日語閱讀(一)
旅に出て、見知らぬ土地で、必要に迫られて食事をとる。そういう時、ゲッと叫んで吐き出しそうになるほどまずいものに遭遇したいという體験が、誰にでも一度や二度はあるのではないだろうか。
そのように、旅先でめちゃくちゃまずいものに出會うというのが、旅の楽しみのひとつである。
うまいものの間違いじゃないのか、という人は旅と、食べることの初心者である。うまいものなんぞ、旅に出なくたって、名の通った店でいくらでも食べられるではないか。近頃、平均的日本人は少しうまいものを食べすぎているくらいのものである。グルメだとか食通だとか稱して、三度三度うまいものを食べなきゃ損だと考えるようなひどい人間まで出てきている。雑誌はあくことなくうまい店の紹介をし、みんな並んでその店で食べる。そういう時代だから子供までもが、やっぱり牛肉は和牛でなきゃ、なんてことを口走るのである。
つまらないことである。うまいものなんて、ごくたまに食べればよいのだ。それだからこそうまいのである。
旅の食事の楽しみは、斷然、まずいものを食べることである。一口食べてはほおがゆがみ、二口で涙が出てきて、三口で逃げ出したくなるような、そういうまずものと思いがけず出會うことの豊かさを味わわなければならない。旅をしたからこそ、その味に出會えたのである。それがなければ、あーあ日本のどこかに、それほどまずいものがあるとは永久に知らないままだったのだ。
なぜ、この店はこんな味つけをするのだろう。
どうしてこの味で商売がやっていけるのだろう。
ひょっとして、この味がこの地方ではうまい味で、みんな大好きなのだろうか。ま、まさか。
そういう考えがわきおこり、文化と風(fēng)土と地域性についての、深―い理解が得られたりするのである。
もうわかってもらえたと思う。旅先でまずいものに出會うのはこの上ない楽しみなのだ。全國のまずいものを集めたこのマップで、大いに研究をしていただきたい。