『HiGH&LOW THE WORST X』は若手俳優(yōu)の『有

『HiGH&LOW THE WORST X』は若手俳優(yōu)の『有吉の壁』だった──ハイロー放談前編!
2022/10/17 19:00
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斎藤岬(さいとう?みさき)
『HiGH&LOW THE WORST X』公式サイトより 映畫『HiGH&LOW THE WORST X』の公開に連動して展開してきたサイゾーのハイロー特集。最後に『HiGH&LOW THE MOVIE』から掲載している恒例の座談會をお屆け! ヤンキーマンガや映畫を長年見続けてきたライター?藤谷千明氏と、アクション映畫やバイオレス映畫に造詣の深いライター?加藤よしき氏によるハイロー放談、まずは前半戦です。 (以下、映畫『HiGH&LOW THE WORST X』のネタバレを含みます) 「ザワクロ」は「アクション映畫」としての完成形か ──「HiGH&LOW」の新作が公開されるたびに行っているこの対談、『HiGH&LOW THE MOVIE』(2016年/以下『ザム』)から始まってもう6年目ですね。そして前作『HiGH&LOW THE WORST』(2019年/以下『ザワ』)以來の3年ぶりです。だいぶ空きました。 藤谷 お久しぶりですね。 加藤 ご無沙汰しております。 ──まずは全體の感想から始めていきましょう。 加藤 僕は『HiGH&LOW THE WORST X』(以下『ザワクロ』)、すごく楽しかったです。シリーズで一番好きかもしれません。理由は単純で、完全に文法がアクション映畫になっていたからです。これまでのハイローはアクション以外にも、いろいろやりたいことがありましたよね。広い意味での人間ドラマだったり、「バイクや車をかっこよく撮りたい」とか「ライブシーンをかっこよく撮りたい」とか。それが今回はシンプルに學校同士のバトルものにして、その他の要素を全部削ぎ落としていた。だからアクション映畫好きの自分はより楽しめたんだと思います。今年のベスト10に入るくらい好きですね。多分、僕はこの対談のたびに「この作品こそ『HiGH&LOW』シリーズの入門にベストだ!」って言ってる気がするんですけど、またそれが更新されたなと。これまでで一番ワケがわかりますから。 藤谷 同意します。本作から入るのはアリなのでは。ただ、我々はハイローに脳を毆られすぎてるんでちょっと自信がないところではありますが……。なんにしても今年ベスト級なのは間違いありません。アクションと話の運びも整理されていて退屈なシーンがないし、観ていて「目が足りん」とは相変わらず思うけど「なんもわからん」みたいな壊滅的な箇所はない。エンドロールの鎌坂勢が何をやっているのかは一目で理解できませんでしたが……。ただ、これは後編で詳しく話しますが、むしろその「気持ちよさ」に私はやや引っかかってもいます。 加藤 もちろん粗はゼロではないし、ちょくちょく気になるところはあります。でも僕は絶賛ですね。「Stand by you」が流れるところで泣きそうになったんですよ。こんなこと言うと失禮ですけど、ハイローのこれまでの楽曲の中で毎回バラードがいまいちピンときてなかったんです?!亥顶唷护巍?000人”が毆り合った後で、しっとりとした曲が流れても「この狀況で流す曲か?」という感じがあって。でも今回は詞の內(nèi)容と映畫のシーンが合っているし、それと、高校生のケンカには不似合いなほど異様に壯大なイントロですよね。あの過剰なドラマチックさがピンときました。 藤谷 演出の意図と連動してる。 加藤 アクションも、この期に及んでまだ観たことないものが出てきた。中盤で、三校連合が道を塞いでガーッと歩いて來るシーンがあるじゃないですか。 藤谷 そのシーン、震えましたね。宇宙イチ格好いい「チャリで來た」ならぬ「徒歩で來た」ですよ。 加藤 神がかってるなと思いましたね。もう、災害パニック映畫ですよ。ああいうシーンは何度も観ましたもん。よくあるやつですよね。なぜか渋滯が起きて車が動かなくなってて「なんだなんだ?」って見に行ったら、怪獣か何かにブン投げられた車がブオーン! って飛んできて「うわー!」ってなるシーン。それを不良少年でやっている。普通の映畫では絶対にないシーンなので、あれだけでも劇場で體験する価値があります。 藤谷 あそこで『クローズZERO』に出演していたやべきょうすけさんが出てくるのも絶妙で、大好きですね。高校生が歩いてきてるだけなのになんであんなにびっくりしてるの? と思いつつも、やべさんのリアクションが最高ですね。これまでのハイローシリーズといえば、すごいバイクとかすごいトラックとか、乗り物のインパクトで勝負していたところもあるじゃないですか。「ザワ」はそれが元から薄いというのはありますが、ここに來て徒歩。 加藤 不良たちの橫一列の徒歩移動。 藤谷 北海道の暴走族か?(※北海道の暴走族は冬は雪でバイク暴走できないため、徒歩で練り歩くという話があります) 加藤 そのあと、鬼邪高の生徒が襲われるのが學校內(nèi)じゃなくて街なかなのも好きでした。『ザ?レイド2』で監(jiān)督が當初「シラット使いたちの市街戦をやりたい」って言ってたんですけど、結局できなかったんですよ。つまり『ザ?レイド2』ができなかったことを『ザワクロ』はやってる?!赣Qてるか、ギャレス?エヴァンス。お前ができなかったことを、極東の不良少年たちがやってるぞ」と思いました。 藤谷 あのくだり、完全にテクノスジャパンの『くにおくん』シリーズにしか見えない。非現(xiàn)実的な明るい色の制服の人たちが街なかで毆り合ってるって、ほぼ『ダウンタウン熱血物語』でしょ。さすがに鉄アレイは投げてませんでしたが……。
『ダウンタウン熱血物語SP』公式サイトより 加藤 あっ、たしかにそうですね。『くにおくん』だ。 藤谷 『ダウンタウン熱血行進曲 それゆけ大運動會』なんよ! って、観てる間ずっと思ってました。小學生時代、きょうだいで毆り合って「れいほう」(登場する學校のひとつ「冷峰學園」。ゲームバランスが狂っているのでこのチームを取ることで勝利がほぼ確約される)を取り合ったことを思い出しました。ちなみに『クローズZERO』の中國版?臺灣版タイトルが『熱血高?!护胜韦嫌忻试挙扦埂%膝ぅ愆`も『熱血街頭』だし、つながってしまったわね……。 加藤 つながりましたね。街中なかで喧嘩すること自體はほかの作品でもあるんですけど、大體はもっと泥臭い戦いになったり陰濕な感じになるんです。でも『ザワクロ』ではあくまで全員がアクション映畫的に動くというか、アクロバティックに動いていて、しかも全員がかっこいい。現(xiàn)実vs虛構とは、まさにこのことですよ。そのあたりにワンダー観があって、初めて見る映像だという感じがしました。そして至る所に「ここは俺に任せて先にいけ」があるじゃないですか。なかでも清史(うえきやサトシ)の散り様が大好きで。 藤谷 あれも『クローズZERO』の拳さんのオマージュですかね。 加藤 そうですよね。「ここは通さんぞ」って。あのときの泰志(佐藤流司)と清史のほんのわずか數(shù)秒の芝居がすごくよかったです。 ハイローは「推しに出てほしい映畫ナンバーワン」 加藤 今作は前作に続いて『クローズ』とのクロスオーバーなわけですが、ひとつ思ったのが、今回の物語って『クローズ』のスネイク?ヘッズ編のリメイクなんですよね。簡単に説明すると、ヤクザの息子?八丁が親の威を借りてつくったチーム「スネイク?ヘッズ」を、副ヘッドだった陣內(nèi)が右腕である鉄次と一緒に乗っ取って街を支配しようとするんです。そこに春道と愉快な仲間たち(パルコアンドデンジャラーズ)がやってくる。スネイクヘッズのほうが人數(shù)は圧倒的に多かったんだけど、鈴蘭の仲間と鳳仙と武裝戦線が応援に來て、全員やられて2人だけになってしまう。そこで鉄次が「ここからオレとおまえの成り上がり伝説が始まるんだ」って強がって闘って、結局春道に負ける。つまりシチュエーション的に完全に同じなんです。 藤谷 春道も鬼邪高のみなさんよろしく牛乳飲んでお腹壊していましたしね。いや、冗談はさておき、その指摘は正しいと思います。 加藤 ただ、『クローズ』だと春道たちはある程度の形勢が決まった時點で「オレたちの役目はここまでだ」って帰っちゃうんですよね。その後に一人になった陣內(nèi)が「オレはガキみてぇにスネてこんなことしてただけなんだ」と自省していたら、後ろから刺されて死んでしまう。それがすごく高橋ヒロシ的な展開なのに対して、楓士雄はちゃんと2人が仲直りするように仕向けて「またやろうな」って帰っていく。アフターケアが完璧です。 藤谷 そこがラブドリームハピネス精神なんですね。 加藤 さすがセカンドキャリアに強いLDH。たぶん天下井は陣內(nèi)と八丁が合體したキャラなんですよね。でも結末はまったく違う。そこに『クローズ』とハイローの違いがよく出てるなと思いました。 藤谷 それでいうと主人公の楓士雄は、2つの世界観を背負った“完全體”になってましたね。前回の対談では「高橋ヒロシ作品の既存キャラのキメラではあるけど、だからこそ人間味が見えてこない」と話していたんですが、川村壱馬さんがキャラクターを咀嚼しまくって完全に仕上げてきてくれました。本當にありがとうございます。 加藤 川村壱馬さん、『クローズ』っぽさとハイローらしさを完全に理解していて、もはや恐ろしいですよ。 藤谷 もう、冒頭のバトルシーンから自己紹介として完成されている。天下井の腕ポキに象徴される悪辣な暴力から、楓士雄が鈴蘭に単身乗り込んで正々堂々スポーツマンシップにのっとった喧嘩につないでいるじゃないですか。あそこで楓士雄のキャラの良さが120%出てました??旎瞍?、天真爛漫さ、人間の大きさ、そしてバカさ。余すところなく「THIS IS 楓士雄」でした。あのバトルで初見の人も「この人が主人公である」ことを完全に理解できるはず。そして迎え撃つ鈴蘭側もすごく良い。 加藤 ビンゾー(板垣瑞生)最高でした。彼が飛んでくるシーンで「あ、この映畫好きだな」って思いましたよ。 藤谷 八木さん(勇征:山口孫六役)の蹴りも美しかったです。「美しい彼」から「美しい蹴り」へ。それこそ『花より男子』の花沢類役で一世を風靡した小栗旬さんが『クローズZERO』でそれまでの俳優(yōu)イメージを更新したのと近いものを感じました。八木さんはこれからいろんな役でもっと観たいです。 ──個人的に、ラオウ(三上ヘンリー大智)がグッときました。デカいことは才能だな、と。 藤谷 フィジカルの説得力で優(yōu)勝。格闘家を所屬させてたLDHはえらい(※)。三上さんは作畫が高橋ヒロシというより米原秀幸なんですよね。『クローズ』より『ウダウダやってるヒマはねェ!』。それも含めて、いい意味で違和感、非現(xiàn)実感があってよかった。 ※LDHが運営する格闘技系トレーニングジム「EXFIGHT」所屬。 加藤 わかります?!袱长螭嗜摔い郡樽顝姢坤恧Δ省工盲扑激?。竹內(nèi)力さんにちょっと顔が似てらっしゃるんで、カオルちゃん(岸和田少年愚連隊 カオルちゃん最強伝説』シリーズ)が若返ったような雰囲気がありますよね。 藤谷 あ~~~、三上さんのカオルちゃん、見たいかもしれません。これは書いておきましょう。 加藤 時任勇気さんのマーシーもめちゃくちゃかっこいい。最後に鈴蘭が助っ人に來るとき、時任さんが學ランじゃなくて、ちょっとオシャレなシルエットの服裝で來るじゃないですか。そのせいもあってマーシーが登場したとき「パリコレが始まった」と思いました。 藤谷 マーシーは刃牙の家みたいな落書きアパートに住んでるのも格好いいですね。秋田書店のマンガの登場人物だ。 加藤 役者として、風神と雷神も最高でした。三校連合が橫一列でガーッと歩いてくるシーンで、みんな歩き方がどうしてもきれいなんですよ。その中で風神雷神だけめちゃめちゃ肩を怒らせて歩いてて、ヤカラ感がすごくあった。特に陣さんが演じている風神は「轟は俺にくれよな」みたいなことを喫茶店で言うシーンで、ずっと貧乏ゆすりをしてるんですよね。あれもよかった。何も知らない人が見たら「上手な若手の役者さん連れてきたな」って思うのでは。僕は最初、THE RAMPAGEのメンバーだと気づかなかったです。キャラクターの特徴をつかむのがうまそうだから、ヤンキーモノに限らず今後いろんな映畫で観たい。あとは鎌坂高校の氷室(藤原樹)も。 藤谷 藤原さんは、ドラマ『明日、私は誰かのカノジョ』(MBS)のホストのはるぴしかり、いま性格に問題のある美形をやらせたら右に出るものはいないのでは? 加藤 最高ですね。あんなに楽しそうにメリケンサックを振るう人間はいないですよ。 藤谷 あんなピカピカの笑顔で金ピカのメリケンサックを。それこそ『くにおくん』世界の住人ですよ。 加藤 しかもしっかりタイマン張って負けてるのも込みで良い。負けて退場するのかと思いきや、最後の決戦では他校の2階に陣取ってビール瓶投げてて、終始一貫して最悪な感じがよかったです。バラ商の鮫岡(長谷川慎)も、ほとんどセリフがないのにしっかり強者の風格がありました。喫茶店で話を聞いてるときも、瀬ノ門の2人に全然心を開いていない感じが伝わってくる。 藤谷 そういう含みがあっていいですよね。本當に、アクションだったりひとつの所作だったりで、それぞれのキャラクターの背景に「何かあるんだろうな」とうかがえるものがある。いまや高橋ヒロシ作品世界は無限にスピンオフ作品が生まれていますし、「ザワ」でも『HiGH&LOW THE WORST 鳳仙學園日誌』(秋田書店)があるけれど、鎌坂とかバラ商もみんなスピンオフつくれそうなくらい良いキャラばっかりでしたね。 加藤 そしてその中にあって、大きな位置を占めたのが瀬ノ門ですよね。 藤谷 グローバルに活躍するK-POPグループ?NCTのYUTAさんという本當の“他校の大物”が來たわけですよ。NCTオタクの友達が映畫観に行って「観ましたよ、中本悠太主演のザワクロ!」ってLINEが來たんです。この感想が私、本當にうれしくて。ハイローは「推しに出てほしい映畫ナンバーワン」の座をまたひとつ揺るがないものにしたと思います。 ──ハイローの全員主役スピリット! とはいえ今回は本當にYUTAさんが主演かというくらいの出方でしたが。 加藤 こういうおいしい位置に外部の俳優(yōu)を呼んできて、しかもかっこよく撮ってくれる。だってこの映畫、始まりが中本くんじゃないですか。劇場で僕の隣に大學生くらいの女性が4人座ってたんですけど、あそこで全員「ふぉぉ!」って息を呑んでました。 藤谷 「顔、良(よ)!」ってなりますね。 加藤 中本くんは最初、感情を表に出さない演技をしていたからこれはシュワちゃん理論なのかな? と思ったんですけど、途中から普通に演技をしていて、それがちゃんとうまいんですよね。すごい子を引っ張ってきたなと思いました。アクションの説得力もあった。楓士雄との戦いで、すごく好きなところがあって。楓士雄は縦橫無盡に立體的に動くタイプだというのを、それまでのアクションで散々見せてきてるんですよね。須嵜はそれを防ぐために、體育館の隅に追い詰めて橫移動ができなくした狀態(tài)で蹴りまくる。そういうことを考えて戦えるタイプのキャラだというのをしっかり見せていた。三校連合の人たちが基本的にすぐ毆っていくスタイルの中で、一歩引いてる強キャラ感がすごくよかったです。 藤谷 そのNCTのオタクがいうには「須嵜と天下井の関係性は、NCTでのYUTAと○○の関係性とソックリなんですよ。主語を天下井から○○くんに変えるとNCT初期ヒストリーになります」とのことでした。つまり現(xiàn)実と合わせ鏡になってるところがあるんでしょうね。もちろんそのまま天下井みたいな人ではないでしょうけども。 加藤 あんなのがいたら大変ですよ! 藤谷 BE:FIRSTのRYOKIさんも、本當によくこんな役を……(目頭を押さえる)。 加藤 まずこの役を受けるのがえらいし、演じきってました。どこまで狙ってやったのかわからないけど、ちょっとぎこちなくて無理してる感じがあるんですよ。ハイロー特有の、體言止めを多用したセリフを無理して言っているのが「自分を強く見せなきゃ」って強迫観念に駆られてる天下井というキャラにぴったり合ってました。しかもアクション的な見せ場が一切ないのもすごい。このジャンル、この映畫に出てアクションしないってめちゃくちゃな損ですよね。 藤谷 天下井、マジで無抵抗の人間に腕ポキとか棒で毆るさまの記憶しかない。 加藤 一晩吊るした司に指を折られる體たらくで。 ──そんな干物みたいな言い方。 加藤 一晩吊るした司としか言いようがないじゃないですか。鉄パイプでボコボコにした後、縛ってさらに吊るしてるんですよ。そこまで追い詰めた相手に指を折られてるんだから、格好良いかっていったらかっこよくない。 藤谷 そう、格好悪いところをきっちり引き受けるのもすごい。きっとBE:FIRSTのオタクの皆さまも「RYOKI主演の『ザワクロ』最高!」って言ってるのでは。 加藤 本當に全員よかったので個別に話していくときりがないですね。それで、最後にこれをどうしても言いたいんですけど……若手俳優(yōu)がものすごくたくさん出てて、出番が數(shù)十秒でもその中で爪痕を殘せば勝ちというこの感じ、ほぼ『有吉の壁』じゃないですか? 藤谷 日テレだ! 加藤 HIROさんが「おもしろ不良高校生の壁、スタート!」って言って銅鑼がジャ~ンと。 ──平沼さんが佐藤栞里ちゃんですね。 加藤 2人で歩いていって「あ、誰かいますね」「おっ、メリケンサック! ヤバいねぇ」「合格でーす」って。いい意味でそういう場になってきてると思うんですよ。 後編は明日に続く! <プロフィール> 【轉載】