陰陽師阿修羅 繪卷第三章:名諱(中日雙語整理)
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千を超える魔神が、深淵の入り口に一挙に押し寄せた。魔神の軍勢を目視した天人の衛(wèi)兵が弓を引き、真っ白な矢が雨の如く降り注ぐ。矢を受けた魔神は忽ち灰燼と化したが、いくら殺しても、數(shù)に物を言わせる魔神は全然減っていないようだ。押し寄せる深淵の黒い洪水は、皆十善業(yè)道に裁かれ、地獄に蹴落とされた罪人だ。
萬千魔神一并爬到深淵的入口。面對魔神大軍,守備的天人軍隊拉開弓箭,純白的羽箭如雨般落下。中箭的魔神頓時被燒為灰燼,然而魔神數(shù)量眾多,殺之不盡,如同黑色的洪水般自深淵向上涌出,盡數(shù)是被十善業(yè)道裁決,推下地獄的罪人們。
衛(wèi)兵をまとめる將軍は、真面目くさった様子で、崖の上で罵詈雑言を吐いた。
守備的將領(lǐng)道貌岸然,站在懸崖上罵道。
「陛下の命令に従い、深淵の獄に入った者は出るべからず、それを破った者には死を!汝らがまだ生きている理由は、陛下の慈…」
“陛下有令,深淵之獄只進不出,違者殺無赦!汝等于此茍活,全賴陛下好生之……”
それを言い終える前に、一本の折れた矢が飛んできて、彼の喉を射抜いた。將軍は喉を押さえながら崖から落ち、忽ち魔神達に食いちぎられた。
話音未落,一支斷箭從懸崖中飛出,射進他喉中,將領(lǐng)捂著喉嚨掉下懸崖,轉(zhuǎn)瞬就被魔神們撕成了碎片。
阿修羅が深淵より現(xiàn)れ、鬼神の如く殘酷な笑みを浮かべ、折れた矢の殘り半分を捨て、死骸を越えて警備の軍隊に迫った。後ろの魔神の軍隊は耳をつんざくばかりの大聲で、天魔阿修羅の名を叫んでいる。その時、天人の兵士は初めて気づいた、昔の闘神阿修羅は既に天魔と化したことに。
阿修羅自深淵中爬出,如同鬼神,冷笑著丟掉另外半截羽箭,踩著尸骸朝著守備的軍隊逼來。身后的魔神大軍呼聲震耳欲聾,高呼天魔阿修羅之名,守備的天人士兵們這才知道,昔日的戰(zhàn)神阿修羅已經(jīng)化作天魔。
矢の雨は彼に傷を負わせることすらできない。深淵を這い出たのは、復讐の天魔だ??证欷胩烊摔伪郡厢幛氦丹辘筏?。前に出る勇気を持つ者はいなかった。しかし砦まで撤退すると、今度は將校達に刀を向けられ、後退することは許されなかった?!该撟哒撙?、後で深淵の獄に追放されるぞ。」
箭雨根本不能傷他分毫,此時爬出深淵,是來向他們復仇的,紛紛恐懼地后退,不敢上前。然而退到堡壘下,卻又被守邊的將領(lǐng)們用刀抵住背后,不能再退?!叭粲刑颖?,事后打入深淵之獄。”
魔神達がようやく深淵を出た時、急に何かを唱える敵軍の聲が聞こえてきた。
魔神們終于爬出深淵,卻聽到敵陣中突然傳來陣陣吟唱。
「偉大なり、偉大なり、偉大なりし者??袢摔嫌说ⅳ搿⒆锶摔夏温浃藥ⅳ??!?/p>
“圣哉,圣哉,無上的圣明。狂徒耽于狂妄,罪人永墜幽冥?!?/p>
天人の兵士の霊神體が一體化して、巨大な白い網(wǎng)を編み出した。巨大な法陣が空から迫ってきて、周りの山を押し潰した。巨石はまだ深淵を出ていない魔神を崖の底へ落とし、今度は皆に迫ってきた。
天人士兵們的靈神體化為一體,織成一張白色巨網(wǎng),巨大的法陣從天而降,兩側(cè)山體都被壓碎。巨石將尚未爬出的魔神砸回崖底,緊接著,又向眾人壓了下來。
危機一髪で、阿修羅は石の橋に飛び上がり、両手で法陣を受け止めた。天人の兵士は聲高らかに唱える。その目は異様な光を放ち、表情は次第に歪んでいく。例え両手と目が鮮血に濡れても、やめる素振りもなく、ただ法陣を下へと押し続けている。しかし阿修羅も諦めるつもりはない。それを目にすると、魔神は次々と咆哮をあげて、天人の軍隊に切り込んだ。あっという間に、魔神と天人の軍隊との激戦が始まった。
就在千釣一發(fā)之際,阿修羅跳上石橋,用雙手接住了法陣。天人士兵們高聲吟唱,雙目溢出異樣的光芒,表情狂熱到逐漸扭曲,哪怕雙手雙目流出鮮血,也不曾停止,只推進那法陣不斷下壓。然而阿修羅卻絲毫不肯退讓,眾魔神看到,紛紛嘶吼著,沖向天人的防陣之中,轉(zhuǎn)瞬間,就與守備的大軍殺成一片。
阿修羅の立つ石橋は圧力に耐えられず、壊れる寸前だった。遠くの善見塔の頂上にいる帝釈天は、目を閉じながら微笑んだ?;糜挨伽影⑿蘖_の前に現(xiàn)れた。帝釈天は慈悲深い表情で、彼の眉間を撫でた。
在阿修羅的腳下,石橋不堪重負,眼看即將碎裂。遠在善見塔頂?shù)牡坩屘扉]著雙目,露出一絲笑意?;糜霸俅胃‖F(xiàn)在阿修羅面前,帝釋天悲天憫人地撫過他的眉心。
「あなたはもう昔の阿修羅ではない。英雄の名を失って、敗北を喫した。天人とも言えない今のあなたが、なぜ天人のために王宮に攻め入る?徹底的に魔に墮ちることを嫌がるあなたが、何をもって魔神を率いて、天魔と名乗るのだろう?」
“你早已不是昔日的阿修羅,英名盡毀,落敗垂成,如今你并非天人,談何為天人一族討伐王殿?你又不肯徹底墜入魔道,憑什么率領(lǐng)魔神攻城,自稱天魔?”
「阿修羅、あなたは一體何がしたいんだ?」
“阿修羅,你究竟要做什么呢?”
阿修羅は幻影の言葉に耳を傾けず、法陣の対処に集中する。しかし足場の石橋は、今にも壊れそうだ。追い込まれた彼は両手で法陣の中心を摑み、法陣を真っ二つに引き裂いた。時を同じくして、法陣の兵士數(shù)人が血を吐いて倒れた。魔神達は大聲で勝鬨を上げたが、阿修羅だけは異常に気づいた。
阿修羅并不在意幻影,只一心對付法陣,腳下石橋搖搖欲墜。情急之下,他雙手抓住法陣中心,向兩側(cè)發(fā)力,竟然將法陣生生撕裂。布陣的士兵頓時就有數(shù)人吐血倒地,魔神們高聲歡呼,仿佛勝利在即,唯獨阿修羅卻覺出不對。
彼が作った裂け目は法陣の端まで広がり、急に二つになった。そしてまるで目を見開くように、巨大な目を形作った。深遠なる宇宙を白目に、懐かしい紺碧の目を瞳に持つ眼は、漆黒の深淵の上で、靜かに全てを見ている。
那道被他撕開的裂縫越來越大,延伸向法陣兩側(cè),然后竟然猛地分成兩片,如同一雙眼瞼般睜開,露出了后面巨大的眼睛。眼白是幽深的宇宙,而瞳仁則是熟悉的碧色,在漆黑的深淵之上,靜靜地注視著這一切。
善見塔の上で、帝釈天はようやく目を開け、慈悲深そうに全てを見た。
善見塔上,帝釋天終于睜開了雙目,悲天憫人地看著眼前的一切。
すると、石橋の上にある法陣の眼は眩い光を放ち、深淵の底まで照らした。光が屆くところでは、魔物が忽ち灰燼と化す。天人の兵士もそれに耐えられず、目を押さえて倒れた。白い光は阿修羅を含む全てを呑み込んだ。
緊接著,石橋上法陣的瞳孔中爆發(fā)出刺眼的光芒,照亮了深淵地底,所到之處,魔物們瞬時化作了灰塵。甚至連天人士兵都不堪忍受,捂住雙目跪倒在地。白光將一切吞沒其中,也隱沒了阿修羅的身形。
阿修羅が目を開けると、すでに白い世界にいた。目の前にあるのは懐かしい瞳、懐かしい紺碧だけだった。眼の深遠なる宇宙の中、帝釈天の姿が次第に浮かび上がった。
待到阿修羅睜開雙眼,已是身在一片茫白里,眼前只有那熟悉的瞳仁,熟悉的碧色。在那瞳孔中浩瀚深邃的宇宙里,逐漸浮現(xiàn)出帝釋天的樣子。
かつての友人は彼を見て微笑み、初めて出會った時のように、優(yōu)しく手を伸ばした。
曾經(jīng)的友人笑著看著他,他溫柔的伸出手來,一如初遇。
「阿修羅、あなたは私がついに見つけ出した奇跡。私はあなたがようやく出會った友。私達二人が力を合わせれば、負けることは一度もなかっただろう?そして私達の意見が分かれた時、いつもより多くの犠牲を払うことになっただろう?」
“你是我終于等到的奇跡,而我是你終于找到的友人,曾幾何時只要我們二人齊心協(xié)力,又何曾敗過?而每一次你與我爭執(zhí),帶來的都是更多的犧牲?!?/p>
「こっちに來るんだ。ここは無垢なる天國。過去に拘る必要はない。全てを背負う必要もない。阿修羅でいる必要もないんだ。そこに留まれば、いつかきっと、あなたが一番嫌いな魔神に成り下がってしまう?!?/p>
“到這里來吧,我這里是無垢天國。不要再計較過去,你不必再背負一切,不必再是阿修羅。而留在那里,終有一天,你會成為你最憎恨的魔神?!?/p>
幻境の中は靜まり返っている。しかし紺碧の星海の奧に、雲(yún)と海の中に、また微かに鐘の音が聞こえる。
幻境之中萬籟俱寂,一片碧色的星海深處,云與海霧之間,又仿佛隱隱傳來遠方的鐘聲。
「だが帝釈天、お前はもうお前の一番嫌いな暴君になってしまった?!拱⑿蘖_はこう言った。
“然而帝釋天,你卻早已成為了你最憎恨的暴君?!卑⑿蘖_說道。
言い終わると、阿修羅の額にある天眼が突然開いた。黒い炎が噴き出し、瞬く間に彼の體を全て焼き盡くした。深淵のような黒い炎は目の前にある幻境を呑み込むと、益々勢いを増して、やがては光すら燃やし始め、帝釈天の天眼が放つ白い光を全て取り込んだ。
說罷他突然睜開了額頭的天眼,漆黑的火焰從其中涌出,旋即燒遍了他全身。猶如深淵般的黑火開始吞噬眼前的幻鏡,越燒越旺,竟然開始灼燒光明,將帝釋天天眼中吐出的白光蠶食殆盡。
白い光が消えると、魔神はまたいつもの世界に戻った。すると、千を超える魔神が深淵から抜け出してきた。彼らは阿修羅の炎の元で、光を突き破り、光を壊し、光を喰らい、天域を呑み込んでいく。燃え盛る炎の中には、阿修羅の姿が見える。帝釈天の幻影は炎に呑み込まれて決壊し始めたが、どうしても消えることを拒んでいる。
白光褪去,魔神們重見天日,緊接著,萬千魔神一起沖出了深淵。他們緊隨著阿修羅的火焰,沖破光明,摧毀光明,將光明當作食糧,不斷吞噬著天域。在燃燒著的火焰中心,是阿修羅的身影,帝釋天幻影在火焰的吞噬下逐漸瓦解,卻遲遲不肯退去。
「俺は最初からこうだったのかもしれない。生まれた時から、俺は闇の申し子で、この世で一番殘虐な罪業(yè)で、全てを焼き盡くす業(yè)火になる運命だったのかもしれない。この世にまだ焼き盡くしていない闇がある限り、俺の炎はそこに向かう。」
“或許我從來都是如此,自誕生的那一刻,我就是黑暗之子,是世上最殘暴的罪孽,是注定要燒盡一切的業(yè)火。只要這世上還有火不曾燒盡的黑暗,我的火焰就會蔓延到那里?!?/p>
燃え広がる黒い炎は広がり続け、烈火が阿修羅の胸の中でふくらんでいく。灼熱のマグマが阿修羅の體から噴き出し、そして最後に出てきたのはより一層強くなった六本の觸手だった。
洶涌的黑色火焰不斷爆開,烈火在阿修羅胸中膨脹,沸騰著的巖漿如同要從阿修羅體內(nèi)噴出,最終噴薄而出的是六條更強壯的觸手。
阿修羅が見上げると、空にある巨大な天眼が崩れ、炎に呑み込まれる光景があった。
阿修羅抬起頭來,看著空中巨大的天眼逐漸崩塌,被火焰蠶食殆盡。
「光さえも俺を畏れる時まで、俺が至るところに滅びをもたらすまで?!?/p>
“直到連光明都對我望而卻步,直到任何我所到之處都會遭受毀滅?!?/p>
阿修羅の炎は帝釈天の天眼を呑み込んだ。生まれ変わった鬼手が殘りの兵士を切り刻む。黒い炎が現(xiàn)れると、死體すら跡形もなく燃やされてしまう。帝釈天の幻影もいよいよ紅蓮に呑み込まれた。
阿修羅的火焰吞噬了帝釋天的天眼,新生的鬼手將余下的士兵撕碎,黑焰燒過,連尸骨都不曾留下。帝釋天的幻影也終于被烈火吞噬。
「この世に魔神、悪鬼、暗闇、偽善を畏れる人がいなくなるまで、深淵について口にすることを躊躇う人がいなくなるまで?!?/p>
“直到在這世上沒有人再懼怕魔神,惡鬼,黑暗,和偽善,沒人再恐于說出深淵的名字?!?/p>
六本の觸手が凄まじい勢いで深淵の入り口に振り下ろされ、深淵の獄を丸ごと壊した。阿修羅が炎の中から現(xiàn)れ、深淵の入り口で立ち止まる。帝釈天の幻影はついに消えてなくなった。阿修羅は雲(yún)にそびえる白い巨塔を見上げ、ゆっくりと言い放った。
六條觸手噴薄而出,沖向深淵入口,將整個深淵之獄撞得粉碎。阿修羅走出火焰,落在深淵入口。帝釋天的幻影終究消失殆盡,阿修羅抬起頭看向聳入云端的白色巨塔,一字一頓地說道。
「それに代わるのは、我が名…阿修羅だ。」
“取而代之的,將是我的名諱——阿修羅?!?/p>
遠くの善見塔の中、玉座にもたれる帝釈天は、我慢できず笑みをこぼした。しばらくして、彼はようやく再び目を閉じた。
遠方的善見塔內(nèi),帝釋天倚靠在王座之上,忍不住笑了起來。過了許久,他才再度閉上了雙眼。