第12話　ブラック企業(yè)、ダメ、ゼッタイ
第12話 ?黑心企業(yè)、不行、絕對不行



「這個證明要先在這里得出這個值……」


「啊、原來如此！　然后和x的值用等式聯(lián)立！」


??學(xué)習(xí)會已經(jīng)開始了一個小時了、進(jìn)展十分的順利

原本紫條院同學(xué)就是個認(rèn)真的人、所以干勁滿滿


「話說回來新浜君的教導(dǎo)方法真的是十分淺顯易懂啊……是有過什么經(jīng)驗(yàn)嗎？」

「嘛、稍微有點(diǎn)吶……」


? 我沒有過教誰學(xué)習(xí)之類的經(jīng)驗(yàn)。


? 我現(xiàn)在參考的是指導(dǎo)公司新進(jìn)社員的指導(dǎo)法。


? 我曾經(jīng)打工的黑心企業(yè)中面向新人的指導(dǎo)幾乎可以說沒有、只有「去工作中邊看邊學(xué)」這樣亂來的指導(dǎo)方針。

但是這樣教出來的新人連戰(zhàn)力都算不上、反而會拖后腿導(dǎo)致我的睡眠時間死了、于是我一個人制作了面向新人的教學(xué)手冊。

而為了運(yùn)用那個需要注意以下4點(diǎn)

?工作的意圖?用完成形表示出來（比如為了A的說明會而去制作B的文案）
?展示為了到達(dá)完成形的需要經(jīng)歷的步驟來讓其明白如今自己到底處于哪一步
?讓新人放松下來為其創(chuàng)造容易提問的環(huán)境
?總之多多夸獎
　

「最后把列個這里和這里相等的式子就可以了。所以考慮到這里x的值無論取什么都符合的話……對對！　你這不是很懂嗎紫條院同學(xué)！」


「呼呼、這都是你教的好。啊、還有就是這里――」

每當(dāng)我在關(guān)鍵的節(jié)點(diǎn)進(jìn)行表揚(yáng)時、紫條院院同學(xué)就會害羞起來。


（對對、像這樣的氛圍是必須的。能夠輕松提問的氛圍）

在學(xué)習(xí)會剛開始后、紫條院同學(xué)可能是由于出于內(nèi)心對于學(xué)習(xí)的苦手意識、緊張地比平時的話語更加稀少了起來。


? 但是現(xiàn)在她卻不斷的提出問題、不懂的地方也不會退卻而是勇于提問。

我希望的就是這種狀態(tài)。

（最糟糕的就是變成那種難以提問的僵硬的空氣。由于無法提問所以不懂的地方仍然維持不懂的樣子、相關(guān)的信賴關(guān)系也仿佛無法加深。）

由于我新人時期的上司的「不管有什么不懂的都來問我哦」→「這種事就別一一來問我??！」→「你犯錯了！？　為什么不來找我商量商量呢！」的不講理的三連組合導(dǎo)致提問變成一件很恐怖的事情、無法知道工作上正確做法的時期也是有的。

所以想去教別人一些東西的時候、還是盡可能的去夸獎一下對方吧。

夸獎不僅僅是作為清楚見證對方努力的證明、而且還是能驅(qū)動人心的汽油

「呼~……稍微休息一下吧。已經(jīng)一個半小時了」

「好的。那個就是……不好意思占用了你這么長的時間。請允許我日后再來報答這份恩情……」

「不不不、別太放在心上。對我來說也是學(xué)習(xí)」

不如說教導(dǎo)紫條院同學(xué)學(xué)習(xí)的這類甜美的回憶、是即使收費(fèi)也沒關(guān)系的我想品嘗的味道。


「新浜君最近感覺對學(xué)習(xí)十分上心……是已經(jīng)決定好了畢業(yè)后的去向了嗎？」

「啊、雖然已經(jīng)決定了要去上大學(xué)、但是還在煩惱「到底要去哪種等級的大學(xué)呢」這樣的」

我的第二人生的未來到底要選哪個呢

　

這是我自從回到過去后就一直煩惱的事情、但是唯一可以確定的就是堅決拒絕黑心企業(yè)。

那么就應(yīng)該劍指過去記憶中被稱為良心企業(yè)的那些公司了、但是由于全部都是些大企業(yè)所以招聘相當(dāng)困難、所以還是去所合適的大學(xué)吧。

「嘛、就是盡量去好一點(diǎn)的大學(xué)然后去正經(jīng)點(diǎn)的公司打工這類常見的回答吧。紫條院同學(xué)你呢？」


「誒多……雖然父親大人說已經(jīng)幫我安排好了讀完大學(xué)后的就職地方、但是像這樣的稍微有點(diǎn)狡猾了所以我有點(diǎn)提不起勁?！?br>

??真是認(rèn)真啊。
? 作為大公司社長的父親安排的去向一定是很好的地方吧。

「但是由于不知道到底哪個工作適合自己……在茫然地看著招聘海報時就被『歡迎任何人』、『如家般舒適的職場』、『被評價為熱情的職場！』之類的文字吸引了……」

「誒、是這樣――誒？」


??不、等一下。剛才說了什么？


? 歡迎能干的新人？如家般舒適的職場？被評價為熱情的職場？


「我想先在那些職務(wù)中挑個『誰都可以進(jìn)的』『看上去能夠進(jìn)去的』先去就職試試、然后就靠『無論多么艱辛和惡劣都要忍耐』的努力吧――」


「不行————————！」


「hiya！？」

（擬聲詞，那種嚇到了聲音）

你在說些什么恐怖的事情?。。?br> ? 那個計劃簡直就是通往地獄的直通車啊


「那個……就是、新浜君你突然怎么了……？」


「紫條院同學(xué)請你好好聽我說、可以嘛」

驚訝的紫條院同學(xué)把目光投向了我認(rèn)真的臉上。


「像這樣盲目聽信招聘廣告是不行的！」


「誒っ！？」

「『不管什么人都十分歡迎』是由于工作十分嚴(yán)苛導(dǎo)致辭職的人很多的意思、『如家般舒適的職場』則是社長一族獨(dú)裁的情況居多！『被評價為熱情的職場』簡單來說就是額定工時或加班很多?。ā鶄€人感想）」


? 因?yàn)槲仪笆赖墓ぷ鲉挝缓喼本褪沁@種海報公司的感覺。

「當(dāng)然并不是全部的公司都是這樣、正經(jīng)的公司也有很多！　但是即使是認(rèn)準(zhǔn)了這些引人注目的廣告標(biāo)語、如果采用『誰都可以進(jìn)』『看上去能夠進(jìn)』這類的選擇方法的話、可是會被牙白企業(yè)抓住壓榨的哦！」


「誒多、牙白的企業(yè)是怎樣的……」

「最常見的就是脫離常軌的嚴(yán)重勞動。我……我親戚就每天從8點(diǎn)一直工作到晚上12點(diǎn)以后」


「誒……？　這不就聽上去感覺除了睡覺以外的時間全部拿去工作了嗎……」

「就是這樣。而且超出正常工作時間的加班會被當(dāng)成『完全沒有這種事』、所以不會付加班費(fèi)」


「？？？」


　嗯、這個反應(yīng)是正確的哦紫條院同學(xué)。
? 雖然我對于我的說明也只能于以意義不明的評價。

「雖然現(xiàn)在說的是很殘酷的部分、但是像這樣的牙白的企業(yè)是確實(shí)存在的。所以采用『哪個都可以』這樣的選擇方法是會吃苦頭的」


「是、是這樣的嗎……！」

我把過去銘刻在我身上已經(jīng)到達(dá)討厭程度的情報傳遞給紫條院同學(xué)時、紫條院同學(xué)仿佛受到?jīng)_擊般發(fā)抖了起來

「我由于不知道這種事所以會感到吃驚……但是新浜君為什么會知道的這么詳細(xì)呢？」

「不、誒多就是……就是從剛才我提到的親戚那里聽了很多。他由于在黑心企業(yè)就職所以在30歲之前就已經(jīng)看過地獄了」

「原來如此、原來是這樣??！　雖然我以前就聽過幾次黑心企業(yè)但是從剛才的對話來看還真是殘酷啊……」


「啊、不是人呆的地方啊」

那些被塞滿了世間一切邪惡的混蛋般的奴隸日子、身心被摧殘殆盡的各種記憶再次涌上心頭。

「罵聲仿佛理所當(dāng)然般。里面夾雜著“對父母的問候”、人格的否定、該有的應(yīng)有盡有。加班費(fèi)自然是沒有、上司把自己的工作推諉給部下、如果有錯誤就是部下的鍋、功勞則是自己的。一個月有幾天休假算好的了、而在這樣貴重的休息日時不時也會有職場上打來的電話把人叫回去上班。」


? 越說就有越多的令人作嘔的記憶涌現(xiàn)出來
? 滯留在內(nèi)心的抱怨停不下來了

「繁忙的時期甚至?xí)萑朐诠舅瘞字芩?、除了工作以外的行為全被否定的窘境。?dāng)然會有倒下的家伙、但是上層的人根本就不會進(jìn)行憐憫慰問甚至還會罵沒有骨氣的人。而且就算是這么忙也要寫把對社長寫的書的觀后感用50頁以上的稿紙寫出來」


「誒多、那個……我們不是在說戰(zhàn)時拷問的話題吧？」

「非常遺憾從頭到尾都是在說現(xiàn)代日本的工作的話題」


? 這樣羅列下來看的話那還真是不是人呆的環(huán)境啊

在一天天過量的疲勞摧殘下大腦變的一片空白、無法認(rèn)識到自己的慘狀的這點(diǎn)也十分讓人作嘔。

「如果抱著哪都可以的態(tài)度的話、就會有可能一不小心邁入這樣的類似監(jiān)獄般的地方……」

「啊、還有如果在這種地方認(rèn)真地抱著『不管面對什么艱辛和使壞都要忍耐下來』的努力的話內(nèi)心絕對會崩壞的」

對、在未來紫條院同學(xué)確實(shí)會這樣
? 把這樣可愛美好的內(nèi)心——丟失了


? 唯獨(dú)這點(diǎn)……唯獨(dú)這點(diǎn)是我死也要阻止的

「在親戚對我延綿不斷地述說著這樣的話題時我也感動害怕起來、開始認(rèn)真地去思考起了自己的將來。比以前更加努力學(xué)習(xí)也是出于這個理由?！?br>

「誒、我也有點(diǎn)在不學(xué)習(xí)就完蛋了的感覺……！」


? 聽到了基于實(shí)際體驗(yàn)的黑心企業(yè)的真實(shí)狀態(tài)、紫條院同學(xué)開始害怕了起來
? 好耶、這樣就進(jìn)一步遠(yuǎn)離了紫條院同學(xué)會在就職地迎來破滅的flag


「但是光是聽著這樣的話題就馬上開始改變自己的新浜君還真是偉大啊……。像我這樣的人雖然腦袋里理解了但是還是無法做到突然開始改變自己?！?br>

「不、偉大什么的沒有哦……真的」


　我只是在人生的第二周目明白了未來并不是甜美的這個事實(shí)而已。


? 在1周末的高校時代我也隱約地懷抱著對將來的不安

但是我卻無視了這個


? 沉浸在即使什么都不做未來也總會有辦法的孩子般的樂觀中
? 而那個代價就是那份10年以上的社畜生活。


（對于紫條院同學(xué)也是同樣的道理。只是期待著某天突然發(fā)生戀愛喜劇般的事件發(fā)生、然后關(guān)系親近變成戀人這樣的……）


? 這樣的事件只是等著是不會發(fā)生的


? 但是如果是去自己引發(fā)的話100％會發(fā)生


（所以、這次絕對不會放松準(zhǔn)備。這次絕對不會迷茫。這次一定要――）


? 向她告白
? 想讓回到過去后再次迷戀上的這個少女幸福


??學(xué)習(xí)也是為了提高自己而去努力的一環(huán)


「好了、休息也完成了！　接下來一起學(xué)化學(xué)吧」


「好、請多多關(guān)照咯老師！」


? 眺望著紫條院同學(xué)耀眼的笑顏我們再次開啟了學(xué)習(xí)

把和紫條院同學(xué)并排坐在一個課桌上的喜悅之情巧妙的隱藏起來、始終擺出一副紳士的表情。

祝各高考的同學(xué)高考順利，能選擇自己心儀的未來

以下為日文原文

第12話　ブラック企業(yè)、ダメ、ゼッタイ



「この証明は先にこっちに値を出して……」



「あ、なるほど！　それでXの値とイコールになるんですね！」



　勉強(qiáng)を始めて一時間ほど経つが、進(jìn)行はなかなかスムーズだ。

　元々紫條院さんは真面目だしやる気が溢れているのが大きい。



「それにしても新浜君の教え方は本當(dāng)にわかりやすいです……何か経験があるんですか？」



「まあちょっとね……」



　誰かに勉強(qiáng)を教えた経験なんてない。



　俺が今參考にしているのは新人社員への指導(dǎo)法だ。



　俺がいたブラック企業(yè)は新人に対する研修をまるでやらず、仕事は見て覚えろという滅茶苦茶な方針を取っていた。



　しかしそれでは新人が戦力どころか足手まといになり俺の睡眠時間が死んでしまうので、俺は獨(dú)自に新人用マニュアルを作ったのだ。



　そしてそれを運(yùn)用するために以下の4點(diǎn)を気をつけた。



?仕事の意味?完成形を示す（Aの説明會のためにBの書類を作るなど）

?完成形に至るための順序を示して今自分がどこをやっているか理解させる

?新人をリラックスさせて質(zhì)問しやすい雰囲気を作る

?とにかく褒める

　

「最終的にこことここがイコールになる式を作ればいいんだ。だからここのXの値がいくつなら都合がいいか考えていくと……そうそう！　なんだすぐわかるじゃないか紫條院さん！」



「ふふ、教え方がいいからです。あ、それとここのことなんですけど――」



　俺が要所要所で褒めると、紫條院さんは恥ずかしそうにはにかんだ。



（そうそう、こういう雰囲気が必要なんだよ。気軽に質(zhì)問できるゆるい空気が）



　勉強(qiáng)開始直後の紫條院さんは勉強(qiáng)への苦手意識からか、普段より言葉少なめで緊張していた。



　だけど今はどんどん質(zhì)問を出すし、わからないことに萎縮しない。

俺が狙ったとおりの狀態(tài)だ。



（一番マズいのは質(zhì)問しにくい固い空気になることなんだよな。質(zhì)問できないからわからないところがわからないままだし、信頼関係もまるで深まらない）



　俺が新人の時は上司の「わからないことはなんでも聞けよ」→「そんなこといちいち聞くな！」→「ミスした??？　なんで俺に相談しなかったんだ！」の理不盡三連コンボで質(zhì)問が怖くなってしまい、仕事の正解がわからなくなった時があった。



　だから何かを教える時、相手を可能なかぎり褒めることにしている。

　褒めるということは相手の頑張りを見ている証拠であり、褒められることは人間の心を動かすガソリンなのだから。



「ふぅ……ちょっと休憩するか。もう一時間半もやってるし」



「はい。あのその……とても時間を使わせてしまってごめんなさい。この埋め合わせは後日させて頂きますから……」



「いやいや気にしなくていいって。自分の勉強(qiáng)にもなるし」



　むしろ紫條院さんに勉強(qiáng)を教えるなんてオイシイ思いは、金を払ってでも味わいたいのだ。



「新浜君は何だか最近とても勉強(qiáng)していますけど……もう進(jìn)路を決められたんですか？」



「ああ、大學(xué)に行こうとは思ってるけど、どのくらいのランクにするかで悩んでいる感じかな」



　第二の人生の進(jìn)路をどうするか？

　これは過去に戻ってからずっと悩んでいるが、一つだけ確定しているのはブラック企業(yè)は絶対お斷りということだ。



　ならば目指すはかつての記憶でホワイトと言われていた企業(yè)だが、そこはいずれも大企業(yè)でことごとく入社が難しいので、やはりそれなりの大學(xué)を狙う必要がある。



「まあ、なるべく良い大學(xué)に行ってちゃんとした企業(yè)に勤めたいっていうありきたりな話だよ。紫條院さんはどうするんだ？」



「ええと……大學(xué)を出た後はお父様が就職先を用意すると言うんですけど、そういうのはちょっとズルいので気が進(jìn)まないんです」



　真面目だなぁ。

　大會社の社長である父親が用意するからにはかなり良いところだろうに。



「でもどういう仕事が自分に合っているかわからなくて……漠然と求人のポスターとか見てると『どんな人でも大歓迎』とか『アットホームな職場』とか『熱意が評価される職場です！』みたいな言葉には惹かれますけど……」



「へぇ、そうなん――え？」



　いやちょっと待て。今なんて言った？

　若手歓迎？　アットホームな職場？　熱意が評価される職場？



「それらの職種の中からとにかく『どれでも』『入れそうなところ』に就職してみて、後は『どんなに辛くても意地でも我慢して』頑張ってみようかなって――」



「だめだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！」



「ひゃあ??？」



　なんて恐ろしいことを言うんだ??？

　そのプランはほぼ地獄への直行便でしかないよっ！



「あの……その、どうしたんですか新浜君……？」



「いいか、よく聞くんだ紫條院さん」



　目を白黒させる紫條院さんに俺はガチな顔で向き合う。



「そんなキャッチフレーズを無警戒で鵜呑みにしちゃだめだ！」



「ええっ！？」



「『どんな人でも大歓迎』はキツすぎて辭める人が多すぎるって意味で、『アットホームな職場』は社長の一族が獨(dú)裁してるケースが多い！　『熱意が評価される職場』は要するにノルマや殘業(yè)が酷いってことだ?。ā鶄€人的感想）」



　なにせ俺の前世の勤務(wù)先がまさにそんな感じのポスターだったからな！



「もちろん全部がそうじゃないし、ちゃんとしたところもいっぱいある！　けどそういうキャッチコピーを見定めたとしても『どれでも』『入れそうなところ』なんて選び方じゃヤバい會社に捕まってしまう！」



「ええと、ヤバい會社というのはどういう……」



「まず一番あるのが常軌を逸した重労働とかだな。俺……いや俺の親戚なんて毎日朝8時から夜12時以降まで働いていたそうだ」



「え……？　それって寢る時以外全部働いているみたいに聞こえるんですけど……」



「そのとおりだ。そして勤務(wù)時間以上働いた分は『なかったこと』になって、殘業(yè)代は支払われない」



「？？？」



　うん、その反応は正しいよ紫條院さん。

　俺も自分で言ってて意味不明としか言いようがない。



「今言ったのは特にひどいとこだけど、そんなヤバい企業(yè)は確実に存在するんだ。だから『どこでもいい』なんて選び方だとひどい目に遭う」



「そ、そういうものなんですか……！」



　俺がかつて嫌というほど身に染みた情報を伝えると、紫條院さんは衝撃を受けた様子で震え上がる。

　

「そんな事情は知らなかったから驚きました……けど新浜君はどうしてそんなことに詳しいんですか？」



「いや、ええとそれは……さっき言った俺の親戚から色々聞いたんだよ。ブラック企業(yè)に入ってしまって30歳になるまで地獄を見たそうだ」



「なるほど、そうだったんですね！　それにしてもブラック企業(yè)って何度か聞いたことがありますけどさっきの話からするに本當(dāng)にひどいんですね……」



「ああ、人間がいるところじゃない」



　この世すべての邪悪を詰め込んだクソのような奴隷の日々が、心身を抉り潰された數(shù)々の記憶がフラッシュバックする。



「罵聲は當(dāng)たり前で親の悪口も人格否定も何でもありだ。殘業(yè)代は當(dāng)然のようにゼロで、上司は自分の仕事を部下に丸投げしてミスがあれば部下のせいで手柄は自分のものにする。一ヶ月に數(shù)日休めればいいほうで、そんな貴重な休みもたびたび職場から攜帯で呼び出される」



　言えば言うほど忌まわしい記憶があふれ出てくる。

　胸の內(nèi)に溜まっていた愚癡が止まらない。



「繁忙期は寢袋を持って會社に何週間も泊まるハメになって仕事以外の行動ができない。當(dāng)然倒れる奴も出てくるけど上層部は労るどころか根性なしのクズだと罵る。そしてそれだけ忙しくても社長の書いた本の感想文は原稿用紙50枚以上で提出しないとならない」



「ええと、その……戦時中の拷問の話じゃないんですよね？」



「殘念ながら最初から最後まで現(xiàn)代日本の仕事の話なんだ」



　こうして羅列すると改めて人間のいる環(huán)境じゃなかったなアレは。

　日々の超絶的な疲労のせいで頭がパーになって、自分の慘狀を認(rèn)識できなくなるのもいやらしいところだ。



「どこでもいいなんて言ってたら、そんな刑務(wù)所みたいなところにうっかり入ってしまう可能性があるってことなんですね……」



「ああ、そしてそんなところで真面目に『どんなに辛くても意地でも我慢して』頑張ると絶対に心が壊れる」



　そう、紫條院さんは未來においてまさにそうなった。

　こんなにも愛らしくて素敵なその心を――失ってしまったんだ。



　それだけは……それだけは死んでも阻止しないとならない。



「親戚がそういう話を延々と語ってくれたから俺もビビって將來は真面目に考えるようにしたんだ。以前より勉強(qiáng)するようになったのもそういう理由だよ」



「ええ、私ももっと勉強(qiáng)しなきゃって気になってきました……！」



　実體験に基づくブラックの実態(tài)を聞かされて紫條院さんは震え上がる。

　よし、これで紫條院さんが就職先で破滅するフラグはまた一歩遠(yuǎn)ざかったな。



「でもそういうお話を聞いただけですぐに自分を色々と変えてしまうなんて新浜君は偉いですね……。私なんか頭ではわかっていてもいきなりそんなに自分を変えることなんてできません」



「いや、偉くなんてないよ……本當(dāng)に」



　俺はただ2周目で未來が甘くないことを知っているだけだ。



　1周目の高校時代でも漠然とした將來の不安くらいは抱いていた。

　けどそれを俺は無視した。



　何もしなくても未來は何とかなるっていうガキの楽観に甘えたのだ。

　その代償があの10年以上もの社畜生活だ。



（紫條院さんに対しても同じ理論だったんだよな。いつかラブコメみたいなイベントが発生して親密になって戀人に……なんてラノベみたいなことを期待してた）



　そんなイベントは待ってても絶対に起きない。



　けれど……自分で起こせば100％起きる！



（だから、今度は準(zhǔn)備は怠らない。今度は迷わない。今度こそ――）



　彼女に告白する。

　過去に戻ってからも惚れ直し続けるこの少女を幸せにしたい。



　勉強(qiáng)はそのための自分を高める一環(huán)だからこそ頑張れるのだ。



「さて、それじゃ休憩終わり！　次は化學(xué)行くか！」



「はい、よろしくお願いします先生！」



　彼女の眩しい笑顔を眺めつつ俺たちは勉強(qiáng)を再開した。



　紫條院さんと一緒に機(jī)を並べて天にも昇る心地になっていることは巧妙に隠し、あくまで紳士的な顔でだ。