむに捲まかれて控ひかえている?!袱饯欷扦饯稳は颏仍皮Δ韦??」と聞き出したのはやはり?yáng)|風(fēng)君である。「根が俳句趣味からくるのだから、あまり長(zhǎng)たらしくって、毒悪なのはよくないと思って一幕物にしておいた」「なるほど」「まず道具立てから話すが、これも極ごく簡(jiǎn)単なのがいい。舞臺(tái)の真中へ大きな柳を一本植え付けてね。それからその柳の幹から一本の枝を右の方へヌッと出させて、その枝へ烏からすを一羽とまらせる」「烏がじっとしていればいいが」と主人が獨(dú)ひとり言ごとのように心配した。「何わけは有りません、烏の足を糸で枝へ縛しばり付けておくんです。でその下へ行水盥ぎょうずいだらいを出しましてね。美人が橫向きになって手拭を使っているんです」「そいつは少しデカダンだね。第一誰(shuí)がその女になるんだい」と迷亭が聞く。「何これもすぐ出來(lái)ます。美術(shù)學(xué)校のモデルを雇ってくるんです」「そりゃ警視庁がやかましく云いそうだな」と主人はまた心配している?!袱坤盲婆d行さえしなければ構(gòu)わんじゃありませんか。そんな事をとやかく云った日にゃ學(xué)校で裸體畫(huà)の寫(xiě)生なんざ出來(lái)っこありません」「しかしあれは稽古のためだから、ただ見(jiàn)ているのとは少し違うよ」「先生方がそんな事を云った日には日本もまだ駄目です。絵畫(huà)だって、演劇だって、おんなじ蕓術(shù)です」と寒月君大いに気焔きえんを吹く。「まあ議論はいいが、それからどうするのだい」と東風(fēng)君、ことによると、やる了見(jiàn)りょうけんと見(jiàn)えて筋を聞きたがる。「ところへ花道から俳人高浜虛子たかはまきょしがステッキを持って、白い燈心とうしん入りの帽子を被かぶって、透綾すきやの羽織に、薩摩飛白さつまがすりの尻端折しりっぱしょりの半靴と云うこしらえで出てくる。著付けは陸軍の御用達(dá)ごようたし見(jiàn)たようだけれども俳人だからなるべく悠々ゆうゆうとして腹の中では句案に余念のない體ていであるかなくっちゃいけない。それで虛子が花道を行き切っていよいよ本舞臺(tái)に懸った時(shí)、ふと句案の眼をあげて前面を見(jiàn)ると、大きな柳があって、柳の影で白い女が湯を浴びている、はっと思って上を見(jiàn)ると長(zhǎng)い柳の枝に烏が一羽とまって女の行水を見(jiàn)下ろしている。そこで虛子先生大おおいに俳味に感動(dòng)したと云う思い入れが五十秒ばかりあって、行水の女に惚れる烏かなと大きな聲で一句朗吟するのを合図に、拍子木ひょうしぎを入れて幕を引く。――どうだろう、こう云う趣向は。御気に入りませんかね。君御宮おみやになるより虛子になる方がよほどいいぜ」東風(fēng)君は何だか物足らぬと云う顔付で「あんまり、あっけないようだ。もう少し人情を加味した事件が欲しいようだ」と真面目に答える。今まで比較的おとなしくしていた迷亭はそういつまでもだまっているような男ではない?!袱郡盲郡饯欷坤堡琴絼·悉工丹蓼袱い汀I咸锩簸Δà坤婴缶握hによると俳味とか滑稽とか云うものは消極的で亡國(guó)の音いんだそうだが、敏君だけあってうまい事を云ったよ。そんなつまらない物をやって見(jiàn)給え。それこそ上田君から笑われるばかりだ。第一劇だか茶番だか何だかあまり消極的で分らないじゃないか。失禮だが寒月君はやはり実験室で珠たまを磨いてる方がいい。俳劇なんぞ百作ったって二百作ったって、亡國(guó)の音いんじゃ駄目だ」寒月君は少々憤むっとして、「そんなに消極的でしょうか。私はなかなか積極的なつもりなんですが」どっちでも構(gòu)わん事を弁解しかける?!柑撟婴扦工汀L撟酉壬算堡欷霝酩胜葹酩虿钉趣椁à婆算堡欷丹筏郡趣长恧螭い朔e極的だろうと思います」「こりゃ新説だね。是非御講釈を伺がいましょう」「理學(xué)士として考えて見(jiàn)ると烏が女に惚れるなどと云うのは不合理でしょう」「ごもっとも」「その不合理な事を無(wú)雑作むぞうさに言い放って少しも無(wú)理に聞えません」「そうかしら」と主人が疑った調(diào)子で割り込んだが寒月は一向頓著しない?!袱胜紵o(wú)理に聞えないかと云うと、これは心理的に説明するとよく分ります。実を云うと惚れるとか惚れないとか云うのは俳人その人に存する感情で烏とは沒(méi)交渉の沙汰であります。しかるところあの烏は惚れてるなと感じるのは、つまり烏がどうのこうのと云う訳じゃない、必竟ひっきょう自分が惚れているんでさあ。虛子自身が美しい女の行水ぎょうずいしているところを見(jiàn)てはっと思う途端にずっと惚れ込んだに相違ないです。さあ自分が惚れた眼で烏が枝の上で動(dòng)きもしないで下を見(jiàn)つめているのを見(jiàn)たものだから、ははあ、あいつも俺と同じく參ってるなと癇違かんちがいをしたのです。癇違いには相違ないですがそこが文學(xué)的でかつ積極的なところなんです。自分だけ感じた事を、斷りもなく烏の上に拡張して知らん顔をしてすましているところなんぞは、よほど積極主義じゃありませんか。どうです先生」「なるほど御名論だね、虛子に聞かしたら驚くに違いない。説明だけは積極だが、実際あの劇をやられた日には、見(jiàn)物人はたしかに消極になるよ。ねえ東風(fēng)君」「へえどうも消極過(guò)ぎるように思います」と真面目な顔をして答えた。 主人は少々談話の局面を展開(kāi)して見(jiàn)たくなったと見(jiàn)えて、「どうです、東風(fēng)さん、近頃は傑作もありませんか」と聞くと東風(fēng)君は「いえ、別段これと云って御目にかけるほどのものも出來(lái)ませんが、近日詩(shī)集を出して見(jiàn)ようと思いまして――稿本こうほんを幸い持って參りましたから御批評(píng)を願(yuàn)いましょう」と懐から紫の袱紗包ふくさづつみを出して、その中から五六十枚ほどの原稿紙の帳面を取り出して、主人の前に置く。主人はもっともらしい顔をして拝見(jiàn)と云って見(jiàn)ると第一頁(yè)に 世の人に似ずあえかに見(jiàn)え給う  富子?jì)荬伺酩? と二行にかいてある。主人はちょっと神秘的な顔をしてしばらく一頁(yè)を無(wú)言のまま眺ながめているので、迷亭は橫合から「何だい新體詩(shī)かね」と云いながら覗のぞき込んで「やあ、捧げたね。東風(fēng)君、思い切って富子?jì)荬伺酩菠郡韦悉à椁ぁ工趣筏辘速pほめる。主人はなお不思議そうに「東風(fēng)さん、この富子と云うのは本當(dāng)に存在している婦人なのですか」と聞く?!袱丐āⅳ长吻懊酝は壬趣搐い盲筏绀死收i會(huì)へ招待した婦人の一人です。ついこの御近所に住んでおります。実はただ今詩(shī)集を見(jiàn)せようと思ってちょっと寄って參りましたが、生憎あいにく先月から大磯へ避暑に行って留守でした」と真面目くさって述べる?!缚嗌硰浘?、これが二十世紀(jì)なんだよ。そんな顔をしないで、早く傑作でも朗読するさ。しかし東風(fēng)君この捧げ方は少しまずかったね。このあえかにと云う雅言がげんは全體何と言う意味だと思ってるかね」「蚊弱かよわいとかたよわくと云う字だと思います」「なるほどそうも取れん事はないが本來(lái)の字義を云うと危う気にと云う事だぜ。だから僕ならこうは書(shū)かないね」「どう書(shū)いたらもっと詩(shī)的になりましょう」「僕ならこうさ。世の人に似ずあえかに見(jiàn)え給う富子?jì)荬伪扦蜗陇伺酩挨趣工毪?。わずかに三字のゆきさつだが鼻の下があるのとないのとでは大変感じに相違があるよ」「なるほど」と東風(fēng)君は解げしかねたところを無(wú)理に納得なっとくした體ていにもてなす。 主人は無(wú)言のままようやく一頁(yè)をはぐっていよいよ巻頭第一章を読み出す。 倦うんじて薫くんずる香裏こうりに君の 霊か相思の煙のたなびき おお我、ああ我、辛からきこの世に あまく得てしか熱き口づけ 「これは少々僕には解しかねる」と主人は嘆息しながら迷亭に渡す?!袱长欷仙佟┱瘠み^(guò)ぎてる」と迷亭は寒月に渡す。寒月は「なああるほど」と云って東風(fēng)君に返す。 「先生御分りにならんのはごもっともで、十年前の詩(shī)界と今日こんにちの詩(shī)界とは見(jiàn)違えるほど発達(dá)しておりますから。この頃の詩(shī)は寢転んで読んだり、停車(chē)場(chǎng)で読んではとうてい分りようがないので、作った本人ですら質(zhì)問(wèn)を受けると返答に窮する事がよくあります。全くインスピレーションで書(shū)くので詩(shī)人はその他には何等の責(zé)任もないのです。註釈や訓(xùn)義くんぎは學(xué)究のやる事で私共の方では頓とんと構(gòu)いません。せんだっても私の友人で送籍そうせきと云う男が一夜という短篇をかきましたが、誰(shuí)が読んでも朦朧もうろうとして取り留とめがつかないので、當(dāng)人に逢って篤とくと主意のあるところを糺ただして見(jiàn)たのですが、當(dāng)人もそんな事は知らないよと云って取り合わないのです。全くその辺が詩(shī)人の特色かと思います」「詩(shī)人かも知れないが隨分妙な男ですね」と主人が云うと、迷亭が「馬鹿だよ」と単簡(jiǎn)たんかんに送籍君を打ち留めた。東風(fēng)君はこれだけではまだ弁じ足りない。「送籍は吾々仲間のうちでも取除とりのけですが、私の詩(shī)もどうか心持ちその気で読んでいただきたいので。ことに御注意を願(yuàn)いたいのはからきこの世と、あまき口づけと対ついをとったところが私の苦心です」「よほど苦心をなすった痕跡こんせきが見(jiàn)えます」「あまいとからいと反照するところなんか十七味調(diào)じゅうしちみちょう唐辛子調(diào)とうがらしちょうで面白い。全く東風(fēng)君獨(dú)特の伎倆で敬々服々の至りだ」としきりに正直な人をまぜ返して喜んでいる。 主人は何と思ったか、ふいと立って書(shū)斎の方へ行ったがやがて一枚の半紙を持って出てくる?!笘|風(fēng)君の御作も拝見(jiàn)したから、今度は僕が短文を読んで諸君の御批評(píng)を願(yuàn)おう」といささか本気の沙汰である?!柑烊痪邮郡皮螭亭螭长袱文贡懁埭窑幛い胜椁猡Χ閽吢棨筏郡琛埂袱蓼?、だまっていなさい。東風(fēng)さん、これは決して得意のものではありませんが、ほんの座興ですから聴いて下さい」「是非伺がいましょう」「寒月君もついでに聞き給え」「ついででなくても聴きますよ。長(zhǎng)い物じゃないでしょう」「僅々六十余字さ」と苦沙彌先生いよいよ手製の名文を読み始める。 「大和魂やまとだましい! と叫んで日本人が肺病やみのような咳せきをした」 「起し得て突兀とっこつですね」と寒月君がほめる。 「大和魂! と新聞屋が云う。大和魂! と掏摸すりが云う。大和魂が一躍して海を渡った。英國(guó)で大和魂の演説をする。獨(dú)逸ドイツで大和魂の芝居をする」 「なるほどこりゃ天然居士てんねんこじ以上の作だ」と今度は迷亭先生がそり返って見(jiàn)せる。 「東郷大將が大和魂を有もっている。肴屋さかなやの銀さんも大和魂を有っている。詐偽師さぎし、山師やまし、人殺しも大和魂を有っている」 「先生そこへ寒月も有っているとつけて下さい」 「大和魂はどんなものかと聞いたら、大和魂さと答えて行き過(guò)ぎた。五六間行ってからエヘンと云う聲が聞こえた」 「その一句は大出來(lái)だ。君はなかなか文才があるね。それから次の句は」 「三角なものが大和魂か、四角なものが大和魂か。大和魂は名前の示すごとく魂である。魂であるから常にふらふらしている」 「先生だいぶ面白うございますが、ちと大和魂が多過(guò)ぎはしませんか」と東風(fēng)君が注意する?!纲m成」と云ったのは無(wú)論迷亭である。 「誰(shuí)も口にせぬ者はないが、誰(shuí)も見(jiàn)たものはない。誰(shuí)も聞いた事はあるが、誰(shuí)も遇あった者がない。大和魂はそれ天狗てんぐの類(lèi)たぐいか」 主人は一結(jié)杳然いっけつようぜんと云うつもりで読み終ったが、さすがの名文もあまり短か過(guò)ぎるのと、主意がどこにあるのか分りかねるので、三人はまだあとがある事と思って待っている。いくら待っていても、うんとも、すんとも、云わないので、最後に寒月が「それぎりですか」と聞くと主人は軽かろく「うん」と答えた。うんは少し気楽過(guò)ぎる。 不思議な事に迷亭はこの名文に対して、いつものようにあまり駄弁を振わなかったが、やがて向き直って、「君も短篇を集めて一巻として、そうして誰(shuí)かに捧げてはどうだ」と聞いた。主人は事もなげに「君に捧げてやろうか」と聴くと迷亭は「真平まっぴらだ」と答えたぎり、先刻さっき細(xì)君に見(jiàn)せびらかした鋏はさみをちょきちょき云わして爪をとっている。寒月君は東風(fēng)君に向って「君はあの金田の令嬢を知ってるのかい」と尋ねる?!袱长未豪收i會(huì)へ招待してから、懇意になってそれからは始終交際をしている。僕はあの令嬢の前へ出ると、何となく一種の感に打たれて、當(dāng)分のうちは詩(shī)を作っても歌を詠よんでも愉快に興が乗って出て來(lái)る。この集中にも戀の詩(shī)が多いのは全くああ云う異性の朋友ほうゆうからインスピレーションを受けるからだろうと思う。それで僕はあの令嬢に対しては切実に感謝の意を表しなければならんからこの機(jī)を利用して、わが集を捧げる事にしたのさ。昔むかしから婦人に親友のないもので立派な詩(shī)をかいたものはないそうだ」「そうかなあ」と寒月君は顔の奧で笑いながら答えた。いくら駄弁家の寄合でもそう長(zhǎng)くは続かんものと見(jiàn)えて、談話の火の手は大分だいぶ下火になった。吾輩も彼等の変化なき雑談を終日聞かねばならぬ義務(wù)もないから、失敬して庭へ蟷螂かまきりを探しに出た。梧桐あおぎりの緑を綴つづる間から西に傾く日が斑まだらに洩もれて、幹にはつくつく法師ぼうしが懸命にないている。晩はことによると一雨かかるかも知れない。

日語(yǔ)《我是貓》第六章的評(píng)論 (共 條)

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