17あなたの愛が正しいわ~
本專欄僅供學習和作為交流資料使用??

17 夫婦間のルール【デイヴィス視點】
寢室を共にしてから、ローザが笑わなくなった。
僕以外の使用人たちには微笑みかけているので、正確には、ローザが僕に笑ってくれなくなった。
いつもニコニコと優(yōu)しい笑みを浮かべてくれていたのに、今のローザは僕のほうを見ようともしない。
少しでもローザとの時間をつくりたくて、ローザの朝食に時間を合わせたり、仕事から早く戻るようにしても、ローザとの會話が増えることはなかった。
僕にまったく興味を示さないローザを見ていると、ローザを冷遇していた自分を嫌でも思い出す。今では、僕とローザの立場は、完全に逆転していた。
ローザに冷たい態(tài)度を取られるたびに、僕は焦燥にかられて、いても立ってもいられなくなってしまう。きっと、ローザも僕に冷たくされているときは、こんな気持ちだったんだろう。
それでも、僕と違って、ローザは暴言を吐かないし、約束は必ず守ってくれた。だから、決められた日には、ローザは僕に身體を許してくれる。そのたびに、僕はまだ『やりなおせるんじゃないか?』と期待してしまう。
今日は、ローザに「話があるの」と事前に伝えられていた。ローザは、時間通りに僕の執(zhí)務室を訪れた。
身體のラインがわかる深緑色のワンピースを身にまとい、長い髪をゆるくまとめているローザは、とても魅力的だ。
僕は、つい先日、ローザと熱い夜を過ごしたことを思い出して頬がゆるんだ。
「ローザ、いらっしゃい。改まってどうしたの?」
ローザがソファーに座ったので、僕もローザの隣に座る。彼女の肩に腕をまわそうとすると、「デイヴィス、真面目な話だから」と拒まれてしまう。
「真面目な話って?」
ローザは、テーブルの上に書類を並べた。
「これは、あなたが今までに決めたルールをまとめたものよ」
そこには、『話があるときは、事前に約束をとりつけること』から始まり、『ダンスは踴らない』や『エスコートは會場でだけ』『寢室を共にするのは月に一度の決められた日だけ』など、ありえないルールが箇條書きで書かれていた。そして、最後に『これからは、相手に執(zhí)著せずに爽やかで程よい距離をたもつこと』という言葉でしめられている。
「僕はなんてひどいことを……本當にごめん。こんなルールはすぐに撤廃しよう!」
そういった僕に、ローザは「その必要はないわ」と淡々と告げた。
「撤廃しなくていいわ。そのかわり、これからは、あなたもこのルールを守ってほしいの」
「え?」
「だって、夫婦のルールを私だけが守っているのは、おかしいでしょう?」
僕を見つめるローザの瞳は、あいかわらず冷めている。
「でも……」
「デイヴィス、あなたが提案したことよ?」
「そうだけど……」
戸惑っている僕に、ローザは、別の書類を手渡した。
「それと、今後、このルールを変えるときは、私たち両方の同意があったときだけにしましょう。これは、そのことを誓う契約書よ。契約違反をした場合は、慰謝料が発生するわ」
「契約書に慰謝料って? わざわざそんなものをつくったの?」
コクリとうなずいたローザは、真剣そのものだ。
僕たち夫婦の間に契約なんて必要ないと言おうと思ったが、ローザが「今後もあなたと夫婦を続けるためには必要なことなの」と言ったので考えを改めた。
これを斷ってしまうと、ローザは僕と夫婦であることをやめてしまうかもしれない。
僕が書類にサインをすると、ローザはふわりと微笑んだ。その笑みの可憐さに僕は思わず見とれてしまう。
「ありがとうデイヴィス。初めてあなたと対等に話せた気がするわ」
「何を言って?」
ローザは、ニコリと微笑むと「書類の複製よ」と僕に手渡した。
「この書類は、専門家立ち會いの下でつくったから違反すると法的処置が加えられるわ。軽く考えないでね」
「わかったよ」
ローザが久しぶりに笑いかけてくれたので、このときの僕は浮かれてしまっていた。
「あ、そうだ。もうすぐ僕の誕生日だけど、準備は進んでいる?」
楽しい話をしようと話題を振ると、ローザの顔から笑みが消えた。
「誕生日の準備はしていないわ」
「どうして!?」
「だって、あなたは私の誕生日を祝っていないじゃない」
「それは……」
たしかに僕は今年、ローザの誕生日を祝っていない。ローザの誕生日を祝おうとも思っていなかった僕は、いつも通り遅くまで仕事をしてから家に帰った。
プレゼントの準備もしていなかったので、ジョンが準備してくれたものを數(shù)日後に渡したような気がする。
ローザは、たった今サインをした契約書を僕に見せた。
「デイヴィス、これからは、私にだけ何かをしてもらおうとするのはやめてね。伯爵夫人の務めは果たすけど、それ以外は、あなたがこれまでにしてくれたことだけをするわ。お互いに程よい距離を守りましょう」
「そ、そんな怖い顔をしないで、笑ってよ。ローザ」
ローザはクスッと笑う。
「あなた、鏡を見たほうがいいわよ?」
その言葉で、僕はハッとなった。もしかして、僕が今までローザに微笑みかけてこなかったから、ローザは笑ってくれなくなったんだろうか?
「デイヴィス、あなたの『愛』は、とても都合が良くて最高ね。やっぱりあなたの愛が正しいわ」
ローザの微笑みは、とても美しく、どこまでも冷たかった。

