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不破聖衣來×山縣亮太　リアル対談　逆境のさなかに得た気づき

? ? 5月にあった陸上の日本選手権女子1萬メートルに、長(zhǎng)距離界の新星、不破聖衣來（せいら）（拓大）は出場(chǎng)しなかった。

　陸上世界選手権（米?オレゴン州）の代表入りがかかっていたが、その道はスタートラインに立つ前に斷たれた。

　故障明けで調(diào)整が間に合わず、下した苦渋の決斷だった。

　未來を見據(jù)えた選択には、同じく手術(shù)明けで日本選手権を欠場(chǎng)した男子100メートル日本記録保持者?山縣亮太（セイコー）の影響もあったという。

　苦難のときに、自分とどう向き合うのか。

　2人が対面で語り合った。

2人の出會(huì)いは5年前

　――山縣と不破が初めて出會(huì)ったのは5年前。今回の対談は、そのとき以來の再會(huì)となる。

不破　中學(xué)3年のときに出たジュニアオリンピックで、表彰式のプレゼンテーターを山縣選手がしていました。私は別の選手から表彰されたのですが、「山縣選手にも控室で會(huì)えるよ」と係の人に言われて、寫真を撮ってもらいに會(huì)いに行きました。

山縣　プレゼンテーターをやったことは覚えていますが、こんなに素晴らしい選手だったとは存じ上げなかったです（笑）。

　――不破は大學(xué)1年生だった2021年10月、全日本大學(xué)女子駅伝の5區(qū)で従來の區(qū)間記録を1分以上更新した。12月には1萬メートルで30分45秒21の日本歴代2位をマークし、世界選手権の參加標(biāo)準(zhǔn)記録も突破するなど一躍注目を集めた。

山縣　不破選手は肝が據(jù)わっているなと。自分が大學(xué)1年のときは全然だめだったので、環(huán)境が変わる1年目で記録を出すのはすごいなと思いました。

不破　入寮して最初の3カ月は貧血で思うように走れない時(shí)期もありました。すぐには環(huán)境の変化に対応できませんでしたが、原因がはっきりしていたから、それを改善して徐々に記録を伸ばせました。

　――不破は世界選手権の代表候補(bǔ)筆頭とみられていたが、1月に故障。4月から本格的な練習(xí)を再開したものの、日本選手権には間に合わなかった。

? ??世界陸上への出場(chǎng)が斷たれたあの日、不破は何を思っていたのか。同じようにけがに苦しんできた山縣も経験談を伝えます。対談が進(jìn)むにつれ、突然注目を浴びた時(shí)の戸惑い、趣味、短距離と長(zhǎng)距離の走りの違いなど、話題は広がっていきます。

不破　狙っていた世界選手権を斷念することにつながるのはわかっていたけど、理解できていない感じがした。日本選手権の様子を寮で見て、なんで自分はここにいるんだろう、競(jìng)技場(chǎng)で走っていたはずなのに、と初めて悔しさが強(qiáng)くなりました。

　――山縣も19年は気胸、20年は右ひざの痛みで日本選手権に出られなかった。

山縣　19年に欠場(chǎng)したときは、正直ほっとしました。練習(xí)ができていなくて、走りもうまくいっていないから良い結(jié)果が出るはずない。見ている人は期待するし、山縣は本番に強(qiáng)いからやってくれるはずだとか、調(diào)子が良くなくても日本選手権は合わせてくるだろうとか。ありがたいけど、その期待を裏切りたくなくて苦しかった。欠場(chǎng)できる理由を探しに病院に行って、「何か診斷をもらいたい」とも思っていました。だから、不破選手や監(jiān)督、コーチがちゃんと自分たちで欠場(chǎng)の選択をしたのはすごいと思います。

不破　私も、本當(dāng)に世界選手権の內(nèi)定を決められるか自信はなかったので、少しほっとしていました。

山縣の言葉が後押しに

　――不破は出場(chǎng)を見送るにあたり、山縣がメディアで発信していた言葉がヒントになったという。

不破　「競(jìng)技はこの先も続くから、先を見據(jù)えた選択をとる手段もある」と話されていたと聞きました。山縣選手のようなすごい選手でもそういう決斷をしなきゃならないときもある。自分も今だけで終わりたくないと思ったので、そこで決斷しました。

山縣　競(jìng)技者として今年1年で全てが決まるなら話は別だけど、きっと不破選手の志は世界の高いところにあると思う。日本歴代2位という素晴らしい記録を出した分、それだけ體には負(fù)擔(dān)がかかっている。體をいたわることも必要。破壊と再生のバランスをとらないと?！割B張ろう」「やりたい」と思うばかりだと（體は）回復(fù)してくれない。自分は年齢やけがを重ねて気づいたから、若いうちにそういう経験をして、しかも長(zhǎng)い目で見た選択ができたのは素晴らしいと思います。

　――山縣も昨秋、右ひざを手術(shù)した。16年ごろから違和感があったもの、これまでは対癥療法をしていた。今は、2～3年の中長(zhǎng)期のプランで根本的な改善を試みている。

山縣　けがはチャンスみたいなものでもある。體の使い方の癖とか、何か変えなければいけないところを教えてくれる存在。けがをする度に僕が思っていたのは、チャンスだと。これを乗り越えて根本的に治すことができれば、自己ベストで走る自信も必ずわいてくる。

不破　自分もけがをしたときは、今しかできないことをやる。走れない分、その時(shí)間を補(bǔ)強(qiáng)にあてることができると考えて、できる練習(xí)をやろうと捉えている。山縣選手の話を聞いて、自分の考えは合ってたなと思います。

山縣　自分は大學(xué)時(shí)代、1人で競(jìng)技をやってきました。けがやスランプで何か変えたいけど何をどう変えたらいいのか分からない時(shí)期があって、去年からスプリントコーチをつけました。理學(xué)療法士さんとかいろんな人の力を借りて、動(dòng)きやいろんなものが変わってきた。自分で考えるのも大事ですけど、それにも限界がある。日本記録とかそれをさらに更新していくレベルでやる選手は、いろんな人の協(xié)力がないといけないなと思いました。

共通點(diǎn)を探す

　――周りの支えを受ける上で、山縣が大切にしていることがある。

山縣　サポートしてくれる人たちはいろんなアドバイスをくれる。それぞれを獨(dú)立したものとして受け止めるのではなく、共通點(diǎn)を探すんです。つなげていくのは自分の頭でしかできません。合うとか合わないとかで簡(jiǎn)単に決めるんじゃなくて、それぞれのアドバイスを両立させるやり方を自分で考えることが大事です。

不破　私も同じです。いろんなアドバイスをいただけるのはありがたいけど、正反対とまではいかなくても、全然違うときもあります。でも、考え方を変えると共通點(diǎn)が見つかるので、自分の走りにつなげていけるように意識(shí)しています。

　――山縣は12年ロンドン大會(huì)から21年の東京大會(huì)まで3大會(huì)続けて五輪を経験してきた。

山縣　大事なのは、五輪だからとか、そういうプレッシャーを自分にかけすぎないこと。自分が100%の力を発揮するのが大事であって、大會(huì)の大小は問題ではないと自分に言い聞かせてきました。

不破　自分は大會(huì)が大きくなる方が楽しみというか、どこまでこのレベルで戦えるんだろうと思うタイプです。

山縣　良いですね。大きい大會(huì)だからと萎縮しちゃう人もいるし、自分はけっこう緊張する。ケンブリッジ飛鳥選手（ナイキ）なんかは大きい大會(huì)になると、「いや、わくわくしてきました」みたいなスイッチが入る。うらやましいです。

不破　私もどちらかといったらそういうタイプかもしれません。

注目への葛藤

　――不破は昨年の飛躍で一気に注目の的となり、周囲の見る目が変わった。とまどいはなかったのか。

不破　自分が1番実感がなくて、取り上げられたり、注目してもらったりすること自體に違和感がありました。自分では、中學(xué)や高校と変わらず自己新記録を更新している感覚。1萬メートルは初めて出場(chǎng)したので、どれぐらいのタイムが速いとかもいまいちイメージできていなくて。未知の世界に飛び込んだ感じだったので、余計(jì)実感がわかなかった。自分が日本歴代2位で走れると思っていなくて、頭が追いつきませんでした。

山縣　自分の場(chǎng)合、9秒臺(tái)というわかりやすいターゲットがあったから、中學(xué)、高校のときからそれを意識(shí)していました。10秒1がどれぐらいすごいとか、10秒2ってどんな感覚なのかを常に意識(shí)していたので、自分がもし大學(xué)1年で10秒03ぐらいで走っていたら舞い上がっていたと思います（笑）。周りと自分の溫度差の戸惑いはありますよね。16年リオデジャネイロ五輪の400メートルリレーで銀メダルをとったときは、現(xiàn)地と日本の盛り上がりが一致しない部分はありました。不破選手は今、そういうギャップの中で競(jìng)技をやられているのかな、と感じています。東京五輪前に9秒95を出して選手団主將にもなって取り上げていただいたけど、自分は不安の中で競(jìng)技をやっていた。五輪に強(qiáng)いからベストを出すかも、みたいな聲と現(xiàn)狀にギャップがあって、余裕がなかったです。

　――注目度が上がると、取材対応も多くなる。

山縣　相手が求めている答えを言わなきゃみたいな気持ちが大學(xué)生のときはあって、「9秒臺(tái)出せそうですか？」と聞かれたときに、自信がなくても「出せます」と言っていた。けがをしていても「けがをしています」なんて言いたくなかった。弱みを見せたくなくて、人の目を気にしていました。でも現(xiàn)狀は現(xiàn)狀だし、強(qiáng)がって変えられるものではない。素の自分を出して、それを受け入れてもらう努力をする考え方に変わりました。

不破　ライバルとかには弱いところを見せたくないんですけど、そう思うことで自分を苦しめちゃっている部分がある。今弱くても、復(fù)活したら絶対勝つという思いを持つようにしています。

試合で音楽を聴く？

　――この機(jī)會(huì)に、互いに聞いてみたいことは。

山縣　ピアノを弾かれるんですよね？

不破　趣味程度で。すごい曲は弾けないんですけど、ディズニーの音楽を弾いたり、聴いたりします。

山縣　音楽が好きなんですね。

不破　今はやっている曲より、ディズニーの音楽を夜に聴きます。

山縣　試合の前も聴いたりする？

不破　試合の時(shí)はあまり聴かないです。

山縣　集中するためにイヤホンで音楽を聴く人もいますよね。自分はイヤホンは著けない。桐生祥秀選手（日本生命）とか、音楽がメンタルをつくるみたいなタイプもいますね。

不破　自分はスイッチを入れるためというより、リラックスのために音楽を聴きます。

山縣　ピアノの音ってリラックス効果があるんだよね。自分も寢る前にピアノの音をユーチューブで流して聴く。好きが高じてピアノも始めちゃったんだけど、全然弾けないことにしてほしい（笑）。

トップスピードの出し方

不破　私は競(jìng)技のことを聞いてみたいです。短い距離を走ることがあるんですけど、全力で走ってもスピードが上げられない。100メートルを?qū)熼Tでやっている選手って、どの瞬間に自分が出せるスピードの限界點(diǎn)が來ているのか、分かりますか？

山縣　わかるわかる。自分のトップスピードは、100メートルだとだいたい55メートルぐらいに來る。そこぐらいで足がもう回らなくなる。だから、そこからは走り方を変えて走ります。長(zhǎng)距離の選手って、短い距離を走ったときに本気を出せない、とよく聞くんですけど、その感覚がわからないんですよね。上げたくても上げられない、みたいな。そういうことってありますか？

不破　そんなのばっかりです（笑）

山縣　長(zhǎng)距離選手に「短い距離を本気で走って」と言っても本気で走っていないように見える。リラックスして走っているように見えるんですけど、「いや、これが本気です」みたいな。

不破　100メートルだけで全部出し切るのはすごいなと思います。

山縣　30メートルまでに全力を出す走り方をすると、足だけ回しているというか、走りのタイミングがずれる。僕の場(chǎng)合、60メートルで全力を出せるような意識(shí)で走ると1番良い。そこで足の回転數(shù)をマックスにするイメージです。

不破　ラストスパートはスピードが勝負(fù)の分かれ目。そこで勝つか負(fù)けるかが決まる。競(jìng)っているのが分かっていても、自分のスピードの限界が來てそれ以上出せない、みたいな感覚が私はあります。

山縣　スピードを上げるのって簡(jiǎn)単と言ったらいけないが、それだけの負(fù)荷をかければ出るようになるんです。ジャンプ系や神経系の練習(xí)をやれば伸びると思う。難しいのは、練習(xí)に耐えられる體を作ること。負(fù)荷をかけたいけどかけられない、という狀況で今の男子短距離が若干低迷していると思う。みんな、できるならもっとスピードを出してハードワークをしたいけど、どこかが痛くなる。それが男子短距離の現(xiàn)狀だと思う。僕の今の課題は、けがをしないための技術(shù)の習(xí)得や、左右差をなくしていくトレーニング。土臺(tái)があってからのハードワークだと思います。不破さんはこれからけがが治って、世界を見據(jù)えたトレーニングをすると考えたときに、強(qiáng)度もおそらく上がっていくと思う。ちょうど今、土臺(tái)を作る大事な時(shí)期なんじゃないですかね。

不破　去年から食事を改善して土臺(tái)を作っている。けがをきっかけに走りの癖も知れたので修正できる部分がある。これからトレーニングをして、けがも治していきたいと思います。

不破はオレゴンへ

　――15日から始まる世界陸上は、どんなところに注目するのか。

不破　自分が出られるかもしれない1萬メートルをしっかり見て、それを頑張る原動(dòng)力にしたいです。

山縣? ? テレビで見ます。自分はトラック、フィールドを問わず良い動(dòng)きをする選手がいたら見ちゃうので、そういうところを重點(diǎn)的に。パリ五輪は、不破選手と一緒に出たいですね。少し時(shí)間をください。

　――長(zhǎng)期的な目標(biāo)を立て、練習(xí)を積んでいる段階だ。

山縣　もういい年齢ですし、記録を狙えるチャンスも限られてくると思うが、9秒83のアジア記録を狙います。パリ五輪の年に出せるように頑張ります。

不破　まずはパリ五輪に1萬メートルで出るのが最初の目標(biāo)なんですけど、その先の28年ロサンゼルス五輪でマラソンに出て金メダルを取るのが1番大きな目標(biāo)。そこに向けて頑張っていきたいと思います。（構(gòu)成?加藤秀彬）

やまがた?りょうた　1992年、広島県出身。修道高から慶大を経てセイコー所屬。男子100メートルで2012年ロンドン、16年リオデジャネイロの両五輪で準(zhǔn)決勝に進(jìn)出した。21年6月の布勢(shì)スプリントで日本新記録の9秒95をマークし、東京五輪では日本選手団主將を務(wù)めた。

ふわ?せいら　2003年、群馬県出身。高崎市立大類中學(xué)3年時(shí)に女子1500メートルで全國(guó)中學(xué)校體育大會(huì)優(yōu)勝。群馬?健大高崎高を経て、21年4月に拓大へ入學(xué)。昨年12月、初出場(chǎng)した1萬メートルで日本歴代2位の30分45秒21をマークした。