情報官的生活原作原文
今日は……よろしくお願いしましゅ……」
「ふふ。そんな緊張しなくても大丈夫よ。こちらこそよろしくね」
とあるオフィスビルのエントランス。
一日の始まりにふさわしく、ビジネススーツを著た人の群れが出入りする中で、
その二人のやり取りは行われていた。
片方はセーラー服を著ていることから學生だろう。
髪を二本の三つ編みにまとめ、丸眼鏡をかけている。
そばかすのある顔は地味な印象はあるものの、
年相応のかわいらしさを感じられた。
もう一人はビジネススーツに身を包んだ女性だ。
年齢は30代といったところだが、
女優(yōu)のような華やかさを感じる整った顔立ちと、
スーツの上からでもわかるスタイルの良さが目を引く美女であった。
今日、三つ編みの中學生は、社長秘書である美女の案內(nèi)で企業(yè)見學を行うことになっていた。
「改めてようこそ、アクエリアス?エレクトロニクス?カンパニーへ。
會議室へご案內(nèi)しますね」
「は、はい……あ、えっとすいません……」
申し訳なさそうな表情で、少女が手を上げた。
「ん?どうしたの?」
「ま……誠に申し訳ありませんが……お手洗いは……ど、どこでしょう?
案內(nèi)していただけないでしょうか……。ワタシ、方向音癡で……」
「ええ。構わないわよ。でも、體調(diào)悪いんだったら無理をしないで頂戴ね?」
「は……はい……」
委縮している少女をトイレに案內(nèi)しながら一瞥する。
「貴方、中學生でこういった電子機器関係の會社の見學に來るなんて珍しいわね。
そういうのに昔から興味あったのかしら?」
「は!はい!貴社の製品の凄さはよくわかっています!
ワタシも、一員として新しい技術の開発に參加できればと……!
あ、すいません……舞い上がっちゃって。おこがましいですよね」
目を輝かせて答える少女の態(tài)度を見て、美女は微笑みながら言う。
「そんなことないわよ。貴女のような若い人の情熱が、新しい技術を作り、
未來を造っていくの。それは誇っていいことよ。頑張って頂戴ね」
「は、はい!」
案內(nèi)をしながら美女は物思いにふける。
自分もこの會社に入ったときは、彼女のように目を輝かせて、
胸に情熱を秘めていた。
それが今となっては、社長の秘書として彼のご機嫌取りとお世話係。
あまり大聲で言えないようなこともしてきた。
(眩しいわね……本當に……)
トイレへと続く細い通路の途中、美女の背後から聲がした。
「もうここでいいですよ」
「え?」
社長秘書が振り向いた瞬間、彼女の口にハンカチが當てられた。
「ッ???」
薬剤の匂いと強烈な眠気が襲う瞬間彼女が見たのは、
先ほどの目を輝かせていたのはまるで噓のように、
あらゆる感情が抜け落ちた無表情な少女の顔であった。
?
む…………」
「目が覚めましたか?」
秘書が目を覚ますと、身體の自由が利かなかった。
手足を縛られ、猿轡をかませられ、聲を出すこともままならない。
「しゅ……しゅみません。こ、これも仕事なんです……。
なんてね。
どうですか?夢を見ながら企業(yè)見學に來た緊張気味の女子中學生。
完ぺきな演技だったでしょう?
でも安心してください。本物は昨日から病欠で家で休んでますよ」
これが、今までの彼女なのだろうか?
秘書は自分の身に起こっていることが理解できずに、
ただ靜かに目の前の女子中學生の姿をした『何か』を見つめることしかできなかった。
「さて、では主目的を果たしましょうか……ん……んんんん~」
そう言いながら少女は自身の首筋、うなじの部分に両手を當てる。
「む~~~ふむぅ~~~~?。?!」
猿轡を嚙まされながら、社長秘書は目の前の光景が信じられず、身もだえる。
少女の身體がまるで脫皮するかのごとくメリメリと音を立てて剝がれていく。
その下からは、ビジネススーツに身を包んだ豊満なボディが現(xiàn)れた。
「ふぅ……あ~きつかった。Bカップの中學生の中にDカップのボディをつめるのだから、
當り前ですよね?この締め付けが気持ちいいんですけどね?」
そばかすに三つ編みの女子中學生の顔の下に、美女の身體がついている。
まさか、いやそんなはずはない。
そんな社長秘書の脳內(nèi)の聲を否定するかのように、
次に少女は自分の頭に手を伸ばす。
二本の三つ編みがずるりと落ち、その下から髪の毛が一本も生えてない頭が現(xiàn)れる。
「驚くのはこれからですよぉ……ふふふ」
頭の頂點にあるつまみを指でつまみ、下ろす。
ジーとジッパーを下す音とともに、そばかすのついた地味ながら可愛らしい中學生の顔がひしゃげていく。
そして、その下から自分とうり二つの顔が現(xiàn)れた。
「ふぅ。変身完了。どうかしら?聲とか口調(diào)とか、ちゃんとそっくりになってる?」
「んん~~~ふむぅ~~~~!?。 ?/p>
聲も口調(diào)も、そして外見も完璧に自分となった元女子中學生の彼女を見て、
遂に社長秘書の精神狀態(tài)は限界になっていく。
「あぁそうだったわね。喋れないんだったわね。まぁでも、その反応なら心配はなさそうね。
それじゃ、最新式の半導體開発情報をいただくわね。お仕事が終わるまで、おやすみなさい」
「ふむぅ……」
まるで鏡を見ているような錯覚にさえ陥る狀況に、
本物の社長秘書は力なく項垂れた。
女子中學生の正體は諜報員(スパイ)だ。
年齢、性別、國籍、一切が謎に包まれている。
ただ確かなことは、凄腕の変裝技術の持ち主であるということだけだ。
彼、もしくは彼女はこうして、目當ての情報を盜むために、
オフィスビルへと潛入するのであった。
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?
?
?
オフィスビルを偽社長秘書は後にした。
顔と聲色を真似れば、多少の無理な要求や誤魔化しも効いた。
どうやら本物の女性秘書は、自身の身體を売り込んで、今の地位を築いたらしい。
「腐った企業(yè)ね……ま、仕事も済んだし次のフェーズに行きましょう」
駅前の公衆(zhòng)トイレの個室に入ると、二度目の『著替え』を彼女は始めた。
ビジネススーツを脫ぎ、下著まで脫いで一糸まとわぬ姿となった彼女。
先ほど度同じようにうなじにあるつまみを下し、
身體にまとう精巧なボディスーツを脫いでいく。
「ふぅ……この下はEカップの女子大生だったわね。おっと顔も脫がないと」
再びウィッグを外し、その下のジッパーを下し、顔を覆うマスクを脫いだ。
30歳の美女の下から現(xiàn)れたのは、童顔の20代前半の女性。
先ほどの彼女の言葉通りならば、女子大生という設定なのだろう。
「はぁ……やっぱり脫いだ時の解放感はたまらないわね。
これだから下に大きい変裝をするのはやめられなのよ」
ひとりごちながら、スニーカーを履き、デニムのゆったりとしたスカートとTシャツを著た。
カジュアルスタイルな女子大生といった出で立ちだ。
先ほどまで身に著けていた社長秘書の皮と服は、
用意していたボストンバックに詰めて駅前のロッカーに閉まった。
「さて、情報屋にさっそくコンタクトを取らないとね!」
先ほどの社長秘書の聲色とは一転した、快活な口調(diào)と聲で彼女は言った。
?
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とある大學キャンパス內(nèi)にて。
「ねぇ彼女!俺と遊ぼうぜ!」
金髪にピアスをつけ、派手な柄のシャツを著たいかにも遊び人風の男が聲をかける。
偽女子大生の彼女は満面の笑顔で答えた。
「ごめんね~遊ぶことはできないけど……仕事なら?」
そう言って自身の頬をつまむと異様なほどに顔の皮が伸びた。
それを見た遊び人風の男は、がっかりした様子で言った。
「なんだアンタか……久々にかわい子ちゃんゲットできると思ったのに……」
彼の正體は情報屋である。偽女子大生は彼に情報を渡す手はずになっている。
頬を膨らまし、むすっとした表情をして偽女子大生は言う。
「なに~アタシは『かわい子ちゃん』じゃないの?」
「いや、男だか女だか本當の顔がわからない相手をゲットする気にはなんねーよ。
はぁ~まぁいいや。ほら、例のあれ手に入れたんでしょ?」
「そ、殘念。ほらこれ」
偽女子大生は男の差し出した手にUSBメモリを渡した。
「ん。ちょい待ち」
そう言って専用の機械に接続しメモリ內(nèi)のデータを抽出、チェックを行った。
「確かに。情報は正確だし、ウイルスなどの工作もないね。
これで任務完了だ。さ、諜報員は帰った帰った。こっちはナンパ続けるから」
「そ、アンタがその気ならいつでも相手するわよ」
いたずらっぽく微笑みながら言う。
「ケッ!こっちから願い下げだよ!」
顔を赤くしながら、情報屋の男は去っていった。
「全く……素直じゃないんだから。さ~てと。
ボスへの報告まで時間あるし、このカッコでちょっとぶらぶらしようかな」
上機嫌で鼻歌を歌いながらその場を後にしようとしたとき、
「すいません……ちょっとアンケートに答えていただけませんか?」
カジュアルな服裝の、人の好さそうな中年男性が聲をかけてきた。
「えっと……すいません。アタシ、先を急いでて……」
「そういわずに、お願いしますよ」
そして、中年男性は強引に彼女の手をつかんで、耳元でささやいた。
「ね、諜報員さん?」
「え?な、なにを言って……ひ、人を呼びますよ!」
中年男性の口元が醜くゆがむ。
「無駄だよ。人払いは済ませてある。上も困ったものだよ。
情報漏洩の察知が遅いんだから。でも、もう逃げられないよ」
偽女子大生の諜報員はマスクの下で冷や汗をかいた。
どうして、こいつは自分の正體を感づいた?
「ボクは追跡者(チェイサー)と呼ばれている。
キミらみたいな存在を殺す、ありていに言えばヒットマンさ。
キミがどれほど巧みな変裝技術を持っていようと、どこまでも追い込んで殺すよ」
彼はもう片方の手に持った赤ペンを振り上げ、彼女に突き刺そうとした。
瞬間、突然視界を覆う煙が當たりに満ち溢れた。
「ちぃ!?煙幕だと?古典的な……」
彼が煙を払うと、そこに彼女は居ない。手に握っているのは彼女の腕の抜け殻だった。
「変裝用ボディスーツの腕部分を破いて逃げたか……だが、
ボクの『眼』からは逃げられることなどないよ。キミも、情報屋も両方ね」
タブレットを起動し、彼は自身の『眼』を立ち上げる。
彼が彼女の変裝術を見破った仕掛け。それは小型ドローンであった。
彼はこの操縦技術でオフィスビルから一部始終を監(jiān)視していたのだ。
勿論、公衆(zhòng)トイレでの変裝も含めてだ。
「のぞき趣味も継続しておくものだね。キミみたいな諜報員の尻尾を偶然にもつかめたのだから。
さぁ……貓ちゃんはどこかなぁ?」
タブレットの中に、小型ドローンの情報が表示される。
そこには、顔面蒼白の様子でガタガタと震え、講義室の機の陰に隠れる彼女の姿があった。
「ひゃははは!ビンゴぉ!ボクの『神の眼』には誰も逃れることなんてできない!」
講義室はここからそう遠くない場所だ。
全速力で駆けながら、これからのことを思案する。
さてどうしてやろうか。その偽物の顔をひん剝いて、辱め、撮影してやろう。
そしてたっぷり時間をかけて殺してやろう。
「ひっひひひひひ!ひゃはははははは?。。 ?/p>
そして、目當ての講義室、その機に著いた。
「またせたねぇ!子貓ちゃーん!」
が、彼が覗いた機の陰には何もない。彼女を思わせるようなもの何一つ。
「ッ……???どうなってる?。俊?/p>
再び、タブレットを立ち上げる。
すると、隠れている彼女の映像がノイズとともに歪んでいき、髑髏マークが現(xiàn)れた。
「こ……これは???」
「ハッキングだよ」
その聲とともに、不敵な笑みを浮かべた遊び人風の男、情報屋が畫面に映し出された。
「俺も一緒に始末するためにワザと情報を渡すところまで泳がせてたんだろうが、
詰めが甘かったな。電子機器の扱いはこっちの方が上なんだよ。
殘念だが煙幕の後からお前が見ていた映像は俺の作った偽もんだ。
あぁ、ドローンは返しとくぜ。爆薬付きで、今そっちに飛ばしてるから受け取ってくれ」
その聲とともに、ドローンが講義室の窓を割って自身に向かって飛んでくる。
それが彼、ヒットマンの見た最期の光景だった。
「ち、ちくしょおおおおおおおお?。?!」
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?
?
彼女は病院を後にした後、とある高校の敷地近くの茂みに隠れた。
「さっきはヒットマンに追われてゆっくり著替えもできなかったものね……」
そう言いながら白衣やセーター、タイトスカートを脫ぎ、
はたから見ると全裸にしか見えない格好となる。
項あたりに手を添え、つまみを下す。
ジッパーの音ともに、Fカップのバディが剝がれ落ち、
その下からさらに大きなGカップの乳房が現(xiàn)れた。
「はぁん……小さいボディスーツから解放される快感。やっぱり病みつきねぇ
チェイサーだかなんだか知らないけど、私の楽しみを奪っちゃって!
……死んだやつのことなんて腹立てても仕方なかったわね」
髪の毛をずるりと脫ぐ。
そしてスキンヘッドとなった頭のてっぺんからつまみをつかみ、下ろした。
ジジジ……という音とともに、クールな美女の顔が歪み、頭から剝がれ落ちる。
そしてその下からは、優(yōu)しそうな顔立ちで垂れ目な、
お嬢様のような品のある容貌であった。
「ん、んん……たしかこの貌は、こういうかんじの喋り方でしたね~
この高校の教育実習生で、溫室育ちのお嬢様で~
そう言えば、もうすぐ報告の時間でした~
本物さんのパソコンを使っちゃいましょう~」
おっとりとした優(yōu)しい口調(diào)と聲色に変える。
諜報員扮する偽教育実習生は、職員室に侵入する。
「しつれいしま~す。あらあら。誰もいませんね~。
これは好都合です~」
彼女は本物のパソコンを立ち上げ、専用ツールをインストールする。
すると、畫面に通話ウィンドウが現(xiàn)れた。
『ご苦労だった。時間通りだな。今日の報告を聞こう』
通話ウィンドウから、機械のボイスチェンジャーを噛ませたような低い聲が再生される。
彼女の上司?!弗堀埂工椁瓮ㄐ扭坤盲?。
「了解しました」
演技をやめ、感情が読みとれない冷たい聲色で彼女は一日の報告を行った。
『相分かった。ヒットマンからの追跡を退けたのはご苦労だった。
情報屋の報酬も上乗せしとくとしよう。さて、早速だが次の仕事が入ってる。
アプリケーションが自動破棄されると同時にそちらの端末に送られるはずだ。
健闘を祈る』
「は……」
彼女は本物のパソコンで指令を受け取ると、
一切の痕跡を消してそれをもとの場所に仕舞った。
校舎を後にする途中、警備員の男性とすれ違う。
「あれ?実習生の娘だよね?こんな時間まで居殘り?大変だねぇ」
「ちょっと授業(yè)の準備をしていたらこんな時間になっちゃいました~。
でも~生徒さんたちはみんなかわいいですし~
教え甲斐があって楽しいですよ~」
「そうか。そうか。それは良かった。頑張ってね」
「は~い」
警備員の男は目の前の実習生を全く疑わなかった。
演技で騙せたことを內(nèi)心ほくそえみながら、
彼に背を向け、軽く頬をつまむ。
顔の皮が異様に伸びる。
これでさえも、彼女、もしくは彼の本當の顔ではないのだ。
(さて……次はどんな「顔」にしよう)
新たな指令を見ながら、笑みを浮かべ、そう思うのだった。
?
END